CITROEN C6|シトロエンC6|第4回 (後編)|「純度の高いデザイン」
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2015年4月14日

CITROEN C6|シトロエンC6|第4回 (後編)|「純度の高いデザイン」

CITROEN C6|シトロエン C6|

第4回 (後編)

「純度の高いデザイン」

シトロエンならではの技術“ハイドロ・サス”を踏襲した最上級サルーン「C6」だが、下野康史がもっとも大きな美点としてあげたのは……。

文=下野康史写真=CITROEN

65km/hで自動的にリアスポイラーがせり出し、125km/hでさらに高さがアップ。115km/hになると1段目に戻り、25km/hで完全にボディと一体化する。

希薄になったアドバンテージ

サスペンションをコントロールする油圧を、ステアリングやブレーキのアシスト力にも使っていたCXのころは、地球外惑星のクルマのような強い個性(と違和感)があったものだが、89年に登場したXMからは、ハイドロ足も徐々にフツーになっていった。

“アンチ・ロワリング”という制御が入って以来、エンジンを止めて一晩おいても、うずくまったように車高が下がることはなくなった。「このほうが、始動後すぐに走り出せるし、ムクムクっと車高が上がるのを気味悪がる人もなかにはいるのでね」という話を、以前、シトロエンのエンジニアから聞いたことがある。

専用のオイルを使った油圧回路は、サスペンションだけを管理するシンプルなものにかわった。おかげで、5年間、または20万キロのあいだ、特別なメインテナンスを必要としなくなった。

手元のスイッチで、車高が大きく数段階にわたって変えられるのが、昔は自慢のタネだったが、いまは電制エア・ダンパーの伸び縮みで同じことをもっと素早くやるクルマも珍しくない。

依然として、ハイドロ・シトロエンが乗り心地のいいクルマであることは認めるが、じゃあ、「メルセデス・ベンツS350」よりいいかと聞かれると、イエスとは言い難い。

車台を共有する「プジョー407」と比べても、乗り心地の点で、歴然たる差というほどの差はない。ハイドロ・サスのアドバンテージは、いまやかなり希薄になっているのである。

では、復活したフルサイズ・シトロエン、C6のどこが涙モノなのか。ぼくが惚れたのは、このスタイリングである。

権威主義の匂いはない

加速力とか、制動力とか、旋回能力とか、クルマの性能にはさまざまあるが、C6が傑出しているのはデザイン力である。全体に尻すぼまりに見えるのは、リアのトレッドがフロントより20センチも狭かった「DS」のオマージュだろう。なんてことを考えない一般の人だって、このクルマには目を止めるはずだ。

好きか嫌いかは、はっきりわかれそうだが、感心するのは、相変わらず少しも威張っていないことである。あと9センチで5メートルに達する大型ボディにも、権威主義の匂いはない。そこがシトロエン・デザインの真骨頂だと思う。

クルマに乗って、威張りたい人は、大きなベンツを買う。そんな用途にクルマが使われて、クルマが気の毒だという意見がある。クルマのせいじゃないのにね、という同情論だ。

でも、本当だろうか。ベンツに乗って威張りたがるのは、ベンツのカタチが威張っているからである。最近は、メルセデスSクラスも耽美的なデザインをみせるようになったが、それでも、社外品のワイドホイールを履かせたりすれば、途端にお下品になる。そういうカタチを選択しているのは、だれなのか。メーカーである。クルマのせいなのだ。

シトロエンC6に、あとづけのワイドホイールが似合うだろうか。似合う似合わないどころか、想像もつかない。それくらい純度の高いデザインが、C6の魅力である。

車両概要:シトロエンC6

「DS」「CX」「XM」と続くシトロエンのフラッグシップの最新版「C6」。1989年デビューのXM以来となる、久々のトップ・オブ・シトロエンは、2006年秋に日本上陸を果たした。

全長4910mmのボディは奇抜なデザインを施され、強豪ドイツ車勢とは一味違うビッグサルーンを文字通りかたちづくる。

エンジンは、ひとつ下の「C5」に搭載される3リッターV6をパワーアップしたもので、215ps/6000rpm、30.5kgm/3750rpmを発生。トランスミッションはシーケンシャルモード付きの6段オートマチック。

足まわりはご存知「ハイドロニューマティック・アクティブサスペンション」で、スイッチで「コンフォート」「スポーツ」各モードに切り替え可能。また110km/h以上になると自動的に12mm車高を下げ、高速走行に適した状態に。
さらに激しい凹凸の道を低速で走行する際には12mmクリアランスがアップ。40km/h以下で1段階、10km/hで2段階まで、ドライバーが任意に車高を上げることができるなど、自在に上げ下げできる、シトロエンならではの“足”である。

インテリアにはレザートリムを採用。ドライバーズシート前には、デジタルスピードメーターと右上に伸びるタコメーターなど。さらに、ヘッドアップディスプレイが、フロントグラスに車速を表示する。

なお、ショファードリブン仕様として、リア電動スライドシート、後席シートヒーター、ランバーサポート、サンルーフなどをセットにした「ラウンジ・パッケージ」をオプション設定。装着車は、710.0万円のプライスタグを付ける。

車両概要:シトロエンC6

車両概要:シトロエンC6

CITROEN C6 EXCLUSIVE|シトロエン C6 エクスクルーシブ
全長×全幅×全高=4910×1860×1465mm
ホイールベース=2900mm
車重=1820kg
駆動方式=FF
3リッターV6(215ps/6000rpm、30.5kgm/3750rpm)
トランスミッション=6段オートマチック
車両本体価格=682.0万円

           
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