レクサスがレース界のモードをつくる|LEXUS
LEXUS|レクサス
デザイナー小此木達也×スタイリスト島津由行
レース界のモードをつくる
国内外の“クルマ好き”が集まる世界最大級のカスタマイズショー「東京オートサロン」で、レクサスは、デザイナー小此木達也氏とスタイリスト島津由行氏とともに、これまでにないモータースポーツのスタイルを提案。「オイル、泥、汗」というハードなイメージが伴うカーレースと、相反するイメージの「ファッション」を融合させると、どのようなあたらしい表現がおこなえるのか。レクサスと彼らのクリエイティブワークの裏側に迫った。
Text by KUSHIMA Tatsuya
コンセプトワードは「La Mode du Race」
「レクサス関係者の方からお話をいただいたんです。ちょっと手伝ってもらえないかと。それと優秀なスタイリスト紹介してほしい、ということでした……」
そう話をはじめたのは小此木達也氏。今回の東京オートサロンにおけるレクサスブースで衣装を担当したファッションデザイナーである。そして、彼が声をかけたのが島津由行氏。CM、広告媒体を中心に多くのアーティストのスタイリングを手がける人物で、長く矢沢永吉氏を担当している。
そんな2人とレクサスがタッグを組んだ今回のクリエイティブワーク。コンセプトワードは「La Mode du Race」。およそファッションとはかけ離れたレースの世界感を、レクサスのフィルターを通して観るとどうなるのか。
洗練された感性でモードを作り上げる。これはオートサロンの会場に、かつてないAMAZINGをおこしたといっていいかもしれない。
では、そこではいったいどんなことが巻き起こったのか。まずはその前にレクサスと東京オートサロンの関係を少しひもとこう。
レクサスがこのカスタムカーの祭典に出展したのは2013年1月が初となる。つまり、2年目。長年、各国産ブランドは看板を並べてきたが、レクサスはそれまで名を連ねることはなかった。ただし、その登場はじつに個性的でかつ前衛的だったのを記憶する。LEXUSのスペルを裏から読んだ「2UX3J」をタイトルに、美しい猛獣としてカスタムしたモデルを4台、ブースをサーカスのテントに見立てて展示したのだ。
2年目となった今回もまた、レクサスブースは見る者に強烈なインパクトを与えていた。戦う男たちの戦場ともいうべき“サーキット”を、エレガントな世界へ誘ったのだのだから。
LEXUS|レクサス
デザイナー小此木達也×スタイリスト島津由行
レース界のモードをつくる(2)
ようやくこういう時代が来た
サーキットのピット作業風景を模したブースに登場したのは、先日デトロイトモーターショーで発表されたレクサスの最新スポーツモデル「RC F」をベースとした、2014年もレクサスが参戦する自動車レース「SUPER GT」、GT500クラスの車両を中心に、4人のピットクルーとドライバー、そしてひとりの女性モデルが闊歩する。
“モータースポーツはこんなにも美しいスポーツ”であるということを、ファッションの世界と融合させ表現することに挑戦したとレクサスは謳う。そこには、かつてのオイル臭い泥だらけの汗臭い世界は一切ない。サーキットというこれまでの世界観を、モードというあたらしい価値観で表現するに至るまで、レクサスは日本屈指のトップクリエーターたちとともにどう考察し、プロジェクトを進めてきたのだろうか。
「レクサスが考えるレーシングモードとはなにか。ピットインのときの男臭い世界をファッション化したらどうなるのか? レース車両のカラーリングデザインが白ベースだという話を伺っていたので、白いスーツでいきましょう! ということになったんです。シルクハットがヘルメットの代わりですから彼がドライバー、クルーは白いタキシードですがワッペンを付けることでつなぎをイメージさせました」と小此木氏は、その過程を振り返る。
カラーを白と黒のモノトーンに統一し、レースシーンをレクサスの世界観へと昇華させる。それはまさにピットインの瞬間を再定義するほど異彩を放つ作品となった。かつて誰も見たことのないシーンを生み出したのだ。しかも、彼らが実車を見たのは前日というから驚かされる。小此木氏たちは写真をコンピューター上で加工した絵コンテをもとにこの世界を築いたという。
「すごく楽しかったですよ。これまで何度かモーターショーの仕事に携わってきましたが、今回はこれまでとはまったく違いました。どのブランドもはじめはファッショナブルな感じなのですが、途中からコンセプトが変わってしまって、最終的にはベタなものになったりするんです。それがレクサスは最後まで任せてくれた。ようやくこういう時代が来た、というところでしょうか」島津氏のその言葉からは出来映えに満足した様子が伺える。
「マネキンは全5体を用意したのですが、テーラードとなる衣装はすべて手縫いです。矢沢永吉さんの衣装も手がけている熟練の方にお願いしました(小此木氏談)」
「マネキンはむずかしい。生身のカラダと違って肉がないですからね。しゃがみ込んだ時の服のよれ方にいたっては、普段とはまったく異なります(島津氏談)」
そんな苦労もあって出来上がったピットインをファッション化したデザインワークは、モードな雰囲気を存分に漂わせていた。高度なファッションセンスはきっと海外のファッションメディアをも唸らせることだろう。
もちろん、これはコンセプトワークであり、レクサスがあたらしいなにかにトライしていることを意味するのにとどまる。だが、その本意は決して奇をてらったものではない。世界三大カスタムカーショーとも呼ばれるこのオートサロンの会場で、「レース界のモード」というあらたな価値を創造することは、日本発のグローバルプレミアムブランドとしての挑戦でもある。そう考えると、クルマはもちろん、こうしたレクサスの世界を表現する作品にも今後増々期待していきたいところだ。
SHIMAZU Yoshiyuki|島津由行
1959年熊本生まれ。数多くのCF、雑誌や広告媒体などを中心にタレントやモデルのスタイリングを担当している。また、ファッションショーの構成や選曲、雑誌にてクリエイティブディレクションも手掛けるなど、多方面で活躍中。
小此木達也|OCONOGI Tatsuya
1963年横浜生まれ。ツモリチサトを経てMIYAKE DESIGN STUDIOにてイッセイミヤケのデザイナーを勤める。2002年にフリーランスデザイナーとなり、2004年秋冬より自身のブランド「TroisO(トロワゾ)」によるコレクションをスタート。2010年、デザイナーズフットウェアブランド「White Flags(ホワイトフラッグス)」を立ち上げる。