Patek Philippe|ミニット・リピーターとプチ・ソヌリを備えたグランド・コンプリケーション・ウォッチ
Watch & Jewelry
2014年12月24日

Patek Philippe|ミニット・リピーターとプチ・ソヌリを備えたグランド・コンプリケーション・ウォッチ

Patek Philippe|パテック フィリップ

Duke of Regla

レグラ公の懐中時計

メキシコの第3代レグラ公が求めた時鐘機構を備えた懐中時計は、パテック フィリップの高度な技術を伺い知ることができる最高級モデルだ。

Text by KOIZUMI Yoko

ミニット・リピーターとプチ・ソヌリを備えたグランド・コンプリケーション・ウォッチ

クロノグラフやムーンフェイズ、年次カレンダーといった機能は、その構造や製作の難しさから複雑時計(コンプリケーション・ウォッチ)と呼ばれている。また永久カレンダー、トゥールビヨン、ミニット・リピーターなどの超複雑機構を備えている時計はグランド・コンプリケーション・ウォッチとされ、最上級の技術を搭載したモデルとなっている。

これら複雑機構は単体でも高度な技術を持つ時計職人のみが製作できるものだが、なかでも製作が難しいとされているのが、時刻を鐘の音で知らせる時打ち機機能の『リピーター』と『ソヌリ』である。リピーターは任意の時間をレバー操作で知らせる機能を持ち、一方、ソヌリは定時になると自動的に時刻を告げる機構を指す。ソヌリには毎正時と15分を打つプチ・ソヌリ、そして毎正時と15分を告げ、15分毎に時間数も打つグランド・ソヌリがある。

このリピーターとソヌリ機構を搭載している懐中時計のひとつが『レグラ公の懐中時計』だ。しかもリピーターは1分単位の時刻も知らせることが可能なミニット・リピーターであり、ソヌリでは、プチ・ソヌリという、ともに超複雑な時鐘機構を備えているのである。

また、この時計の最大の特徴ともいえるのが時を打つ音色の美しさである。低い音から高い音までの違った音階の5つの音を鳴らすことができ、その音を組み合わせてウェストミンスター・チャイムのメロディを奏でることができるのだ。さらにユニークな点は15分を告げる音は、音階の異なるさまざまなパターンで打ち鳴らすことが可能なこと。使う者や音色を聞く者を楽しませようとするエンターテインメント性にも溢れているのだ。これを実現できるのも、パテック フィリップの高い技術力あればこそ、なのである。

Duke of Regla|レグラ公の懐中時計 02

Duke of Regla|レグラ公の懐中時計 03

さて、この時計はスペインのP.G.ド・セルバンテスに販売されたという記録が残っている。ただ実際に入手したのは、ドン・カルロス・リンコン・ガヤルド・イ・ロメロ・ド・テレロスなる人物で、彼はグァルダルーペ侯爵でありメキシコ第3代レグラ公、そしてヴィラエルモッサ・ド・アルファロ侯爵という立場にあった。ケースの表蓋にレグラ公の紋章、裏蓋にレグラ伯爵の紋章がジュネーブの七宝画かフランソワ・モーリスによって描かれていることからも、本人がセルバンテスに依頼し、購入したものと推察できる。

文字盤は非常に凝ったつくりになっており、中央とスモールセコンド中央には文様の彫金が施され、時間インデックスは金色で立体的に描かれている。またルイ15世様式の針はブルーに仕上げられ、文字盤上でゴールドとの美しいコントラストを生み出している。

この時計は1970年代、ひどく破損した状態で発見されたという。先に述べたように、この時計に搭載される機構は非常に複雑であり、多くの職人が修復に尻込みしたのだそうだ。しかしパテック フィリップは、複雑時計の経験が豊かで、技術に精通したマスター・ウオッチメーカーに修理を任せ、4年の歳月をかけて修復したというエピソードが残されている。1900年代と1970年代の職人が、時を超えてひとつの時計に真摯に向き合った結果を、私たちは見ることができるのだ。

Duke of Regla|レグラ公の懐中時計 04

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イエローゴールドケース、竜頭巻上げ・時刻合わせ式
ミニット・リピーターは6時と7時の間のスライドボタンで起動
ソヌリのオン・オフ切り替えは11時と12時の間のレバーで行なう
高さ93mm、直径65.9mm、厚さ20.9mm

           
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