ART|ダンボールで家を作る『住む:プロジェクト―もうひとつの国』
ART|急速に変化するいま、あらためて「住む」ことを問う
ダンボールで家を作る『住む:プロジェクト―もうひとつの国』
フィリピン出身のアーティスト、イザベル&アルフレド・アキリザンによるダンボールを使用した巨大なインスタレーション展『住む:プロジェクト―もうひとつの国』が、11月10日(日)まで金沢21世紀美術館にて開催されている。
Text by KUROMIYA Yuzu
最終的にもうひとつの国が完成
イザベル&アルフレド・アキリザンは、2006年オーストラリアのブリスベンに移住したことをきっかけに、「家」をテーマにしたプロジェクトを開始。
「どこに住むか」「どのように住むか」について考えるプロジェクト「もうひとつの国」によって、あたりまえのことと考えてきた「住む」自由を脅かすような急速な世界情勢の変化に対して、個人が直面する問題をともに考える場を提案しつづけている。なかでも『In-Habit(住む)』は、ボルネオ島サバ州海岸部に暮らすバジャウ族のライフスタイルにインスピレーションを得て、生産~消費の流れを示すダンボールで作った「家」を積み上げた、壮大なインスタレーション作品。
バジャウ族は船上または、海の浅瀬に高床式住居をかまえ、一生を海のうえで暮らす漂海民。グローバル化の波を受けて近年その暮らしぶりに変化が見られるといわれている。アキリザンはバジャウ族を通じてアジアの現状を的確に捉え、経済的にも文化的にもグローバライゼーションが進むなか、一方では危険性をも拡張しているという現実に目をむけた。
今回のプロジェクトでは、地域の人びとがバジャウ族の人びとの暮らしを思い描きながらダンボールで家を作り、それらが作品の一部として展示されるインタラクティブなアプローチを採用。美術館の近隣にあるアートスペースや金沢市内の学校、会期中の週末に展示室内に設けられたワークショップ・ブースで来場者がダンボールの家を制作。それらを作品として加え、金沢の「もうひとつの国」がどんどん拡大していくという試みだ。
来場者とともに作品を作り上げ最終的にもうひとつの国が金沢に出現するという、異なる文化間を移動することで得た俯瞰的視点をもつアーティストならではのプレゼンテーション。あらためて世界の価値観を考えるきっかけとなりそうだ。
イザベル&アルフレド・アキリザン
『住む:プロジェクト―もうひとつの国』
会期|8月3日(土)から11月10日(日) ※月曜休み
時間|10:00~18:00(金、土曜日は20:00まで)
会場|金沢21世紀美術館 展示室6
石川県金沢市広坂1-2-1
Tel. 076-220-2800
料金│本展『フィオナ・タン展』との共通券
一般1000円、大学生・65歳以上800円、小中高生400円