キャデラックが考えるクルマの安全性|Cadillac
Cadillac SRX Crossover|キャデラック SRX クロスオーバー
“安全性に優れる”は日欧車だけのうたい文句ではない
キャデラックが考えるクルマの安全性
豪華で高級なアメリカを代表するセレブ御用達のブランドは、実は日欧車以上にハイテクの導入に貪欲で、クオリティコンシャス。アメリカ市場で産まれたラグジュアリーSUVの雄、キャデラックの「SRX クロスオーバー」を櫻井健一が試乗した。
Text by SAKURAI Kenichi
Photographs by NAITO Takahito
いまも変わらない高級車=SUVという米国市場の図式
いまでこそ欧州ブランドのSUVがマーケットを席巻しているが、もともとSUVといえば、アメリカが世界最大の市場。低燃費やダウンサイジングが叫ばれている今日でも、SUVはアメリカのカスタマーにとってなくてはならない存在だ。
キャデラックやリンカーンといったアメリカ屈指のラグジュアリーカーブランドでさえも、もちろん古くからSUVのラインナップを持っている。いや、むしろ、今のラグジュアリーSUVの先鞭を付けたのが、この2ブランドだったといっても過言ではない。
キャデラックは「エスカレード」で、リンカーンは「ナビゲーター」で、SUVが高級ブランドのトップカテゴリーに位置することを証明している。事実、セレブリティやスポーツ選手などが、こぞって大型のSUVを愛車に選んでいる。いまや成功者の選ぶ高級車は、SUVとイコールであるといっても良いほどだ。
2010年から日本にも導入されているキャデラック「SRX クロスオーバー」は、GMのトップブランドであるキャデラックのコンセプトである“アート&サイエンス”を具体化した、見るからにスタイリッシュで、クオリティの高い内外装デザインを採用したSUVのセカンドラインだ。
SRX クロスオーバーの上には、3列シートをそなえた、エスカレードが君臨している。SRXクロスオーバーの現行モデルは2012年11月にマイナーチェンジを受け、フロントのアッパー&ロワーグリルをよりシャープなデザインに変更。
サイドベントに、ライトパイプ技術をもちいた新デザインのウィンカー機能を追加した。プレミアムグレードでは、あたらしい意匠の20インチクロームアルミホイールを採用した点も、マイナーチェンジ前モデルとの識別点になる。
パワーユニットに大きな変更はなく、 これまで通りDOHCの3リッター直噴(ダイレクトインジェクション)V型6気筒エンジンを採用。269psの最高出力と、302Nm(30.8kgm)の最大トルクをもたらしてくれる。
AWDシステムは、ボルボなどにも採用されているハルデックス社製の電子制御リミテッドスリップデフ(eLSD)を採用し、前後トルク配分を0-100パーセント、後輪の車輪間でのトルク配分を15-85パーセントまで自動的に最適化。路面状況を問わないトラクション性能を発揮し、雨天の高速道路などでも安定した走行を実現した。
Cadillac SRX Crossover|キャデラック SRX クロスオーバー
“安全性に優れる”は日欧車だけのうたい文句ではない
キャデラックが考えるクルマの安全性(2)
最新テクノロジーの全部のせ
最新モデルには、情報やエンターテインメントシステム(インフォテイメントシステム)を操作するCUE(キュー=キャデラック ユーザー エクスペリエンス)と呼ばれる先進的な統合インターフェイスが標準装備されている。8インチのマルチタッチディスプレイやステアリングスイッチなどを使い、オーディオやエアコン、車両設定、ハンズフリー電話などをタブレットPCやスマホ感覚でほぼ直感的にコントロールすることが可能だ。
ただし前回試乗記をお伝えしたキャデラック「ATS」同様、本国ではこのCUEに組み込まれているナビは残念ながら日本市場には未対応で、別途ダッシュボード上に電動格納式ナビがそなわることになる。
そのCUEと合わせて注目すべきは、安全デバイスの充実である。SRXクロスオーバーのトップグレードであるプレミアムには、「フォワード コリジョン アラート(前方衝突事前警告機能)」や「レーン ディパーチャー ウォーニング(車線逸脱警告機能)」、「アダプティブ クルーズ コントロール(全車速追従機能)」、そして「フロント&リア オートマチック ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ、前進/後退)」といった、スバルのアイサイトがカバーする「ぶつからないクルマ」機能をもちろんSRXクロスオーバーは、もれなく採用している。
アメリカならではの発想
これらにくわえ、「リア クロス トラフィック アラート(後退時安全確認警告機能)」、「サイド ブラインドゾーン アラート(サイドミラーの死角にいるクルマを感知)」なども搭載。「リア クロス トラフィック アラート(後退時安全確認警告機能)」は、パーキングスペースにクルマの頭から入れることが当たり前の(つまり、次の発進は必ずバックからおこなう)アメリカならではといえる実用的な装備だ。
これらの安全性を確保するためにそなえられたセンサー類は、車両前方に中・長距離レーダーや短距離レーダー×2、超音波センサー×4、フロントカメラを、車両後方に短距離レーダー×3、超音波センサー×4、リアカメラという陣容。現在の技術でカバーできるすべてを、出し惜しみすることなく搭載した。
また、こうしたクルマの周りで起こっている危険を、警報(音やモニターの点滅)だけでなくシートクッションを振動させること(セーフティ アラート ドライバーシート)で注意を促している点があたらしい。
この機能は、フロント コリジョン アラート、リア クロ トラフィック アラート、パーキングアシストとも連動し、リスクの存在する方向のシートクッションが振動し、極めて明確にドライバーが危険を察知できるようになっている。
Cadillac SRX Crossover|キャデラック SRX クロスオーバー
“安全性に優れる”は日欧車だけのうたい文句ではない
キャデラックが考えるクルマの安全性(3)
日常使用でも実用的な安全装備
今回、ギアをDレンジに入れクリープのまま障害物に突入し、ドライバーが何もせずに「フォワード コリジョン アラート(前方衝突事前警告機能)」や「フロント&リア オートマチックブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ、前進/後退)」が機能するかどうか、また「アダプティブ クルーズコントロール(全車速追従機能)」が現実的な速度域で作動するかどうかをデモンストレーション体験することができた。
信号が変わったことに気づかず、停車した前車に危うく追突しそうになった……という経験は、誰しも1度や2度はあるはず。「フロント&リア オートマチックブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ、前進/後退)」は、日常街中でよくある、脇見運転の際の前車への衝突回避に有効である。
また、「アダプティブ クルーズコントロール(全車速追従機能)」は、渋滞中の高速道路などで、実にありがたい装備だと思える。いったんセットさえすれば、ドライバーはいちいちブレーキやアクセルの操作をすることなく、クルマが前車を追従し発進・停止を繰り返してくれるので、楽に渋滞を乗り切れそうだ。
どちらももっと日常で試す必要はあろうが、慣れてしまえば、この装備なしのクルマを選ぶことなど考えられないぐらい依存しそうな予感がする。
いまどき快適装備の代表ともいえるエアコンの搭載されていないクルマを誰も選ぼうとしないように、気づけば安全装備の充実した「ぶつからないクルマ」以外は怖くて乗れない、という日が来てもおかしくはない。
水と安全はタダ……という概念が未だ大半を占める日本のマーケットで、キャデラックは安全性の高さを売り物に欧州ブランドとのガチの勝負をおこなっている。
豪華で高級なアメリカを代表するセレブ御用達のブランドは、実は欧州車以上にハイテクの導入に貪欲で、クオリティコンシャス。安全性の高さならメルセデス・ベンツやボルボという神話はまだまだ健在だが、トップレベルの安全性能をキャデラックも持ち合わせていることにそろそろ気づいて良い頃だ。
洗練、安全、品質。どれも欧州車を紹介するに相応しいキーワードだが、この3つは、いまのキャデラックにも、そっくりそのまま当てはまるのである。
Cadillac SRX Crossover│キャデラック SRX クロスオーバー
ボディサイズ│全長4,855×全幅1,910×全高1,690mm
ホイールベース│2,810mm
重量|2,060kg(ラグジュアリー)、2,080kg(プレミアム)
エンジン│3.0リッターV6 DOHC直噴
最高出力│198kW(269ps)/6,950rpm
最大トルク│302Nm(30.8kgm)/5,100rpm
燃費|7.7km/リッター(JC08モード)
燃料タンク容量│79リッター
駆動方式│電子制御AWD
サスペンション 前/後|マクファーソン / マルチリンク
タイヤ|235/65 R18 104H(ラグジュアリー)、235/55 R20 102H(プレミアム)
ブレーキ|ベンチレーテッドディスク
トランスミッション│6段オートマチック
価格|499万円(ラグジュアリー)、625万円(プレミアム)