AAF通信|建築家・谷尻誠氏が語る作品づくりの手法
AAF通信│建築レクチュアシリーズ217
谷尻誠氏が語る作品づくりの手法
建築家による芸術と社会環境の発展を目指すAAF(NPO法人アートアンドアーキテクトフェスタ)が、年に7回開催しているトークセッション、「建築レクチュアシリーズ217」。早くも次回の開催日程とゲストが発表された。今年度2回目となる今回は、建築家・谷尻誠氏をゲストに迎え、6月21日(金)午後7時より大阪・南船場のアリアフィーナにて開催される。
Text by OKADA Kazuyuki(OPENERS)
素材の表情で世界観をつくりあげる
谷尻氏の生み出す作品は、スピード感が印象的だ。建築、プロダクト、インスタレーションなどを合わせると、これまでに100を超える作品をつくりあげている。若手建築家として、これは異例の多さだ。一般的に、素材の質感を前面に出したデザインは、工業的で冷たく固い印象になりやすい。しかし谷尻氏は、その使い方を場面によって上手く操作することで、やわらかい、あたたかみのある独自の世界観をつくりあげている。
居酒屋だった空間をリノベーションしたカフェ、「cafe/day」。道路をはさんだ敷地の向かい側には、自動車教習所が存在する。谷尻氏はそのような立地の特性を活かし、建築のコンセプトとした。
店内の床には外部と同じ本物のアスファルトを敷き、横断歩道や白線をペイントした。また、輸入車のシートを椅子にリメイクし、店内に配置している。建築の外と内とを繋げた作品だ。
「沼袋の集合住宅」は、いくつもの大きな開口が特徴。1フロア2世帯の賃貸住宅で、上層階はオーナー住居となっている。外壁はコンクリートの打ちっぱなしだが、施工時に杉材の型枠を利用しているため、木目の質感がコンクリートにプリントされた仕上げになっている。また、上層階になるにつれ、下層階の構造に負担がかからないよう、構造体であるコンクリートの外壁が薄くなっている。それをそのまま外観デザインとして採用しているため、よく見ると、上層階になるほど外観のボリュームがすぼんでいくのが確認できる。
東京ミッドタウンで開催された「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2012」では、木材のバーチ材で構造を形成したジャングルジム「MOUNTAIN GYM」を展示した。大きさは直径15m、高さ4m。一見、複雑な構造に見えるが、単純なパターンの組み合わせでできている。子供はもちろん、大人も登ることができる。白いパイプが、作品内を縫うように通っており、電話のように会話ができる仕掛けもある。
また、谷尻氏は、TwitterやFacebookなどのSNSを積極的に利用し、建築を自らの言葉でわかりやすく解説している。普段の生活において、なかなか接することのない「建築家」の印象を、身近なものとした立役者だ。当日は建築家として近い世代の芦澤氏、平沼氏とどのような話題が繰り広げられるのか期待したい。
谷尻誠|TANIJIRI Makoto
1974年広島県生まれ。2000年建築設計事務所Suppose design officeを設立。住宅、商業空間、会場構成、ランドスケープ、プロダクトなど、仕事の範囲は多岐にわたる。広島・東京の2カ所を拠点とし、国内外合わせ多数のプロジェクトが進行中。現在、穴吹デザイン専門学校特任講師、広島女学院大学客員教授。
サポーズデザインオフィス http://www.suppose.jp
建築レクチュアシリーズ217
日程│2013年6月21日(金)
時間│開場18:00/開演19:00 終了20:30
レセプション|20:30~21:30
ゲストスピーカー│谷尻誠
会場│アリアフィーナ
大阪府大阪市中央区南船場2-1-3 上山ビル1F
入場料|1000円
申し込み│ウェブページより受付
www.217.aaf.ac
定員│150人 ※当日の参加も若干名可能 当日18:00から先着順で整理券を発行
特定非営利活動法人(NPO法人)アートアンドアーキテクトフェスタ
www.aaf.ac