ボディが拡大されたにも関わらず65kgのダイエットに成功

ポルシェといえば「911」。このイメージを打ち破り、2002年にデビューした高級SUVが「カイエン」だ。スポーツカー専業メーカーだったポルシェがなぜSUVをつくるのか、と違和感を抱く周囲の反応をよそにすぐに人気モデルとなり、10年に登場した2代目と合計して世界で76万台以上が販売されるという見事な結果を出した。

その間に４ドアモデルの「パナメーラ」や小型SUVの「マカン」を世に送り出し、ポルシェはより広いジャンルへラインアップを増やすことにも成功した。そして2017年末、7年ぶりのフルモデルチェンジを行なったのが現行の３代目カイエンだ。

グレードは、340psを発生する3.0リッターV6ターボの「カイエン」、440psを発生する2.9リッターV6ツインターボの「カイエンS」、550psを発生する4.0リッターV8ツインターボの「カイエンターボ」という３つのモデルを展開しており、今回試乗したのはそのメイングレードであるカイエンSだ。

ボディサイズは、全長4,918×全幅1,983×全高1,696mmで、先代モデルより63mm長く、25mm広く、9mm低い。2,895mmのホイールベースを変えずにボディを大型化した一方で、すべての外板を軽量なアルミニウム製とすることで、重量は65kgのダイエットに成功し、2,020kgとなった。

ビスケーブルーメタリックと呼ばれる濃いブルーに塗られたエクステリアは、よりワイドになったエアインテークや、左右のテールライトを細いLEDで直線的に結ぶデザインなどにポルシェ最新モデルらしい表現方法が見られるが、基本はキープコンセプト。

一方のインテリアは、ポルシェアドバンストコックピットと呼ばれる12.3インチタッチスクリーンを中心とするインテリアに変更され、従来モデルにあったようなアナログスイッチがずらりと並ぶ景色が消えた。

Page02. ダウンサイジングされたにもかかわらず最高出力は20psアップ

ダウンサイジングにもかかわらず最高出力は20psアップ

厚みのあるトリュフブラウンカラーのクラブレザーシートに腰掛け、ボタンではなくひねるタイプのスターターでエンジンに火を入れると、メーターパネルのセンターには大径のタコメーターが現れ、ポルシェのスポーツモデルであることを主張。その両サイドには7インチスクリーンが配され、ナビ情報やナイトビジョンなどが表示される仕組みになっている。

フロントに搭載される2.9リッターのV6ツインターボエンジンは、前モデルの3.6リッターから大きくサイズダウン。しかし最高出力は20ps アップの440ps（324kW）/5,700-6,700rpm、最大トルクは変わらず550Nm/1,800-5,500rpmを発生する。

新型8段ATを介して四輪を駆動し、最高速度265km/h、0-100km/h加速5.2秒（前モデル比＋6km/h、−0.3秒）という動力性能は、たった2.9リッターのエンジンでこの大きなボディを動かすのか、とカタログを眺めて少々不安だった筆者の心のうちを見事に払拭。右足に力を込めれば、4,000rpmあたりからV6の快音を発しながら大柄なボディをあっという間に制限速度まで加速してくれるのだ。

まあ、そんな運転をしなくても、自動車としての出来の良さや、隙間なくみっちりと詰まったドイツの工業製品らしさが、ステアリングを握る手、ベダルを踏む足、シートに委ねた背やヒップから絶えず伝わってくるのは嬉しいところ。

さらにオプション装着されていた後輪操舵システム「リアアクセルステアリング」により、回転半径が通常の5.7メートルから5.4メートルになり、日常の使い勝手が向上している点も見逃せない。都内の高級住宅街の狭い道路で、カイエンの後席に子どもを乗せた女性ドライバーが不安なさげにドライブしているのを見かけるのは、このあたりに秘密がありそうだ。

価格は1,288万円。試乗車は、ボディカラーやシート、ステアリングシステムなどオプションがフル装備され、トータル1,986万1,000円となっていた。

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