ポルシェ911誕生50周年イベント|Porsche
Porsche 911|ポルシェ 911
50周年 ワールドツアーリポート 第1回
一堂に会した911 7世代を一気に味わう──901篇
1963年に西ドイツのスポーツカーメーカー「ポルシェ」が発表した「911」。レースというレース、ラリーというラリーで輝かしい戦績を積みかさねること50年。ドイツは東西統合をはたし、21世紀を迎え、世界は大きくかわっても「911」はかわることなくヨーロッパを代表するスポーツカーでありつづけた。そんな「911」の誕生50周年を祝うイベント「911ワールドツアー」は、今年、世界各地で開かれる。その皮切りとなるプレスイベントがポルシェのお膝元シュトゥットガルトで開かれた。島下泰久氏による現地からのレポート。
Text by SHIMASHITA Yasuhisa
前代未聞の試乗会
ポルシェ「911」が、「901」の名で世にはじめてお披露目されたのは、1963年9月の「フランクフルトモーターショー」でのことだった。つまり今年が記念すべき50周年なのである。
それを祝してポルシェ社は、「911ワールドツアー」と銘打って、1年を通して世界各地で記念イベントを開催する予定だ。3月某日、シュトゥットガルト近郊でおこなわれたプレスイベントは、言わばそのキックオフとなるものだった。
主たる内容は、ポルシェミュージアムが所蔵する歴代911各モデルの試乗。まさにそのミュージアムから出発して、初代から現行型にまで至る、じつに7世代にわたる様々なモデルを乗りかえながら、ファンから聖地と崇められているヴァイザッハ研究開発センターまで赴くというもの。
途中では「ポルシェ クラシック」のファクトリーへと立ち寄り、さらに夜には、シュトゥットガルトメッセで開催されたイベント「レトロ クラシックス」にて、貴重な展示を見学することもできた。とりわけ目玉といえば、やはりテストドライブだ。特にヴァイザッハでは、なんとテストコースで自由にステアリングを握ることが許されたのである。
聞けば、ここで外部の人間に助手席同乗ではなく、完全にステアリングを託したというのは前代未聞のことだったという。たしかに筆者も、ここでは助手席しか体験したことはない。そう、なんとも貴重な機会に恵まれることとなったのだ。ここからは、歴史を追いかけながら、試したモデルについて触れていくことにしよう。
Porsche 911|ポルシェ 911
50周年 ワールドツアーリポート 第1回
一堂に会した911 7世代を一気に味わう──901篇(2)
まずはナロー911を試す
筆者自身、過去にはオールドモデルを試す機会がすくなからずあり、それなりに知らないわけではなかったつもりなのだが、ほぼ同時に7世代のモデルに乗るのはさすがにはじめてで、この日はあらたな発見、そして驚きや感動に浸ることとなった。
ナローの通称で呼ばれる最初期型は、モデルイヤーで言うと1964年モデルから1973年モデルまでを指す。有名な逸話のとおり、あいだに“0”をはさむ3桁数字の車名にたいする、プジョーからのクレームにより、すぐに911と改称されたこのモデルは、当初は最高出力130psを発生する排気量2リッターの空冷フラット6を搭載していた。
のちにセミオープンボディのタルガ、高出力版の「911S」がくわわるなどラインナップは徐々に拡大。
また、走行性能向上のためのホイールベースの延長、厳しくなるエミッション規制に対応した2.2リッター、そして2.4リッターへの排気量拡大など、ラインナップを変遷させていく。
伝説の「73年式カレラRS」は、その最終年に登場。2.7リッターフラット6はじつに210psを発生した。
今回は、そのうち64年式のクーペ、そして67年式のタルガの2台を試すことができた。この最初期型のタルガは、リアウインドウがジップで開閉できるビニール製となっているのが特徴だ。
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50周年 ワールドツアーリポート 第1回
一堂に会した911 7世代を一気に味わう──901篇(3)
文句無しの充足感
いずれにも共通のエンジンはキャブレター仕様ということもあり、低回転域ではそれほど活発とは言えない。しかも焦ってアクセルを煽り過ぎれば、更に回転上昇の勢いは鈍くなる。
ところが注意深く踏み込んでいけば5,000rpmを過ぎる辺りからにわかに活気づきはじめ、レヴリミットまで俄然スムーズにまわり切ってくれる。この時代の911は、とにかくまわして走らせなければ、というわけである。
それより印象的だったのはフットワークだ。直径420mmはありそうな巨大なステアリングホイールを切り込むと、小さくないロールとともに瞬間的にヨーが立ち上がるあたりは、いかにもRR。それもショートホイールベースの初期型らしい挙動で、一般公道ならともかくヴァイザッハのテストコース内では実は何度も肝を冷やす瞬間に遭遇したぐらいスリリングだ。
しかし慣れるに従って、挙動が乱れそうになるのを利用してクルマをクルッと曲げて、すかさずアクセルオンでリアを落ちつかせ、脱兎の如く立ちあがるというRRの走らせかたのコツが掴めてきて、夢中になって攻めたててしまった。
絶対速度は高くはないが、針に糸を通すような繊細なコントロールと、おもい切り良くトップエンドまで踏み込まなければ速さを得られない大胆さが同居した走りは、文句無しの充足感をもたらしてくれた。