プジョー 5008に試乗|Peugeot
CAR / IMPRESSION
2014年12月5日

プジョー 5008に試乗|Peugeot

Peugeot 5008|プジョー 5008

プジョーの7人乗りミニバンを試す

日本国内ではいまだ根強い人気をもつ、ミニバンカテゴリー。しかし海外から輸入されるミニバンはごくわずか。そんなところに、プジョーが7人乗りミニバンを日本に導入、販売を開始した。フランス製のミニバンはいかなるものか? 小川フミオ氏がチェック!

Text by OGAWA Fumio
Photographs by MOCHIZUKI Hirohiko

国産車も、うかうかしてられない

日本のミニバン市場にフランスがなぐりこみ! プジョーが7人ぶんの座席を備えた、上質のミニバン「5008」を2月25日より発売。試乗すると、国産車、うかうかしていられないゾ、と感心する出来ナノダ!

フランスのプジョーは長い歴史を持つ乗用車メーカーだ。日本では、ハッチバックでよく知られているけれど、本国では大統領公用車も提供したり、いっぽう、1990年代にいち早くミニバンの開発に乗り出すなど、スポーツカーから大型車まで幅広いラインナップをもつ。

車名が3ケタの数字で、まんなかにはかならず「0(ゼロ)」が入るのもプジョーの伝統。1929年発売の「201」がルーツだから、その歴史は長い。かつてポルシェが「911」を発売する際、本当は「901」を企図していたのにプジョーに遠慮して、「911」にしたのは有名なはなし。

Peugeot 5008|プジョー 5008

Peugeot 5008|プジョー 5008

日本発売が開始された5008は、プジョーの伝統を破る4ケタの数字を車名にしたミニバンだ。プジョーにとって4ケタは、SUVなど、クルマの世界でいうところのライフスタイル商品を意味している。

「日本ではミニバン流行りだけれど、ちょっとプレミアムでちょっとスモールというセグメントは意外に空いている。そこに向けたモデルとして成功を狙う」と日本における現地法人プジョー・シトロエン・ジャポンの鼻息は荒い。上質さが売りものながら価格は300万円からと比較的買いやすいのも魅力だ。

乗ってみると、しなやかなサスペンションに、意外なほどスポーティなハンドリングが印象に残る。7人の乗車が可能で、荷物もたっぷり搭載できるから、ウィンターやマリンなどのスポーツを趣味とするひとには、もってこいの1台だ。バカンス大国フランスの面目躍如といったところか。もちろん、市街地だっていい。

室内には広々感があるので、快適だ。輸入車では、フォルクスワーゲンのみが、「シャラン」と「トゥーラン」」で気を吐いているマーケットで、意外なヒットになる可能性をひめている。

Peugeot 5008|プジョー 5008

プジョーの7人乗りミニバンを試す(2)

意外なほど楽しいピープルムーバー

プジョー5008のプラットフォームは、既発の308などと共用。2,725mmとたっぷりしたホイールベースの上に、4,530mmの全長、1,840mmの全幅、1,645mmの全高をもつ、4ドア+ハッチゲートのボディを載せる。エンジンは、プジョーではおなじみ、1.6リッター4気筒ターボで、156ps/6,000rpmの最高出力と、240Nm/1,400-3,500rpmの最大トルクを発生する。トランスミッションは6段オートマチックで、前輪駆動となる。

ピープルムーバー的な性格をもったモデルとしては、わが国でも「308SW」(ステーションワゴン)が発売されているが、5008は全高が高く、3列めのシートの使い勝手が向上しているのが特徴だ。2つ並んだシートは床下完全収納型で、ふだんはフルフラットの床面。ひとを乗せるときはプルハンドルによってワンタッチで引き出せる。かつ足元スペースもえぐられており、308SWのようなエマージェンシー型7シーターとは、一線を画している。回転式駐車場には入らないことが多いが、その問題をクリアできるひとには、308SWよりメリットが多いようにおもう。

Peugeot 5008|プジョー 5008

Peugeot 5008|プジョー 5008

動力性能は、想像よりはるかに活発。1,500rpmから上でたっぷりしたトルクを出す設定のエンジンは、比較的おおきなボディにもかかわらず、5008を軽快に走らせる。トルクはよどみなく、加速も上々。エンジン音もよく抑えられているので、上質感が高い。もっとも“おいしい”のは1,500-3,000rpmのあいだだ。

ここを意識的につかうと、クルマはアクセルペダルに載せた足の微妙な踏み込みに、じつに敏感に反応して意のままの加速・減速が手に入る。わが国ではもっともよく使う領域なので、この気持ちよさが嬉しい。

とばしても意外なほど楽しい。中立位置からハンドルを切り込むと、車体の反応はするどく、姿勢変化もすくなくカーブをこなしていく感覚はスポーティだ。

ドライビングポジションが比較的直立型なのと、ハンドルを水平ぎみにチルト調整でセットしないと、速度計と回転計が見えないため、運転姿勢はいきおい“商業車”的になってしまうのが、タマにキズだ。ただその気持ちよさから、「ある程度の妥協はしようがないのかな」と僕は自分に言い聞かせたほどだ。

Peugeot 5008|プジョー 5008

プジョーの7人乗りミニバンを試す(3)

人間本位の開発姿勢が感じられる

プジョー5008のよさのひとつは、乗員のためにつくられている、つまり人間本位の開発姿勢が強めに感じられることだと僕はおもう。それはつねにプジョーが提供してきた価値だ。ドイツ車のかわりにプジョーを選ぶひとは、それがよくわかっているはずだ。

5008の上質性から、プジョーの思想のコアに触れたような気がする。7人乗せる、あるいは荷物をたっぷり載せる。いずれにしてもバネ上に大きな荷重がかかるのを想定して、サスペンションのスプリングは多少硬めだ。でも、ダンピングは上手にしつけられている。路面の入力をしっかり受け止め、フラットな乗り味を提供してくれる。

僕はここにいたく感動した。プジョー・シトロエン・ジャポンの担当者に、この設定は日本向けなのか確認したら、「本国のままのはず」という答えが返ってきた。かつて308SWがマイナーチェンジを受け6段ATを与えられた際、同時に足まわりの設定が変更され、妙におさまりの悪いダンピングに失望したことをおぼえているが、5008はすばらしいと僕はおもう。

シートの出来もよく、すべてのシートがバケットタイプ。これも国産車にたいする大きなメリットだと僕はおもう。

なぜ日本人の多くはそこを見ないのだろう。そのおかげでホールド性がよく、長時間座っていても疲れない。

国産のシートはまるでこたつの座椅子のような、だら~としたルーズさを感じるが、やはり椅子の文化の国のクルマであると感心。

Peugeot 5008|プジョー 5008

同時に、すべてのシートが独立しているメリットは、個々に背もたれのリクライニング調整と、前後のスライドが可能なところにもある、おとなが3人並ぶときやチャイルドシートを装着したときは少しずつ前後にズラして肩がぶつからないよう配慮することも可能。これは使ってみると、たいへんありがたい便利な機能だ。

Peugeot 5008|プジョー 5008

Peugeot 5008|プジョー 5008

騒音レベルは、まずまずといったところで、このクラスだったら十分及第点をあげられる。高速道路ではタイヤハウスからの路面音の進入があるが、乗員どうしの会話が邪魔されることもないし、騒音で疲れるということもない。

第2列にいると、ルーフ後端部分での空気の剥離だろうか、頭部背後の上のほうからの風切り音がやや気になった。といっても、大きな問題にしたいほどではないと僕はおもう。

Peugeot 5008|プジョー 5008

プジョーの7人乗りミニバンを試す(4)

ライバルはフォルクスワーゲンのミニバンたち

プジョー5008は、使い勝手のいいミニバンを探しているひとなら、今度の休日の目的地にプジョーの販売店をくわえるべきだと、と僕は特筆しておきたい。

フォルクスワーゲンでいうと、おなじように7人乗りで、後席用に前ヒンジのドアを備えた「ゴルフ トゥーラン」が1.4リッターターボ搭載で294万円から、おなじ1.4リッターエンジンながらすこし大ぶりの車体に後席はスライドドアをもつ7シーターの「シャラン」が382万円と、まっこうからぶつかるライバルだ。

価格的にはゴルフ トゥーランがちかいため、サイズを比較すると、5008は全長で125mm長く、全幅で45mm広く、全高で25mm低い。ホイールベースは50mm長い。

「全高を低くして乗用車的にしている」とは輸入元が強調するポイントだ。いっぽう、利便性からスライドドアを支持するひとはいるし、プジョー・シトロエン・ジャポンもそこは気にしているようだ。

ただし、乗用車的軽快感としては、5008のような前ヒンジドアでいいだろう。

Peugeot 5008|プジョー 5008

ひとつ、僕が気に入らないのは、シトロエン「C6」との共通点を感じさせる5008のフロントマスクのデザイン。造型の美しさが少なく、グラフィック処理による薄っぺらさが気になる。

いっぽう好きなのは、ベルトラインの処理をうまく行い躍動感を出したプロファイルだ。機能性にエモーショナルな要素をくわえたのは、VWにたいする強みであることは間違いないとおもう。

Peugeot 5008|プジョー 5008

Peugeot 5008|プジョー 5008

5008のある生活

グレートは2つで、パワートレインは共通ながら、ベースモデルの「プレミアム」(300万円)にたいして、大きな固定式のガラスルーフをそなえた「シエロ」(330万円)となる。タイヤ径が、「プレミアム」が16インチであるのにたいして「シエロ」は17インチとなる。 高い速度域での運動性能がとりざたされるクルマでないので、僕としては、乗り心地がよい、径の小さなタイヤのほうが好みだが。

シートに張られるファブリックをはじめ内装もほぼ共通で、革張りシートは35万5,000円のオプションでシエロにのみ用意される。プレミアムをホメたが、後席に子どもを乗せる機会が多いひとはグラスルーフ仕様のシエロがいいとおもう。

セカンドシートとサードシートは収納できるため、かなり大きな荷物を運ぶこともできる。大きな家族、あるいは大きな荷物、あるいは両方──このクルマの機能をフルに使える生活はまことにうらやましい。それこそ“ゆたかな”人生というのだろう。

spec

Peugeot 5008|プジョー 5008
ボディサイズ|全長4,530×全幅1,840×全高1,645mm
ホイールベース|2,725 mm
トレッド 前/後|1,530 / 1,565 mm
最低地上高|135 mm
最小回転半径|5.6 メートル
重量|
(Premium)|1,570 kg
(Cielo)|1,600 kg
(Cielo レザーパッケージ)|1,620kg
エンジン|1,598cc 直列4気筒 DOHC ターボチャージャー
圧縮比|10.5 : 1
ボア×ストローク|77×85.8 mm
最高出力| 115kW(156ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|240Nm(24.5kgm)/ 1,400-3,500 rpm
トランスミッション|6段オートマチック
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|トーションビーム
タイヤ|
(Premium)|215/55 R16
(Cielo)|215/50 R17
ブレーキ|ディスク
燃費(JC08モード)|11.7 km/ℓ
燃料タンク容量|60 ℓ
価格|(Premium)300万円 / (Cielo)330万円

           
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