テスラ モデルSをテスト|Tesla
CAR / IMPRESSION
2014年12月5日

テスラ モデルSをテスト|Tesla

Tesla Model S|テスラ モデルS

無二のプレミアム電動セダン

テスラ モデルSに乗る

昨年、ついに完売となった電気自動車の金字塔、テスラ「ロードスター」。これは、ロータス「エリーゼ」をベースとしたスポーツカーだったが、それにつづくテスラ第2のモデル、「モデルS」は、ゼロから設計されたプレミアム電動セダンだ。ついに日本での路上デビューも近づいてきた、このモデルSを、島下泰久氏が昨年末、アメリカで試してきた。その仕上がりやいかに?

Text by SHIMASHITA Yasuhisa

衝撃的なクルマだ!

自動車の開発や生産の実績をまったく持たないままピュアEVスポーツカーの「ロードスター」を世に送り出し、セレブリティ達から厚い支持を受けた新興EVメーカーのテスラから、いよいよ第2弾モデルが登場した。

ロータスの技術協力で生み出されたロードスターにたいして、完全なオリジナルモデルとして開発された4ドアモデル、その名も「モデルS」である。

この1月に日本でも概要が発表されたこのモデルSに、昨年末、アメリカ サンタモニカ近郊で試乗することができた。その印象は、ひとことで言えば衝撃的なものだった。たんにEVとしての完成度に驚いたというだけではない。高性能なプレミアムカーとしての完成度の高さに感銘を受けたのだ。

Tesla Model S|テスラ モデルS

Tesla Model S|テスラ モデルS

4枚のドアにくわえて、テールゲートを備えた最近のトレンドとも言っていい4ドアクーペボディをまとうモデルSは、全長4,978×全幅1,964×全高1,435mmという堂々とした体躯を誇る。要するにアストンマーティン「ラピード」やポルシェ「パナメーラ」とほぼ重なるサイズであり、実際の存在感もこれらに決して負けていない。

とは言え、威圧的な部分や装飾的なところは多くはなく、たとえば「ロードスター」とくらべても、そのスタイリングは圧倒的にクリーンでエレガント。まずはこの姿だけで魅了されてしまうという人も、きっと少なくないだろう。

そんな人は、ドアを開けた途端に完全にノックアウトされてしまうはずだ。

全面レザー張りとされたダッシュボードは、やはり奇をてらったところのない品の良いデザインとされ、革の質感、ステッチの入れ方にも丁寧な仕事ぶりが見てとれる。

このレベルの仕事ぶり、決してすべてのプレミアムカーメーカーが出来ているわけではない。

Tesla Model S|テスラ モデルS

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無二のプレミアム電動セダン

テスラ モデルSに乗る(2)

室内には17インチタッチスクリーン

そして何より目を奪うのが、センターコンソールに据え付けられた17インチの大型タッチスクリーンだ。空調やオーディオの操作のほか、車両の各種情報の表示、そして回生ブレーキの効き具合やエアサスペンションの車高の調整なども、「モデルS」はすべてここからおこなう。

もちろんナビゲーションシステムも搭載。車両はネットに常時接続されており、地図にはGoogle Mapsを用いる。日本でも、この常時接続機能が用意されることになるが、利用する携帯電話キャリア等々の詳細は現時点では未定とのことである。

Tesla Model S|テスラ モデルS

Tesla Model S|テスラ モデルS

本国仕様には7人乗りも

空間的にも文句はない。

2,960mmのホイールベースを活かして前席だけでなく後席も十分に広く、またエンジンがない分、ラゲッジスペースも車体前後に備わる。また本国仕様ではリアに後ろ向きの2席をくわえた7人乗りまで設定されているのだ。

内外装を眺め、このタッチスクリーンに触れているだけでもあたらしいプレミアムカーの登場のよろこび、存分に浸ることができる。

しかし、それだけでは衝撃と言うほどではない。強い印象に繋がったのは、何より走りの質が予想よりもはるかに高い次元にあったからである。

Tesla Model S|テスラ モデルS

無二のプレミアム電動セダン

テスラ モデルSに乗る(3)

Take off!

仕様はバッテリーパックの容量により最大航続距離が約260km/370km/460kmの3種類が用意され、460km仕様では高出力版の「パフォーマンス」が選択できる。通常仕様のスペックは最高出力362ps、最大トルク440Nm。今回試乗した「シグネチャー パフォーマンス」は、最高出力416ps、最大トルク600Nmを誇る。

運転操作に特別なところはなく、ステアリングコラムから生えたシフトレバーをDレンジに入れてアクセルペダルを踏み込んでいけば、クルマはしずしずと走り出す。

立ち上がりから最大トルクを発生するモーターの特性で、すぐにタイムラグなく加速がはじまるが、けっして粗野ではない。その先でも右足の力加減にきわめて忠実に加速が上乗せされ、非常に速度コントロールがしやすいのだ。様々なクルマに乗り馴れている人ほど、このドライバビリティの良さには驚くにちがいない。

Tesla Model S|テスラ モデルS

ハイウェイで前が空いたところでアクセルを深く踏み込んでみる。この時のパフォーマンスも圧巻で、ギアボックスを持たないため段付きなく、荒々しさもなく、しかも最初だけ勢いが良いというような頭打ち感もなく、加速はまさに突き抜けるよう。月並みな表現だが、本当にこのまま離陸してしまいそうに感じられるほどの快感を味わえる。

じつは車重は2.1トンを超えるのだが“パフォーマンス”は、0-100km/h加速をわずか4.6秒でこなしてしまうのだ。

減速するにはフットブレーキを踏むだけでなく、回生ブレーキも活用できる。その効きの強さはタッチスクリーンから調整可能。一番強くすれば、アクセルを緩めるだけでも強い減速感が得られ、そのまま停止に至ることもできるから、街中などでは普通のAT車より走らせやすい。いっぽう、高速道路などでは効きを弱めにしておいた方がリラックスして巡航できる。

Tesla Model S|テスラ モデルS

無二のプレミアム電動セダン

テスラ モデルSに乗る(4)

抜群の足まわり

これだけの動力性能を受け止めるシャシーのできばえも素晴らしい。あるいはパワートレインよりも、こちらの方にこそ驚かされたと言っても過言ではない。

ボディ&シャシーは剛性感抜群。前ダブルウィッシュボーン、後マルチリンク式のエアサスペンションの動きも至極スムーズで、乗り心地はじつに快適だ。高速域での姿勢のフラット感なんて、プレミアムを標榜するブランドでも、ここまで出来ているクルマがどれだけあるだろう? とおもわされる。

Tesla Model S|テスラ モデルS

Tesla Model S|テスラ モデルS

操舵感の心地良いステアリングは、微小舵角からきわめて正確な反応を返してくる。床下にバッテリーを配置することで重心がきわめて低く、またエンジンがないため鼻先が軽いのが効いていて、旋回感はニュートラル。じつはスペックを確認するまで、車重はせいぜい1.7トンぐらいかな? なんておもっていたくらいの軽やかなフットワークなのだ。

スタビリティも上々である。じつは雨の中だった今回の試乗。アクセルの踏み込み量が多過ぎると、すぐに後輪がスキッドしそうになるのは感じられたが、ブレーキだけでなくモータートルクの瞬時の制御で、すぐに挙動変化を抑えてくれるので、不安を覚えることはまったくなかった。これもまたEVの美点である。

Tesla Model S|テスラ モデルS

無二のプレミアム電動セダン

テスラ モデルSに乗る(5)

ここまでの完成度で、まだ第2弾

率直に言って、テスラ「ロードスター」はまだまだ荒削りというか、やはり既存のクルマをEV化したものという以上のものではなかった。

それだけに、まだ第2弾でしかない「モデルS」が、これほどまでに質の高い走りを実現しているとはおもいもしなかった。走りだけじゃない。外装デザインも、インテリアのつくり込みも、予想をはるかに超えるレベルにあって、じつに嬉しくさせられたのだ。

聞けば、イーロン・マスクCEOは生産中のクルマもこまめにチェックして、少しでも気に入らなければ容赦なく修正させていたという。おかげでデリバリーが遅れたのは事実ながら、これなら待っている人も、きっと許せるにちがいない。

Tesla Model S|テスラ モデルS

Tesla Model S|テスラ モデルS

日本仕様はいかに?

ちなみに生産台数は、1月の日本での発表の時点で1万3,200台を数えており、アメリカではすでに3千人のオーナーの手に車両が渡っている。よって、当初の予定よりは遅れているが、そろそろ軌道に乗ってきたと言えるだろう。日本でも納車は、左ハンドル仕様が7月頃、右ハンドル仕様も年末にははじめられそうとのことだ。

なお、日本での価格は納車が近づいた時点で、為替も勘案しながら決定するという。北米での価格は5万9,900ドルから。円安傾向がつづけば価格上昇は必至だが、それでも1,418万円したロードスターよりはリーズナブルになるはずだというから期待したい。

また朗報として、日本ではアダプタによってCHAdeMO規格の急速充電に対応することが発表されている。元々、十分な航続距離を誇るモデルSだが、充実したインフラを活用できるとなれば、ますますハードルは低くなるはずだ。

Tesla Model S|テスラ モデルS

ともあれこのモデルSでは、久しぶりにクルマに乗って新鮮な感動を味わったという気がしている。できるだけ早く、日本の道で試してみたい。いや、できるなら手許に置いて長く付き合ってみたい。真剣に、そんな気にさせられてしまったのだった。

spec

Tesla Model S|テスラ モデルS
ボディサイズ|全長4,978×全幅1,963×全高1,435mm
ホイールベース|2,959 mm
トレッド 前/後|1,661 / 1,699 mm
重量|2,108 kg
最高出力|
(85kWhバッテリー搭載Performance) 310kW(420ps)
(85kWhバッテリー搭載) 270kW(362ps)
(60kWhバッテリー搭載) 225kW(302ps)
(40kWhバッテリー搭載) 175kW(235ps)
最大トルク|
(85kWhバッテリー搭載Performance) 600Nm
(85kWhバッテリー搭載) 440Nm
(60kWhバッテリー搭載) 430Nm
(40kWhバッテリー搭載) 420Nm
駆動方式|RR
タイヤ 前/後|245/45R19(245/35R21をオプション設定)
価格|5万9,900ドル

*数値は米国仕様のもの

           
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