2WDのウラカン「LP580-2」を鈴鹿サーキットで試す|Lamborghini
CAR / IMPRESSION
2016年10月24日

2WDのウラカン「LP580-2」を鈴鹿サーキットで試す|Lamborghini

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ ウラカン LP580-2

掛け替えのない価値を持ったスーパースポーツカー

2WDのウラカン「LP580-2」を鈴鹿サーキットで試す

ランボルギーニ「ウラカン」の2WDモデル「LP580-2」に、大谷達也氏が試乗した。ウラカンの主力モデル「610-4」が4WDであるのに対し、敢えて後輪駆動としたこのクルマは、雨の鈴鹿サーキットでどのようなキャラクターを見せるのか。

Text by OTANI Tatsuya

RWDは4WDの廉価版ではない

今日は鈴鹿サーキットのフルコースでランボルギーニの最新鋭モデル、ランボルギーニ「ウラカン LP580-2」の試乗会が行われるというのに、昨夜からの雨で路面はまだぐっしょりと濡れたまま。すでに終わった一本目の走行でも、濡れた路面でリアが滑り始めると即座にスタビリティ コントロールが介入してくるため、テールアウトの姿勢をとっていられるのは本当に一瞬でしかない。

オーストラリアのフィリップアイランド・サーキットで体験した、後輪駆動の高いコントロール性を駆使してテールアウトの態勢を自在にコントロールするというドライビングはまるで楽しめない。なかなか乾かない鈴鹿の路面を、私は恨めしい思いで見つめていた。

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ ウラカン LP580-2

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ ウラカン LP580-2

ウラカン LP580-2は、先にデビューした4WD仕様の「ウラカン LP610-4」から前輪を駆動するメカニズムを取り外し、エンジンパワーを610psから580psに30ps落としたモデル。

もっとも、両者の違いはそれだけに留まらない。そもそも4WDを後輪駆動に改めただけならば、600ps近いパワーを路面に的確に伝達できないフラストレーションが募るばかりで、ドライビングを楽しむどころではなくなるはず。つまり、4WDの優れたトラクション性能に代わるなんらかの新機軸がなければ、LP580-2はLP610-4の単なる廉価版でしかなくなってしまうのだ。

ランボルギーニ自身も、その危険性は十分に承知していたらしい。そこでドライビングの新たな楽しみを創出するとともに、RWD化に伴う性能の低下を最小限に留めることで、4WD版に優るとも劣らない魅力的なRWDウラカンを作りだそうとしたのである。

では、具体的にどのような手法を用いたのか?

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ ウラカン LP580-2

掛け替えのない価値を持ったスーパースポーツカー

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クルマが限界を早めに教えてくれる

まず、サスペンションのスプリングを柔らかめにすることで、基本的なロードホールディングを改善するとともに、クルマの挙動変化がより大きく、よりはっきり出るようにした。さらに、リアのスタビライザー(ロールバー)も柔らかめにすることで後輪のトラクションを改善し、RWD化に伴うデメリットを最小限に抑制。いっぽうで、スプリングを柔らかくしたことで心配されるスプリング レスポンスの悪化は、フロント スタビライザーを固めることで対応したのである。

その結果、ウラカン LP580-2がどんなスーパースポーツカーに仕上がったかといえば、スプリングを柔らかくしたことでコーナリング時のロール量が増え、いまどのくらいのペースでコーナリング中かが手に取るようにわかるようになった。おかげで、タイヤがグリップを失い始めるよりずっと手前の時点で、ドライバーはクルマが限界に近づいていることを感じ取れられるようになったのだ。

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ ウラカン LP580-2

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ ウラカン LP580-2

私を含め、スキルが決して高くないドライバーにとっていちばん怖いのは、コーナリング中にいきなりクルマが限界を越えてスライドを始めることにある。反対に、限界が近づきつつあることがあらかじめわかっていれば、ペースを落とすなり、カウンターステアをあてるべく身構えたりといったことが可能になる。

いいかえれば、クルマが限界を早めに教えてくれるなら、レーシングドライバー並みの腕前を持っていなくても、ウラカンのようなスーパースポーツカーをかなりのペースで走らせることができるのである。

いっぽう、ドリフトを自在にコントロールできるドライバーにとってもウラカン LP580-2は魅力的な存在といえる。なにしろ、LP610-4は4WDを採用しているがゆえにそう簡単にはテールアウトの姿勢に持ち込めないし、かりにもちこめたとしても大きなドリフト アングルを維持するのは難しい。それが後輪駆動仕様のLP580-2では、スタビリティ コントロールに専用チューンが施されていることもあって、かなり大角度のオーバーステアが楽しめるようになっているのだ。

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ ウラカン LP580-2

掛け替えのない価値を持ったスーパースポーツカー

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“猛牛”を手懐ける

最後のセッションを迎えて、ようやく路面が乾いてきた。ここまでの走行で鈴鹿特有のライン取りもしっかり身につけることもできている。私は緊張と期待に心を躍らせながら、フルフェイスのヘルメットを深々とかぶった。

期待に違わず、路面が乾いたことでコーナリングスピードが上がり、それまでよりロール角が深くなっている。コーナーによっては軽いスキール音も聞こえるようになった。極太のピレリ Pゼロがスライドし始めるのも、そう遠くはないようだ。

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ ウラカン LP580-2

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ ウラカン LP580-2

私は、前を走るインストラクターとの間合いを詰めながら、タイトコーナーの出口でそれよりも深めにスロットルを踏み込んでみた。すると、それまでギリギリのところで耐えていたリアタイヤが音を上げ、ズルリとアウト側に流れ始めるではないか。もっとも、これらは予想の範囲内。私は軽いカウンターステアでオーバーステアの姿勢を長引かせたのち、スムーズにリアのグリップを回復させると、コーナー出口を目指して改めてスロットルを踏み直したのである。

いやいや、フィリップ・アイランドに続いてまたもや痛快な思いをさせてもらった。しかも、今回はF1日本GPの舞台で、各国のトップドライバーがスパ-フランコルシャンと並んで「世界最高峰のサーキット」と評する鈴鹿サーキットで“猛牛”を手懐けることができたのだから、その満足度はケタ違いに大きかった。

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掛け替えのない価値を持ったスーパースポーツカー

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誰にでも勧められる選択ではないが――

もっとも、偉そうにいろいろ書いたものの、オーバーバーステアになってからもスタビリティ コントロールは薄く効いていたはずなので、カウンターステアを含め、すべてはウラカンの手のひらの上で遊んでもらったようなものといえないこともない。しかし、少なくとも操っている側はそんなことを微塵も感じられなかった。

あくまでもドライビングの主役は自分自身。そしてその自らの手でウラカンをコントロールしきったとの深い歓びが心のなかに残るだけである。

最後に付け加えておくと、腕の立つドライバーがサーキットで走らせたときのタイムは、ウラカンLP610-4がLP580-2を上回るのは間違いない。それくらい、4WDのもたらすトラクション性能は大きな意味を持っているのだ。そして、いざというときのスタビリティが高く、滑りやすい路面でより安全なのも、やはり4WD版であるLP610-4のほうだ。

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ ウラカン LP580-2

Lamborghini Huracan LP580-2|ランボルギーニ ウラカン LP580-2

もともと4WD好きな私自身も、これまでLP610-4に不満を抱いたことは一度もない。そしてLP580-2を体験したあとでもLP610-4への評価は一切下がっていないが、LP580-2の痛快なハンドリングは私の心に深い爪痕を残した。だから、いま私がどちらか1台を選ぶとしたら、おそらくLP580-2をチョイスすると思う。

ただし、これは誰にでも勧められる選択ではない。あくまでも、自分のドライビング スキルを向上させたいという強い願望を持っていて、すでにある程度の経験を積んだ人だけが、LP580-2の本当の魅力を引き出すことができる。そしてそういったドライバーにとって、LP580-2は掛け替えのない価値を持ったスーパースポーツカーとなるはずだ。

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Lamborghini Huracan LP 580-2|ランボルギーニ ウラカン LP 580-2
ボディ|全長 4,459 × 全幅 1,924 × 全高 1,165 mm
ホイールベース|2,620 mm
トレッド 前/後|1,668 / 1,620 mm
車輛重量|1,389 kg
エンジン|5,204cc V型10気筒
ボア×ストローク|84.5 × 92.8 mm
最高出力| 427 kW(580 ps)/8,000 rpm
最大トルク|540 Nm/6,500 rpm
トランスミッション|7段LDF(ランボルギーニ・ドッピア・フリッツィオーネ)
駆動方式|FR
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン
タイヤ 前|245/35R19
タイヤ 後|305/35R19
ブレーキ 前|ベンチレーテッド φ365 × 34 mm
ブレーキ 後|ベンチレーテッド φ356 × 32 mm
最高速度|320 km/h
0-100km加速|3.4 秒
0-200km加速|10.1 秒
燃費(EC値)|11.9 ℓ/100 km(およそ8.4km/ℓ)
CO2排出量|278 g/km
価格(消費税込み)|2,535万840円

           
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