ゴルフ R ヴァリアントに試乗|Volkswagen
CAR / IMPRESSION
2016年8月15日

ゴルフ R ヴァリアントに試乗|Volkswagen

Volkswagen Golf R Variant |フォルクスワーゲン ゴルフ R ヴァリアント

ゴルフ R ヴァリアントに試乗

速くて、たくさん積めて、どこにでも行ける

ゴルフのラインナップにおいて最もハイパフォーマンスを誇る「ゴルフ R」。そのワゴンモデルたる「ゴルフ R ヴァリアント」に、モータージャーナリストの大谷達也氏が試乗した。

Text by OTANI TatsuyaPhotographs by ARAKAWA Masayuki

280psの2リッター・ターボ+4WD

強いもの、万能なものに憧れるのは男の子に共通の傾向だろう。幼い頃に建設機械に見とれたり、電車に強い関心を持ったりするのはその典型だし、一つの目的でしか使えないものよりも様々な用途やシチュエーションで使えるもののほうにより強く惹かれるのは多くの男の子に見られる特徴といえる。

同じことはクルマについても言えて、ただ速いだけのクルマよりも、人や荷物がたくさん積めて、どんな路面でも力強く走り抜けるクルマのほうがより人気があったりする。人によっては、オトナになるにつれてそういった“万能欲”が衰えるケースもあるようだが、ただ速いだけでなく、どんな目的にも使えるクルマに今も憧れ続けている人たちにぴったりなモデルが登場した。それが、「ゴルフ R ヴァリアント」である。

Volkswagen Golf R Variant |フォルクスワーゲン ゴルフ R ヴァリアント

Volkswagen Golf R Variant |フォルクスワーゲン ゴルフ R ヴァリアント

「あのちっぽけなゴルフが?」などというなかれ。外寸的には一応Cセグメントに属するゴルフだが、その室内は下手なDセグメントよりずっと広く感じられる。しかも、ワゴンボディのヴァリアントだったらラゲッジスペースも広々。実用性に関していえば、これ以上のスペースが求められるケースはむしろまれだろう。

速さはどうか? フロントに搭載されるのは直列4気筒2.0リッターターボだが、最高出力は実に280psに達する。ちなみに最高出力300psの本国仕様では0−100㎞/h加速が5.1秒というから、日本仕様もそれに近い俊足の持ち主と見て間違いない。

しかも、このゴルフ R ヴァリアントは歴代のゴルフ R同様、4WDシステムを搭載している。無論、4WDといってもオンロード用に最適化されたものだが、いざというときには雪道などの滑りやすい路面でも威力を発揮してくれるはず。つまり、速くて、たくさん積めて、どこにでも行けるという、男の子が憧れる要素がずらりと揃っているのがゴルフ R ヴァリアントなのだ。

Volkswagen Golf R Variant |フォルクスワーゲン ゴルフ R ヴァリアント

ゴルフ R ヴァリアントに試乗

速くて、たくさん積めて、どこにでも行ける (2)

ゴルフGTIよりワンランク上のソリッド感

その割に、外観にあまりものものしさがない点は、「かつて男の子」だった私たちオトナにも嬉しいポイントといえるのではないか。よくよく見ればタイヤはずいぶん“薄い”(225/40R18)し、車高だって普通のゴルフよりちょっと低い(−20mm)。でも、それらはクルマ好きだけに伝わる暗号のようなもの。このさり気ない雰囲気はゴルフ R ヴァリアントの大きな魅力だと思う。

もっとも、走り始めてみれば、これが特別なゴルフであることはすぐに分かる。まず、乗り心地がはっきりと硬い。言うまでもなく「ゴルフ GTI」よりワンランク上のソリッド感なのだが、2つのモデルのあいだに快適さの分水嶺があるという人は少なくないような気がする。つまり、GTIだったら納得できるけれど、Rはちょっと厳しいと感じられるかもしれない、ということ。

Volkswagen Golf R Variant |フォルクスワーゲン ゴルフ R ヴァリアント

Volkswagen Golf R Variant |フォルクスワーゲン ゴルフ R ヴァリアント

ただし、ゴルフ R ヴァリアントのボディは従来のゴルフ ヴァリアントよりもはるかに剛性感が高まっているから、いくらタイヤから強力なショックが入っても嫌な振動として残ることはないし、サスペンションの動きはあくまでも正確そのもの。そしてこの硬さが、ハードコーナリングで抜群の効果を発揮してくれるのだ。

リニアリティの高いステアリング、アクセル、ブレーキをコントロールしながらコーナーに進入していく。最初に姿勢さえ決めてしまえば、狙いどおりのラインをトレースするのは容易。そのさい、ステアリング特性は弱アンダーステアを保ち続ける。私は、スペインで開催されたゴルフ R ヴァリアントの国際試乗会に参加し、サーキットで思い切り振り回した経験があるが、コーナリング中にわざとアクセルを抜いてフロント荷重にしてもリアのスリップアングルが一定以上に増すことは決してなかった。

Volkswagen Golf R Variant |フォルクスワーゲン ゴルフ R ヴァリアント

Volkswagen Golf R Variant |フォルクスワーゲン ゴルフ R ヴァリアント

これが前輪駆動のゴルフGTIであれば、リアの内輪が浮き上がってオーバーステアが出そうになるのをESPが懸命に押さえ込むかたちになるだろう。その結果、ドライバーがコントロールしていないところでエンジンパワーが絞られたりステアリング特性が変化したりして、なんともいえないもどかしさを覚えることになる。けれども、ゴルフ R ヴァリアントはリアのグリップレベルがぐんと上がっているため、ゴルフGTIのようにテールがだらしなく滑り始めるということはないのだ。

Volkswagen Golf R Variant |フォルクスワーゲン ゴルフ R ヴァリアント

ゴルフ R ヴァリアントに試乗

速くて、たくさん積めて、どこにでも行ける (3)

最後の最後まで安定しきったステアリング特性

欲をいえば、リアがグリップしたままオーバーステアがわずかに顔を出す領域までドライバーにコントロールさせてくれたら最高だろう。けれども、フォルクスワーゲンは「誰が運転しても安心していられる」ことを最優先し、ステアリング特性を弱アンダーステアの範囲だけに留めた。これはこれでひとつの優れた見識だと私は思う。

ゴルフ R ヴァリアントがゴルフGTIのようにオーバーステア傾向に陥らないのは、フロントサスペンションのスプリングを固めてロールを押さえ込んだためと考えると納得がいく。つまり、ゴルフ R ヴァリアントは快適性を犠牲にすることで、最後の最後まで安定しきったステアリング特性を手に入れたともいえるのだ。

Volkswagen Golf R Variant |フォルクスワーゲン ゴルフ R ヴァリアント

Volkswagen Golf R Variant |フォルクスワーゲン ゴルフ R ヴァリアント

もちろん、ゴルフGTIとゴルフ R ヴァリアントのあいだには最高出力で60psの差があるけれど、個人的には、足回りに関する考え方のほうが両者の違いはずっと際立っているように思えて仕方ない。

ちなみに、価格はゴルフGTIの399万円(DSG仕様)に対して、ゴルフ R ヴァリアントは559万円に跳ね上がる。さて、アナタならどちらを選ぶだろうか?

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Volkswagen Golf R Variant│フォルクスワーゲン ゴルフ R ヴァリアント
ボディサイズ|全長4,595 × 全幅1,800 × 全高1,465 mm
ホイールベース|2,635 mm
重量|1,560kg
エンジン|1,984 cc直列4気筒DOHC
最高出力|206 kW (280 ps)/5,100 – 6,500 rpm
最大トルク|380 Nm (38.7 kgm)/1,800 – 5,100 rpm
トランスミッション|6段DSG
駆動方式|フルタイム4WD(4MOTION)
燃費(JC08モード)|14.2 km/ℓ
ハンドル|右
タイヤ|R225/40R18
価格|559万円

問い合わせ先

フォルクスワーゲン カスタマーセンター

0120-993-199

           
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