新型プラットフォームを初めて採用

新世代に入った、とボルボカーでは自社の製品について語る。その第一弾になる新型「XC90」が2016年1月に日本発売開始された。全長4.9メートルのボディに7つのシートを備える大型SUVで、同社にとって初のプラグインハイブリッドモデルもラインナップに持つ。

2003年発表の先代以来、12年ぶりのフルモデルチェンジとなったXC90。巨額の開発費を投入して、これからのボルボ車の基本骨格となる新型プラットフォームを最初に採用したのも大きな特徴だ。日本でのラインナップは、下記となる。

XC90 T5 AWD「モメンタム」（774万円）
XC90 T6 AWD 「Rデザイン」（879万円）
同　「インスクリプション」（909万円）
XC90 T8ツインエンジンAWD「インスクリプション」（1009万円）

XC90 T6 AWD インスクリプション

エンジンは基本的に同じ設計の2リッター4気筒。T5はターボチャージャー装着で、187kw(254ps)の最高出力と350Nmの最大トルクを発生する。T6はターボチャージャーに加え低速からパワーの底上げをするスーパーチャージャーも備え235kW（320ps）、400Nmを誇る。T8はプラグインハイブリッドのパワートレインに用いられるサブネームで、エンジンはT6。加えて240Nmの最大トルクを発生する電気モーターを搭載。

駆動方式は、基本的に前輪駆動のハルデックス社製のオンデマンド型4WD。T8のみ、前輪はガソリンエンジンで、後輪は電気モーターで駆動する方式を採用している。

今回試乗したのは、XC90 T6 AWD。内装の一部など装備がやや豪華になる「インスクリプション」仕様だ。5つのドライブモードを選択できる4輪エアサスペンション（30万円のオプション）を備えていた。全体の印象として、上質感はかなりのものだった。ライバルの多い市場でも、確実に一角を占めそうだ。

実によく出来ている2リッターエンジン

新型ボルボXC90は、スタイリングは以前よりおとなしめに、別の言葉を使えば、品がよくなったような印象を受ける。背景には、車体と車輪の位置関係からくるプロポーションにこだわり、伝統的な美を追究するボルボカーのデザインディレクターの意向が反映されているようだ。アクの強さが抑えられているので、目立つことをよしとする傾向が強いなか、こちらに好感を持つ人も少なくないだろう。

サイドビューはおとなしめであるのに対して、フロントマスクではキャラクターを演出している。｢アイアンマーク｣と呼ばれるボルボカーズの大きなエンブレムを中央に備えた金属感のあるグリルを挟んで、矩形を基調にした輪郭のヘッドランプを持つ。意匠には工夫があって、T字を横にしたようなアクセントレンズが入れられている。これが新世代ボルボのデザイン的なアイデンティティになるようで、「S90」および「V90」といったニューモデルでも共通だ。

XC90 T6 AWD Rデザイン

走らせると、XC90はたしかに新しいと感じる。第一に印象的なのは、エンジンだ。今後2リッター4気筒より大きなエンジンは作らないというボルボカーの方針に従って、全長5メートルになんなんとするボディでも、“わずか”2リッター。しかし実際に試すと、これが実によく出来ているエンジンなのだ。なにも知らずに走りだせば、V6かV8と思う人だっているかもしれない。

4気筒の振動はていねいに抑えられているいっぽう、力はたっぷり。低回転域からもりもりとトルクが出て、回転を上げていっても、パワーの中だるみ感もない。それでいて燃費はメーカー発表の11.7km/ℓ（JC08モード）が現実的である。

試乗車はエアサスペンションを備えていた。これも好感の持てるものだった。ややダイアゴナルな（つまりサスペンションストロークの長いクロカン4WD的な）動きが感じられたが、総じてしなやかで、路面の凹凸をよくこなし、上質感のある乗り心地をもたらしている。

エンジンモード切り替えスイッチでパワーモードを選ぶと、瞬間的にドーンっと驚くほどのパワー感が襲ってくるほどだ。その際も車体の動きはよく制御され、ハンドリングは確実。楽しささえ感じられるのだった。

新しいプラットフォームの狙いのひとつとして、「快適さを損なわずに運転する歓びを向上」（日本法人のボルボカージャパン）というものがあるようだが、目的は達成されていると感じた。静粛性も高く、速度をあげていっても騒音レベルは低いままにとどまるのにも感心した。

快適装備にも驚くべきものがある。

充実の安全装備

新型ボルボXC90の大きな魅力のひとつがインテリアだ。豊富な外板色と、4色が用意された内装色の組み合わせで、このクルマは成立している。ダッシュボードのフェイシアには、ウォルナット、カーボンファイバー調、アルミニウム調と3つのパネルが用意される。ステアリングホイールも、黒一色の革巻きか、リム外側が黒で内側がライトグレーのコンビの革巻きか、選べるようになっている。

従来型より125kgほど軽量化しているいっぽう、全長は160mmほど延びている。室内空間には余裕が生まれ、2列目の広々感は印象に残る。さらに3列目も、従来は身長160cmがマキシマムだったのに対して今回は170cmまで対応可と大型化。3列目シートをたためばフラットフロアになり荷室容量は692リッターと、実用性は高い。

XC90 T6 AWD インスクリプション

室内はクリーンな造型が特徴的だ。ベントレーモーター出身のデザイナー、ロビン・ペイジ氏が担当しており、操作類を極力減らすことで、運転への集中度を高めるとともに、上質感を醸し出すのに成功している。12.3インチの大型TFTをメーターパネルに採用してナビゲーションの画面も表示できるなど、機能を集約化したのも、シンプルな造型に寄与している。さらにダッシュボード中央部には9インチの縦型モニター画面を搭載。フリップ動作などで、エアコン、オーディオ、ドライブモード、通信など、ほとんどの操作が行える。

XC90 T6 AWD インスクリプション

フリップによるコントロール操作は、多少の慣れが必要だが、助手席の人が使いやすいのと、習熟も（スマートフォンのように）オーナーの楽しみと考えることができる。アップルの「カープレイ」と連動しているので、iPhoneをつなぐこともできる。Siriを使って、電話をかけたりナビゲーションを操作したりと、新しい要素がちゃんと取り込まれているのだ。

道路から飛び出して路肩から落ちたときに前席乗員を脊椎損傷から守る「ランオフロードプロテクション」や、交差点右折時に直進してくる対向車との接触を回避または被害軽減を目指した自動ブレーキシステム「インターセクションサポート」は、世界初採用の技術だという。衝突回避・軽減オートブレーキシステムや、夜間を含んでの歩行者およびサイクリスト検知機能や、追従時車線維持機能が追加されたアダプティブクルーズコントロールといった、安全技術の充実ぶりも、新世代の高級SUVにふさわしいものだ。

XC90 T6 AWD Rデザイン

ドイツや英国や日本の高級SUVとはまた違う魅力を持つ、新型ボルボXC90。落ち着いて安心して付き合っていられる、余裕ある大人のためのモデルだ。いちど好きになったら、ずっと好きになっていられると思う。

Volvo XC90 T5 AWD Momentum｜ボルボ XC90 T5 エーダブリューディー モメンタム
ボディサイズ｜全長 4,950 × 全幅 1,930 × 全高 1,775 mm
ホイールベース｜2,985 mm
最低地上高｜225 mm
車両重量｜2,060 kg
トレッド｜1,665 mm
乗車定員｜7 名
駆動方式｜4WD
エンジン｜インタークーラー付ターボチャージャー DOHC水冷直列4気筒横置き 16バルブ
最高出力｜ 187kW（254ps）/5,500rpm
最大トルク｜350Nm（35.7kgm）/1,500-4,800rpm
トランスミッション｜電子制御前進8段AT
燃費（JC08モード）｜12.8 km/ℓ
価格｜774万円（XC90 T5 AWD Momentum）

XC90 T6 AWD｜ボルボ XC90 T6 エーダブリューディー
ボディサイズ｜全長 4,950 × 全幅 1,960 × 全高 1,775 mm
ホイールベース｜2,985 mm
最低地上高｜225 mm
車両重量｜2,080 kg
トレッド｜1,675 mm
乗車定員｜7 名
駆動方式｜4WD
エンジン｜インタークーラー付ターボチャージャー DOHC水冷直列4気筒横置き 16バルブ
最高出力｜ 235kW（320ps）/5,700rpm
最大トルク｜400Nm（40.8kgm）/2,200-5,400rpm
トランスミッション｜電子制御前進8段AT
燃費（JC08モード）｜11.7 km/ℓ
価格｜879万円（XC90 T6 AWD R-Design）、909万円（XC90 T6 AWD Inscription）

XC90 T8 Twin Engine AWD Inscription｜ボルボ XC90 T8 ツインエンジン エーダブリューディー インスクリプション
ボディサイズ｜全長 4,950 × 全幅 1,960 × 全高 1,775 mm
エンジン｜インタークーラー付ターボチャージャー DOHC水冷直列4気筒横置き 16バルブ
ホイールベース｜2,985 mm
最低地上高｜225 mm
車両重量｜2,320 kg
トレッド　前 / 後｜1,675 / 1,680 mm
乗車定員｜7 名
駆動方式｜4WD
最高出力（エンジン）｜ 235kW（320ps）/5,700rpm
最高出力（モーター）｜ 34kW/2,500rpm（前）、65kW/7,000rpm（後）
最大トルク（エンジン）｜400Nm（40.8kgm）/2,200-5,400rpm
最大トルク（モーター）｜160Nm/0-2,500rpm（前）、240Nm/0-3,000rpm（後）
最高出力（トータル）｜269kW（320ps）（前）、300kW（320ps）（後）
トランスミッション｜電子制御前進8段AT
燃費（JC08モード）｜15.3 km/ℓ
価格｜1009万円（XC90 T8 Twin Engine AWD Inscription）