フォルクスワーゲンup!4ドアにデュッセルドルフで試乗|Volkswagen
CAR / IMPRESSION
2014年12月12日

フォルクスワーゲンup!4ドアにデュッセルドルフで試乗|Volkswagen

Volkswagen up!|フォルクスワーゲン up !

こっちが本命?

フォルクスワーゲン up!4ドア 試乗記

up! 2ドア版につづき、up! 4ドア版の試乗会が、ドイツはデュッセルドルフにておこなわれた。日本にもかなり戦略的なプライスタグをさげての導入が噂されるこの4ドア up!。島下泰久氏はどう評価する?

大谷達也氏による「フォルクスワーゲン up!」国内試乗記はこちら

「フォルクスワーゲン up!」国内発表会はこちら

Text by SHIMASHITA Yasuhisa

これが日本仕様「up!」か?

2ドア版のデビューを機に、昨秋、ローマにておこなわれた国際試乗会につづいて、フォルクスワーゲンはラインナップ中もっともコンパクトなモデル「up!」の4ドア版の試乗会を、デュッセルドルフにて開催した。ドア枚数が増えただけでわざわざ? とおもって訊くと、メーカーとしてはこの4ドアが販売の5割を超えると予測しているのだという。

しかも、登場が待たれていた「ASG」と呼ばれるセミオートマチックギアボックスを搭載したモデルは、このタイミングではじめて試乗車が用意された。この4ドア+ASGという組み合わせこそ、日本導入が見込まれている仕様そのもの。そんなわけであらためて、じっくりと試乗に臨んだのだった。

Volkswagen up!|フォルクスワーゲン up !

全長3,540×全幅1,641×全高1,478mm、ホイールベース2,420mmというボディサイズは2ドアも4ドアも変わりはない。短い前後オーバーハングが特徴的な、シンプルな面で構成されたフォルム、グリルレスのフロントマスク、スマートフォンをモチーフにしたというリアビューも同様である。

ことなるのは当然ながらリアドアがあること。それにともなってリアクウォータウインドウは、2ドアの後方に向かってせり上がるデザインから、オーソドックスなかたちに変更された。とは言え、全体の印象が個性派であることにちがいはない。

室内も相変わらずの広さだ。着座位置を高めにしてアップライト気味に座らせるパッケージングのおかげで、前席は座っていて開放感があるし、後席に至っては頭上も膝まわりも狭苦しさとは無縁。大人2人が、なんの不満もなくリラックスして座っていられる余裕がある。あるいは兄貴分であるポロよりも広いかもしれないというぐらい、余裕があるのだ。

Volkswagen up!|フォルクスワーゲン up !

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ただし、この後席は2名掛けで、中央席の用意はナシ。またリアウインドウが後ろ開きのヒンジ式で、風を取り入れるぐらいしかできないのも不満におもえた。リアドアは追加されても、主市場であるヨーロッパでは、後席はあくまで補助席プラスアルファでしかないのだろう。しかし日本ではこれ、ファミリーユースを考えると、ネックになる可能性はある。

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フォルクスワーゲン up!4ドア 試乗記(2)

つい欲が出るASG

エンジンは直列3気筒999ccの直噴でもターボでもないプレーンな自然吸気ユニットのみ。セッティングのちがいによる75psと60psの2本立てとなる。スペックだけ見ると走りは期待できなそうだが、95Nmという最大トルクの90パーセントを、すでに2,000rpmから発生する特性もあって、実際にはアクセルを深く踏み込むまでもなく、スーッと加速していってくれるし、低速での粘りもある。

たとえば、50kmで5速に入れるとエンジン回転数は1,500rpmまで下がるのだが、そのままシフトダウンしなくても、じわじわと速度が高まっていく。

3気筒のくせして音や振動に安っぽさがないのにも感心させられる。しかも振動を抑制するバランサーシャフトの類は重量増になるため使われておらず、軽量化と精度の追求でそれを実現したというからさらに驚かされてしまう。これならヒトに勧めてガッカリさせられることはないだろう。

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気になるASGは、要するにマニュアルギアボックスのクラッチ操作を機械が代わりにやってくれるタイプの、シングルクラッチのロボタイズドMTである。よって変速時のタイムラグはやはり皆無ではなく、特に1速から2速へのシフトアップでは、もどかしさが否めない。呼吸を合わせてアクセルを一瞬抜くなど、ちょっとしたワザで走りは格段にスムーズになるのだが、いずれにせよ説明、そして慣れは必要だ。

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燃費を重視した設定らしくシフトアップは早め。スポーツモードの設定はなく、不満ならばシーケンシャルゲートを使って手動で変速するしかないが、十分なトルクのおかげで出番は少ない。むしろ、ちょっと加速したいだけの場面でもいちいちキックダウンするのが煩わしくおもえるほど。持ち前の粘り強さを活かして、そのままのギアで加速してほしいと感じる場面に何度も遭遇した。その意味でも「スポーツ」と「エコ」など、走行モード切替はやはり欲しい。

とは言え、このあたりはどれも些細なこと。期待以上の実力に、つい欲が出たという話である。基本性能は十二分に高い。

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フォルクスワーゲン up!4ドア 試乗記(3)

ゴルフ、ポロとはまたちがう

シャシー性能も、やはり唸るしかない。走りの剛性感で言えば、ゴルフやポロのように全身ガチガチに筋肉質といった風ではなく、むしろ軽やか。サスペンションもソフトで、助手席に人が座ると車体がグッと沈むのがわかるほどだ。

おかげで乗り心地は良好。長いホイールベースにも助けられて、しなやかだけどフラットな、心地良い乗り味を実現している。石畳のような路面でも、ムリヤリ突っ切るというよりは、軽くいなしていく感じ。ゴルフやポロとはちがった、もう少し柔らかな味わいが気持ち良い。

けれど、決して軟弱なわけではない。基礎となる骨格がいかにもしっかりしていて、華奢かとおもったらまったくそんなことはないのだ。

Volkswagen up!|フォルクスワーゲン up !

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おかげで操縦安定性は、まさに盤石。アウトバーンではほぼ最高速である160km/hまで出してみたが、不安感とは一切無縁にピタッと真っ直ぐ走ってくれるし、そこからハードにブレーキをかけても姿勢がとっちらかるようなことはなかった。それでいてコーナーの連続に差し掛かれば軽快なフットワークを披露。ロールはうまく抑えられていて、安定した姿勢を保ったまま駆け抜けることができる。

言うまでもなく、安全デバイスはフル装備である。しかもup!は赤外線レーザーにて車両前方を監視し、30km/h以下では追突を自動ブレーキで回避する「シティエマージェンシーブレーキ」をこのクラスではじめてオプション設定している。本来、コンパクトカーにこそ必要な装備だけに、まさに英断と言えるだろう。

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フォルクスワーゲン up!4ドア 試乗記(4)

日本車あやうし!

正直に言うと、最初は見た目も走りもそれほどピンと来なかった。見た目はシンプル過ぎると感じたし、内装も全面ハードパッドで素材のクオリティは大したことはない。走りだって強く訴えてくるというものではないと感じたからだ、そう最初は。

しかし、じっくりと眺め、そして走らせるうちに、どんどん印象が好転していった。簡素に見えたデザインは、美しい面と細部まで凝ったディテールのおかげで見飽きることがないし、大いなる安心感の下におもいきり使いきれる走りにも、どんどん引き込まれた。見るほどに、乗るほどに魅了されてしまったのだった。

Volkswagen up!|フォルクスワーゲン up !

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現行ポロが出た時には「これならゴルフは要らないかもしれない」などと言われたものだが、up!のあり方はそんなゴルフとポロの関係とはちがっていて、内外装にしても走りにしても、あの重厚なポロの縮小版という態ではない。けれどもクルマの芯となる部分は、しっかり手間暇、そしてコストがかかっている。日本のライバル候補とは、力を入れている部分がまったくことなっているのだ。

このup!、日本には相当に戦略的な、つまりは日本車ユーザーをもグラつかせるような価格で導入されると言われている。もし本当に競争力のある価格で上陸したら、あるいはポロが登場した時よりも大きなショックをもたらすかもしれない。なんでも聞くところによれば、日本の某メーカーはすでに研究用としてup!を購入し、各種テストをおこない、そして天を仰いでいるということである。

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