最上級アメリカンSUVにデトロイトで試乗!|Cadillac
CAR / IMPRESSION
2014年12月17日

最上級アメリカンSUVにデトロイトで試乗!|Cadillac

CADILLAC ESCALADE|キャデラック エスカレード

最上級アメリカンSUVにデトロイトで試乗!

キャデラックの最上級大型SUV、エスカレード。2007年にデビューしたその現行モデルの最新版に、デトロイトショー取材で彼の地を訪れたモータージャーナリスト、島下泰久が試乗した。

Text by SHIMASHITA Yasuhisa

存在感溢れるエクステリア

キャデラックの最上級モデルとして君臨する大型SUVのエスカレードは従来、三井物産オートモーティブが輸入・販売をおこなっていた。しかし、そのディストリビューター契約は昨秋に終了。いよいよ今春からはあらためてGMジャパンが、販売を手がけることとなった。じつは2007年にデビューした現行エスカレードも、これまでに数かずの改良がくわえられ て今にいたっている。北米国際モーターショーのために訪れたデトロイトで、その最新版を試した。

それにしても外観の迫力と言ったら、まさに圧巻だ。単純にサイズが大きいということもある。何しろスリーサイズは本国仕様の数値で全長202.5インチ(約5144mm)×全幅79.0インチ(約2007mm)×全 高75.9インチ(約1928mm)にも達するのだ。なお、本国には全長222.9インチ(約5662mm)と、さらに巨大なサイズを誇るエスカレー ドESVも用意されている。リアドアの長さから すれば、むしろこちらこそ本来の姿? と思ってしまう。



全身のフォルムも、SUVら しい骨太な雰囲気が漲っている。なにしろ足もとで輝くクローム仕上げのホイールは22インチである。それを難無く履きこなしてしまうのだから、存在感は際立っている。

室内へと乗り込む。うれしいのは電動格納式アシストステップが標準装備となったこと。着座位置が高く、オトコでも乗り降りは決してラクではないだけに、これは重宝するはずである。

CADILLAC ESCALADE|キャデラック エスカレード

最上級アメリカンSUVにデトロイトで試乗!(2)

2.5トンの車重をものともしない6.2リッターV8

インテリアも仕立ては豪華。目を見張るほどハイクオリティというわけではないが、ソフトなレザーと艶めいたウッドパネルの組み合わせは、これぞアメリカ車という趣の贅たくさを味わわせてくれる。とくにふっかふかのシートはサイズも大きく 身体を包み込んでくれて、座り心地は抜群。前方の見晴しは良く、横や後ろも比較的スクエアなボディ形状のおかげで、思った以上によく把握できる。狭い道ですれちがうにはイヤな相手かもしれないが、自分がステアリングを握っているぶんには、じつはそれほど神経を使わなくても済みそうだ。

エンジンを始動すると、室内にズロロロロ……というアメリカンV8ら しいサウンドが聞こえてきて、心を弾ませる。排気量6.2リッターのこのOHVユニットは、最高出力409ps/5700rpm、最大トルク57.6kgm/4300rpmを発生。6段ATを介して後輪もしくは4輪を駆動する。4輪駆動システムは前後40:60のトルク配分比をもつ電子制御式である。



ステアリングコラムから伸びたシフトレバーを引き下ろしてDレンジに入れ、ゆっくりと走り出す。アクセルペダルを深く踏み込む必要はない。エンジンの豊かなトルクのおかげで、2.5トンの 車重をものともせずエスカレードはしずしずと走り出す。

アクセルペダルを踏み込んだ時の反応は、決して良いほうではない。しかし地力があるため加速は しっかりついてくる。最初はもっとシャキッと反応してくれればと思うのだが、次第に身体がなじんできて、いつしか急がずゆったり行こうという 気持ちに変わってくる。速度規制が厳しく、ダラダラとした流れがつづくアメリカの高速道路を走らせていると、この感覚がなんとも気持ちが良いのだ。ATにはMレンジもあり、シフトレバー上の+/-スイッチを押してマニュアルシフトもできるのだが、率直に言って出番はほとんど無かった。

もちろん思い切り踏み込めば、期待にたがわぬ豪快な加速を楽しむこともできる。さらに増幅されたV8のビートとシンクロするように速度が高まっていく様 は、この巨体だけに全開にしつづけるのを躊躇してしまうほどの凄まじい迫力だ。普段はほとんど必要なくても、いざという時には余裕で流れをリードできる。これもプレミアムカーにとっては大事な性能である。

CADILLAC ESCALADE|キャデラック エスカレード

最上級アメリカンSUVにデトロイトで試乗!(3)

いちど浸ってしまったら離れられなくなりそうなクルマ

フットワークも、やはりおなじようなテイストと言える。主流のモノコックではなくフレーム付きの大きく重い車体には、機敏な反応など望むべくもない。しかし不安になるほどではなく、要はステアリングを握る手に力を入れずに、ゆっくり操作 してやればいいだけの話。無理せずクルマなりに走らせてやれば、自然に真っ直ぐ突き進んで行く。これがまた気持ち良い。

乗り心地も上々。フレーム付きならではのおおらかな感覚が、大径のオールシーズンタイヤで増幅さ れて、とにかくゆったりとしている。標準装備されるマグネティックライドコントロールサスペンションの効果も小さくはないのだろう。路面の悪いところでは足もとにゴツゴツとした入力があるのは感じられるが、決して直接的なショックを伝えてきたりはしないのである。



デトロイト周辺で久しぶりに乗ったエスカレード。振り返って印象的なのは、試乗中ずっと、とてもリラックスした気持ちでいられたということだ。走りも快適性も、その大きさや守られているという感覚も、すべてがそこに繋がっている。

時代に則したクルマではない、ということにはなる。しかも、このサイズである。誰にでもお薦めとは言えないが、いちど浸ってしまったら離れられなくなりそうなクルマとは言えそうだ。

spec

CADILLAC ESCALADE|キャデラック エスカレード
ボディサイズ|全長5,140 × 全幅2,030 × 全高1,920mm
ホイールベース|2,950mm
車両重量|2,600kg
エンジン|6.3リッターV型8気筒OHV
最高出力|301kW(409ps)/5,700rpm
最大トルク|565Nm(57.6kgm)/4,300rpm
駆動方式|4WD

           
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