新型アウディA4に試乗する|Audi
CAR / IMPRESSION
2015年11月19日

新型アウディA4に試乗する|Audi

Audi A4|アウディA4

新型アウディA4に試乗する

今年7月、7年ぶりにフルモデルチェンジをおこなったアウディ「A4」に、小川フミオ氏が試乗した。メルセデス・ベンツ「Cクラス」やBMW「3シリーズ」といったライバルひしめく同セグメントのなかで、アウディが導き出した答えとは。イタリア・ベネツィアからのレポート。

Text by OGAWA Fumio

7年ぶりのフルモデルチェンジ

アウディ「A4」がフルモデルチェンジを受け、試乗会がイタリア・ベネツィア近郊で開催された。A4はアウディにとってもっとも重要なモデルであり、ドイツを中心とする欧州各国でも、メルセデス・ベンツ「Cクラス」やBMW「3シリーズ」を向こうに回して健闘しているベストセラーだ。それゆえ、今回の9世代目は注目を集めている。

7年ぶりにフルモデルチェンジしたアウディA4の特徴をひとことでいうと、向上した環境性能だ。軽量車体に、好燃費の新開発エンジンの組み合わせ。同時に、静粛性と乗り心地など快適性も上がっている。前輪駆動モデルが主体で、一部のエンジンにはフルタイム4WDのクワトロシステムが組み合わせられる。従来型よりフットワークが軽くなり、ハンドリングが向上して、走らせる楽しさは目に見えて大きくなっていると謳われる。

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「外観はあきらかにA4ファミリーとわかるようにしました。それでいながら水平基調のラインを強調して軽快感を演出。いっぽうで、ヘッドクリアランスは24mm、後席のニールームは23mm余裕をもたせています」。現場で会った開発担当者は内容があたらしくなったことを強調する。数値的には、全長が4,726mm(従来型+25mm)、全幅は1,842mm(同+16mm)、全高は1,427mm(同一)となる。ホイールベースは2,820mmで、こちらは+12mmだ。

「寸法は拡大していますが、重量は従来型より最大120kg軽くなっています」。アウディの技術者がそう強調するように、サスペンションシステムの構成部品をはじめ、フレームなど構造材の一部にも軽量部材を使用しているのが、新型A4の特徴だ。

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エンジンは、1.4リッターの4気筒と、出力のことなる2リッター4気筒が揃う。ディーゼルは2リッター4気筒と、3リッターV型6気筒が用意される。

駆動方式は前輪駆動がメインとなるが、185kW(245ps)の2.0TFSI(ガソリン)と、140kW(190ps)以上の2.0TDI(ディーゼル)には、フルタイム4WDシステムであるクワトロが用意される。

日本には、当面、2種類の2.0TFSI(おそらく1つはクワトロ)が導入されるとのことで、変速機は、従来の無段変速であるマルチトロニックに代わり、ツインクラッチ採用の7段「Sトロニック」となる点があたらしい。

シングルフレームグリルは横に広がり、ヘッドランプやエアダムの形状とともに、それなりにアグレッシブさは増した。しかし、見た目は意外にもおとなしい、というのが偽らざる感想だ。いっぽうで、走りは驚くほどよくなっていた。

Audi A4|アウディA4

新型アウディA4に試乗する (2)

新開発2リッターユニットの出来映え

新型A4の試乗会の舞台はベネツィア。といっても、アドリア海に“浮かぶ"島にクルマでは入れないので、空港などのある本土の山道やアウトストラーダを走るのが指定のコースだった。北イタリアでは昔からアウディがよく売れているため、大小さまざまなモデルを目にする。そしてオーナーたちは、新型A4をめざとく認め、笑顔で興味を示していた。

日本導入予定のガソリンエンジンモデルである、140kWおよび185kWの2.0TFSIという、2つの仕様に乗ることができた。140kWの最高出力と320Nmの最大トルクをもつ2.0TFSIは前輪駆動モデル、185kW、370Nmの2.0TFSIはクワトロだった。

結論からいうと、ともにすばらしく印象がよかった。見た目は地味な印象のフルモデルチェンジだったが、ハンドルを握ってほんの少し走り出しただけで、曇っていた空がいきなり晴れ渡ったかんじだ。

好印象の理由のひとつは、新開発の2リッターユニットの出来がすばらしいこと。今回は、従来の(一般的な)オットーサイクルでなく、ミラーサイクルを使ったことが特筆点だ。圧縮行程を短縮して中負荷領域をカバーする一方、吸気タイミングをコントロールしてターボチャージャーによる過給で高負荷時には最適の力が得られるようにしている。

大きめなエンジンのメリットはそのままに、小排気量エンジンとおなじ効率を得るというのがミラーサイクル採用の理由として挙げられている。アウディでは「ライトサイジング」(適切な排気量の意味か)というコンセプトをあらたに掲げ、たんに排気量を小さくする段階から、どのメーカーよりも早く次のステップに移ったことを強調しているのだ。

アウディによると、従来の1.4リッターエンジンの燃費が100km走るのに4.9リッターを消費したのに対し、新開発のエンジンは2リッターでありながら4.8リッターにとどまるとされる。つまり排気量が小さいほうが好燃費という常識が覆されている。日本ふうにいけば、リッター21kmに迫る燃費。これには驚くばかりだ。

新エンジンの体感をひとことで記すと、じつに気持ちよく回る。同時に、ハンドルを切ったときの車体の応答性は速く、「MLBエボ」とアウディが呼ぶエンジン縦置き型プラットフォームの改良版の出来のよさがわかる。操舵が軽く感じられるパワーアシストがついており、これは個人的な好み。切り始めから車体が即座に反応しているのが伝わってくる感覚は、前輪駆動モデルを長年作ってきたアウディの豊かな経験が結実している。スポーティですらあり、メルセデスやBMWといった後輪駆動のライバルとはまたちがう軽快感は、誰にも勧めたくなるほどの出来のよさだ。

A4にはultra(ウルトラ)という軽量車体のモデルも設定されている。世界耐久選手権のファンならば、アウディのレーシングマシンR18にも同様のサブネームがあったのを記憶しているのでは。もっとも燃費効率にすぐれたバージョンを指す。「通常のモデルとは、ギア比、ボディパーツ、サスペンョンなどの一部が変更され、タイヤはころがり抵抗を抑えた仕様」(アウディ)というのが特徴だ。日本導入されるかは未定だが、乗ると本当に軽い印象で好ましい仕様である。

A4でもかなりスポーティなドライブが楽しめるのだが、よりパワフルなクワトロはその上を行く。

Audi A4|アウディA4

新型アウディA4に試乗する (3)

S4なんか必要ない?

アウディが選んだドライブコースには屈曲した道がえんえん続く山岳路が入っていた。時おり林の向こうに輝くアドリア海が見えたが、林の中をくねって上り下りするワインディングロードは海岸沿いのドライブではない。しかしそれはそれで、A4なら気分がよいのだ。2.0TFSIクワトロに乗ると(前輪駆動の2.0TFSIでも不満はなかったが)、こんな道が世の中にあるのを感謝したくなるほど、思い切りドライブが楽しめるのだった。

クワトロのパワーユニットは1,600rpmから370Nmの最大トルクを発生しはじめるフラットトルク型なのだが、印象的には弾けるような加速が楽しめた。ふだんは前40、後ろ60の割合でトルクを配分する設定だが、前輪を駆動していることによる負の要素は運転中に感じられない。試乗車はオプションのダイナミックステアリング(可変ギア比)を装備していたせいもあるだろう、ハンドルを握る手にごくわずか力を込めるだけで、車体はさっと向きを変えるのだ。

ドライバーとクルマが一体化したような操縦感覚が、ハイパワー版とはいえフツウのA4で味わえるのだから、このモデルは一種のバーゲンといえる。ミラーサイクルを採用した恩恵か、ターボラグはなく、かつレッドゾーン手前まで軽々というかんじで吹け上がるエンジンの印象はまことに気持ちがいい。

静止から100km/hまで5.8秒で加速する185kWのハイパワー版だからだろう、足回りはすこし“締め上げて"ある。やや路面の凹凸が伝わってくるが、それも不快さとは関係ない。あたらしいクワトロが意味するのは軽快なスポーティさなのだ。こうして、あたらしい価値を提示してくれているのに感心する。

アウディドライブセレクトで、パワーステアリングのギア比、アクセル開度に応じたエンジンレスポンス、変速タイミング、クルーズコントロール、(オプションによっては)減衰力可変機構を備えたサスペンションの制御マップ、そしてオートエアコンの働きが変更できる。モードは、コンフォート、ダイナミック、エフィシエンシー、オート、そしてインディビデュアルの5つが設定されている。

果たして、少し飛ばしてみただけで、フランクフルトショーで発表されたハイパワーモデル、「S4」なんか必要ないんじゃないの?と思えるぐらいのスポーティさが堪能できる。

全体に静粛性も高い。ウィンドシールド用ガラスの板厚が厚みを増したことをはじめ、ドアのシール材の材質見直しや、ギアボックスやエンジンからの透過音も効果的に抑えられているはずだ。空気抵抗値もCd=0.23と極端に低い。「A8なみ」とアウディのエンジニアは胸を張ったが、それは誇張ではない。静かで快適な室内空間もまた、A4の誇るべき点であることに同意する。

Audi A4|アウディA4

新型アウディA4に試乗する (4)

A4に備わる最先端の技術

自動運転もA4ではアップデートされて、高いレベルになっている。なかでも、トラフィックジャム コントロールは、じつに興味ぶかいシステムだ。

インテリジェンス。これは、試乗会で、アウディの技術者たちがA4について説明する中で、繰り返し登場した単語だ。その意味は、ドライバーアシスタンスシステムともいわれる、自動運転技術がフルに採用されていることである。レーダーと超音波とカメラを使い、安全性能と環境性能をともに高めようというのが目的だ。

とりわけ注目すべきは、アダプティブクルーズコントロールである。先行車両追随機能で、停止と再発進も自動でおこなう。0-250km/hの速度域で作動可能という。交通標識認識機能を使えば、カメラが読みとった制限速度を超えると自動的にブレーキがかかるように設定することもできる(日本への導入予定なし)。

さらに今回は、トラフィックジャムアシストという機能がくわわった。渋滞時にセットすれば、上記の自動運転システムが作動するとともにハンドル操作も自動でサポートされる。

「トラフィックジャムアシストを含めたアダプティブクルーズコントロールで、燃費は大きく改善されます」。アウディの技術者の言葉にあるように、一度でもアダプティブクルーズコントロールと人間の感性による運転とで燃費を比較したことがあるひとなら、加減速をコンピューターにゆだねた場合の好燃費についてはご存知のはず。65km/h以下で作動するトラフィックジャムアシストは衝突防止技術でもあるが、同時に燃費技術でもある。ふたつが不即不離の関係というのが、自動車における最先端の技術のおもしろさといえる。

日本市場への導入は2016年早々という。まずセダンが入り、遅れてアバントと呼ばれるステーションワゴン版が導入される。先に触れたようにS4も発表されたので、こちらも遠からぬ将来、日本に上陸するのではないだろうか。アウディのもつ最新技術が詰まってできあがった新型A4は、じゅうぶんに待つ価値のあるモデルである。

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Audi A4 2.0 TFSI ultra S tronic|アウディ A4 2.0 TFSI ウルトラ Sトロニック
ボディサイズ|全長 4,726 × 全幅 1,842 × 全高 1,427 mm
ホイールベース|2,820 mm
トレッド 前/後|1,572 / 1,555 mm
重量|1,405 kg
エンジン|1,984cc 直列4気筒ターボ
ボア×ストローク|82.5 × 92.8 mm
最高出力| 140 kW(190 ps)/ 4,200 - 6,000 rpm
最大トルク|320 Nm/ 1,450 - 4,200 rpm
トランスミッション|7段AT(Sトロニック)
駆動方式|FF
サスペンション 前|5リンク
サスペンション 後|5リンク
ブレーキ 前|ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|205/60R16
0-100km/h加速|7.3 秒
最高速度|210 km/h
燃費(NEDC複合)|4.8 ℓ/100km(およそ20.8 km/ℓ)
トランク容量|480 - 965 リットル
CO2排出量(複合)|109 g/km

Audi A4 2.0 TFSI quattro S tronic|アウディ A4 2.0 TFSI クワトロ Sトロニック
ホイールベース|2,820 mm
トレッド 前/後|1,572 / 1,555 mm
重量|1,510 kg
エンジン|1,984cc 直列4気筒ターボ
ボア×ストローク|82.5 × 92.8 mm
最高出力| 185 kW(252 ps)/ 5,000 - 6,000 rpm
最大トルク|370 Nm/ 1,600 - 4,500 rpm
トランスミッション|7段AT(Sトロニック)
駆動方式|4WD(クワトロ)
サスペンション 前|5リンク
サスペンション 後|5リンク
ブレーキ 前|ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|225/50R17
0-100km/h加速|5.8 秒
最高速度|250 km/h
燃費(NEDC複合)|5.9 ℓ/100km(およそ16.9 km/ℓ)
トランク容量|480 - 965 リットル
CO2排出量(複合)|136 g/km

           
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