特集|ロンドンからベニスへ、オリエント急行で巡る旅 Vol.3
LOUNGE / TRAVEL
2015年8月6日

特集|ロンドンからベニスへ、オリエント急行で巡る旅 Vol.3

特集|ロンドンからベニスへ、オリエント急行で巡る旅 Vol.3

アドリア海に浮かぶベニス屈指の名門ラグジュアリーホテル

ベルモンド ホテル・チプリアーニでベニスを満喫する

これまで2回に渡りお送りしてきた特集、「ロンドンからベニスへ、オリエント急行で巡る旅」も今回で最終回。旅の終着地はイタリアが世界に誇る観光名所ベニス。アドリア海に浮かぶサン・マルコ広場を眺めながら、ベニス屈指の名門ラグジュアリーホテル「ベルモンド ホテル・チプリアーニ」にステイする。

Vol.1 あたらしいロンドンステイの愉しみ方

Vol.2 走る貴婦人、オリエントエクスプレスへの誘い

Text by AKIZUKI Shinichiro(OPENERS)Photographs by Hiro Matsui

洋上に建つホテル、チプリアーニ

イギリス・ロンドンからはじまったオリエント急行の旅は、30時間に渡る優雅な時の流れとともに、ついに終点ヴェネチア・サンタルチアの駅に到着。ホームを出ると、そこはイギリスとはまるで異なる風景が広がっていた。水の都ベニス。駅の正面に、バスやタクシーのロータリーはもちろんない。あるのは水上バスと水上タクシーの乗り場のみだ。

街を二分するように、全長約3キロにわたってS字を描く大運河、カナル・グランデ。アドリア海に浮かぶ、このヴェネツィアの街は、118もの島々がおよそ400の橋と150をこえる大小の運河で結ばれている。いまでは街自体が世界遺産として登録され、世界中からひとが押し寄せる言わずと知れた有数の観光地だ。

しかしこの人の数。どんなに素晴らしいところであろうと、さすがに大人のトリップ先としては、少々不安が募る。

そこで小誌読者におすすめしたいのが、1958年に創業したベニス屈指の名門ラグジュアリーホテル「ベルモンド ホテル・チプリアーニ」だ。洋上に建つチプリアーニへは、サン・マルコ広場から出発する専用シャトルボートで向かう。乗船からわずか5分、世界遺産の景色を背後に眺めながらジューデッカ島に上陸だ。

賑やかだったサン・マルコ広場とは打って変わって、プライベート感に溢れたチプリアーニは、緑豊かな庭園とイタリアらしい陽気な太陽が燦々と輝く。ベニス屈指の広大な敷地面積も、ゆったりとした雰囲気をさらに生みだしている。

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アドリア海に浮かぶベニス屈指の名門ラグジュアリーホテル

ベルモンド ホテル・チプリアーニでベニスを満喫する(2)

180度に広がるベニスの景色

パステルカラーをまとい、15世紀の名残をとどめるベルモンド ホテル・チプリアーニ。その客室は全95室。スイートルームは2010年、大規模なリノベーションをおこなった際に、これまで2部屋だったものを1部屋にしたことで、十分な広さを確保、さまざまな意匠をまとう。

シャンデリア、ベネチアングラスをはじめ、家具などの調度品はどれもため息が漏れそうなくらいにうつくしく、キングサイズのベッドは旅人の疲れを癒やしてくれることだろう。天井から床までを覆う大窓からの眺めはまさに絶景で、ラグーン(潟湖)のうつくしい眺望も楽しめる。その非日常感たるや、バカンスを思い切り楽しみたい方にはこれ以上ないシチュエーションといえるだろう。

それだけに、チプリアーニの顧客リストには多くのVIPが名を連ねている。ハリウッドスターのジョージ・クルーニー氏もそのひとりで、最近では2014年、挙式前夜に盛大なパーティーを開いたことで、世界中のメディアから大きな注目を集めた。

チプリアーニのバー「カビアーノ・バー」は、彼が愛してやまないお気に入りの場所のひとつ。「ラ・ニーナズ・パッション」と名づけられたオリジナルカクテルは、ファンならずともぜひ、試してほしい一杯。ちなみにニーナとは、彼の母親の名前だそう。バーのカウンターには「ママは言った。お酒は2杯以上、4杯以下じゃないとね!」と、記されたジョージ・クルーニー氏直筆のサインも。カクテルを片手に、沈むゆく夕日を楽しむのも悪くない。

旅人にとって、楽しみのひとつがスパだというひとも少なくないが、チプリアーニにももちろん用意されている。人気のスパ「カサノバ・ビューティー&ウェルネス・センター」では、プライベートテラスのあるルームで、熟練のセラピストから各種トリートメントを受けることができる。残念ながら、今回の取材中に施術を受けることは叶わなかったが、スパを終えた利用者の顔の笑みを見る限り、至福のひとときを味わえたようだ。

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アドリア海に浮かぶベニス屈指の名門ラグジュアリーホテル

ベルモンド ホテル・チプリアーニでベニスを満喫する (3)

まだ日本に帰りたくない

陽が沈んだら、待ちに待ったディナータイムだ。イタリアらしく軽いドレスアップで出かけよう。デカダン風の黄金色の天井を持つ「オロ」とネーミングされたチプリアーニのメインダイニングは、建築家アダム・ディハニー氏が手がけたもの。

エグゼクティブシェフには、フランスでミシュランの星を獲得したダヴィデ・ビセット氏を迎え入れ、繊細かつ独創的なイタリアンが振る舞われる。ソースにはポン酢や鰹節をもちいるなど、和をテーマにしているのも興味深い。ちなみにかの「カルパッチョ」は、なんとここが発祥の地ということで、チプリアーニの名物となっている。訪れた際はぜひ試してほしい一品だ。

食事のあとは水上デッキのあるチップスクラブで余韻を味わうのもいい。サン・マルコ広場を眺めながら楽しむ一杯は、きっとあなたにとって最高の思い出になるにちがいない。

時間が許せば、ヴェネチアングラスで有名な「ムラーノ島」へ足を運ぶのもオススメだし、映画『ベニスに死す』で有名な「リード島」も近い。1792年に開場した歌劇場「ラ・フェニーチェ」でオペラ鑑賞という手もある。いくら時間があってもきりがない。チプリアーニは、旅人を「まだ日本に帰りたくない」と、そんなおもいにさせてくれる数少ないホテルのひとつだ。

イギリスを起点に、鉄道の旅を楽しみ、そしてベニスへと到着した今回の旅路。道中、いつも頭のなかをよぎった言葉は、“故きを温ねて新しきを知る”であった。ロンドンのホテル「45パークレーン」然り、「オリエント急行」然り、そしてここ「「ベルモンド ホテル・チプリアーニ」」もまた然り。

伝統を古い過去の遺産とはせず、現代の技術をもって威厳とうつくしさを保ち、さらに利便性も高める。一流というものは決して価格で評価されるものではなく、また絢爛豪華なものを指すわけでもない。伝統や美意識、精神を守り、育む文化にこそ一流の本質があるのだと、強く感じさせられる旅だった。

Belmond Hotel Cipriani
Giudecca 10, 30133 Venice, Italy
http://www.belmond.com/ja/hotel-cipriani-venice/

問い合わせ先

ベルモンド・ジャパン

Tel. 0120-914-084

http://www.belmond.com/ja/

           
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