Mercedes-Benz SLK-Class|若い世代に照準をあわせたニューSLKに試乗
Mercedes-Benz SLK-Class|
メルセデス・ベンツ SLKクラス
若い世代に照準をあわせたニューSLKに試乗(1)
メルセデス・ベンツの軽快なふたり乗りロードスター「SLKクラス」の新型が、さる2011年5月18日より日本発売。さきごろようやく、報道陣に試乗の機会が提供された。525万円のエントリーモデルも設定して、若い世代も積極的にとりこみたい、とメルセデス・ベンツ日本が語る同車のインプレッションをお届けする。
文=小川フミオ写真=荒川正幸
350は燃費13.2km/ℓまでアップ
新型SLKは、1996年発表の初代からかぞえて3代目となる。金属のルーフが開閉する、いわゆるクーペ/カブリオレ コンセプトに先鞭をつけたモデルであり、上級モデルのSLがラグジュアリアスなマーケットを相手にするロードスターであるのにたいして、SLKはより積極的に運転を楽しむ層に向けて開発されたモデルだ。
新型SLKのラインナップは下記のとおり。1.8リッター直列4気筒直噴ターボエンジンを搭載するSLK200 ブルーエフィシエンシー(525万円~)、3.5リッターV6直噴エンジンのSLK350 ブルーエフィシエンシー(770万円)。ボディは従来型にたいして全長プラス35mm、全幅でプラス35mm、全高でプラス5mmとひとまわり大きくなった。ホイールベースは不変だが最小回転半径は100mm小さくなり、取りまわしがよくなっている。
4気筒、6気筒ともに最高出力と最大トルクは従来型より上がっているが、そのいっぽうで、燃費は改善されている。
とくに3.5リッターエンジンは、アイドリング時にエンジンを停止させるエコスタートストップ機構の採用もあり、従来の9.1km/ℓから、13.2km/ℓへと向上(10・15モード)。「45パーセントもの改善で、2リッター車なみの燃費を実現」と、メルセデス・ベンツ日本(以下MBJ)では胸を張る。
Mercedes-Benz SLK-Class|
メルセデス・ベンツ SLKクラス
若い世代に照準をあわせたニューSLKに試乗(2)
ターゲットは30、40代へ
「従来のメルセデスのオーナーは50代から60代にかけての自営業や管理職の方が中心。しかし今回のSLKでは525万円のSLK200 ブルーエフィシエンシー スポーツの設定とともに、若わかしいイメージを打ち出し、30代から40代というあたらしいターゲット層に積極的にアプローチしていく」
MBJのマーケティング担当者の言葉にあるような、あたらしい世代を惹きつける魅力が新型SLKにはあるのか。それが試乗にあたっての興味の中心だった。
バリオルーフはマグネシウム合金を使用し6kg軽量化
新型SLKはCLSに似たフェイスが与えられ、従来とはちがった価値をもっていることを強調している。室内はスポーツカー的というより、はじめて乗ったひとでも迷いなく操作できる機能性が印象に残る。ただしドライビングポジションは低めで、ひじを曲げてシフトレバーを握るかんじになるのは、やはりスポーツドライビングへの誘いを感じさせるものだ。
ついでにルーフに触れておくと、電動によるワンタッチ格納式の「バリオルーフ」と呼称されるタイプで、今回はぜいたくにマグネシウム合金を使用することで6kgもの軽量化をはかっている。ルーフを開けての走行時は風の巻き込みを効果的に防ぐドラフトストップがロールオーバーバーに装備されている。いっぽう、ルーフを閉めての走行をより快適にと望むドライバーのために、ボタンひとつでトップにはめこまれたガラスの濃淡を切り替えられる「マジックスカイコントロール」機構つきパノラミックバリオルーフもオプション設定された。晴天時はダークモードを選べば室温の上昇を10度も抑えることができる。あいにく今回は体験できなかったが。
Mercedes-Benz SLK-Class|
メルセデス・ベンツ SLKクラス
若い世代に照準をあわせたニューSLKに試乗(3)
加速の気持ちよさ、快適性ともに優秀な350
200と350、2台を連ねての試乗。1.8リッター4気筒エンジンは、ターボチャージャーを備えて135kWの最高出力と270Nmの最大トルクを発生する。いっぽう、3.5リッターV型6気筒は、225kWと370Nmとよりパワフル。タイヤサイズは4気筒モデルが前後で幅のちがう17インチを装着するのにたいして、通常だと6気筒も同サイズのものを履いているが、今回の試乗車は18インチホイールなどを用意するAMGスポーツパッケージを採用したモデルだった。
さきにマイナーチェンジを受けたCクラスにおなじ4気筒パワーユニットが搭載されていて、意外なほどパワフルで同時に繊細なマナーだったのに感銘を受けたばかりだったため、SLKでも、じつは、4気筒モデルに期待していた。ところが、よりスムーズで気持ちがよかったのは6気筒のSLK350だった。車重は4気筒モデルで1,400kgを少し超えるだけなのでとりたてて重いとは思えない。しかし多少スポーティなドライビングを楽しもうと思ったら、シフトレバーの横にあるボタンをスポーツモードにして活発なエンジンのマッピングを選ぶか、エンジンの回転を上げたほうがいい。
かたや6気筒モデルは、最大トルクが3,500rpmからと比較的高回転型の設定にもかかわらず、アクセルペダルを踏めばどこからでも力が湧き出し、加速の気持ちよさとともに、加減速を繰り返すワインディングロードでも、よりすばやくこなしていくことができる。同時に乗り心地もフラット感が強く、SLK350のほうが快適度が高い。
全長は4,145mmと依然としてコンパクトだが全幅は1,845mmとなり、かつ押し出しの強いフロントマスクのおかげで、かつてのSLのような存在感すら味わわせる新型SLK。
並行移動するかのように、大型化しているSLでは大きすぎると感じるひとには、SLK350を薦める。
Mercedes-Benz SLK-Class|
メルセデス・ベンツ SLKクラス
若い世代に照準をあわせたニューSLKに試乗(4)
メルセデス製品の第一義に忠実なSLK
さきに新型SLKは350がよくて200にはあまり感心しないというようなことを書いたが、けっしてこの4気筒モデルがよくないわけではない。ノーズが軽いぶん、6気筒モデルよりコーナリング時の軽快感は強いし、そもそも快適性よりドライビングの楽しさを求める向きには、価格差を考えてもSLK200はけっして悪くない選択だ。
とはいっても、200にしても350にしても、すぐれたグランドツアラーというメルセデス製品の第一義には忠実だ。カミソリのようなスポーツドライビングを期待するならBMW Z4のほうがあっているかもしれない。SLKは、ベースは移動をより速く快適に、というポリシーに忠実に、それに軽快な身のこなしというフレーバーをうまくまぶしたモデルととらえたほうがいいだろう。
スポーツカー的な雰囲気を味わいつつも、同乗者のことを考えるなら、適度な快適性を確保したい。それがSLKの真骨頂だろう。新技術を採用したバリオルーフも用意された新型SLKは、そのニーズにぴったりと合致する。
Mercedes-Benz SLK200 BlueEFFICIENCY|
メルセデス・ベンツ SLK200 ブルーエフィシエンシー
ボディサイズ|全長4,145×全幅1,845×全高1,305mm
ホイールベース|2,430mm
車輛重量|1,440kg
エンジン|1.8リッター直列4気筒DOHCターボチャージャーつき
最高出力|135kW(184ps)/5,250rpm
最大トルク|270Nm(27.5kgm)/1,800-4,600rpm
トランスミッション|電子制御式7段AT
10・15燃費|11.8km/ℓ
駆動方式|後輪駆動
価格|580万円
Mercedes-Benz SLK350 BlueEFFICIENCY|
メルセデス・ベンツ SLK350 ブルーエフィシエンシー
ボディサイズ|全長4,150×全幅1,845×全高1,295mm
車輛重量|1,560kg
エンジン|3.5リッターV型6気筒DOHC
最高出力|225kW(306ps)/6,500rpm
最大トルク|370Nm(37.7kgm)/3,500-5,250rpm
10・15燃費|13.2km/ℓ
価格|580万円