FIAT 500 Twin Air|フィアット 500 ツインエア 新エンジンの実燃費や如何に?
FIAT 500 Twin Air|フィアット 500 ツインエア
新エンジンの実燃費や如何に?(1)
フィアット500のあらたなバリエーション、875cc 2気筒ターボエンジンを搭載したツインエアに乗って東京から名古屋までの日帰り旅行を敢行した。
文=松尾 大
2気筒エンジン、カムバック!
全世界から52の賞をうけ、発売31カ月で50万台の売上を記録した、いまやフィアットの屋台骨を背負って立つ500に、あらたに875cc 2気筒ターボエンジンを搭載する「ツインエア」が日本でも発売された。このニューモデルに与えられたツインエアエンジンは、昨年アルファロメオ MiTOにも採用されたもので、世界最先端のエンジン制御技術「マルチエア」テクノロジーを搭載する。
先日の大震災を受けて自動車業界は大きな打撃を受けたとともに、自動車に乗るユーザーも深刻な事態に見舞われた。燃料不足にともない価格が高騰し、あらためて燃費性能の高さが注目されている。今回、日本市場に登場したフィアット500のツインエアはどんなクルマなのか、そして環境性能や動力性能はいかがなものかと考え、借り出すことにした。
品川・港南口にほど近い、フィアット グループ オートモビルズ ジャパンのガレージに到着するとほどなく、子どものころによく聞いたスズキ セルボに似たパタパタパタパタという音が近づいてくる。あちらはたしか3気筒だったが、この500ツインエアはさらにシリンダーが少ない2気筒エンジンだ。車内に乗り込むと、設えそのものはいつもの500と変わりないが、エンジン音があきらかにちがう。このクラスのクルマに求める必要もないが、決して高級感のあるサウンドではない。
発進させると意外にスムーズに加速する。875ccとはいえターボつきであるから、ターボ係数1.4をかけると1,225ccとなる。ほぼ1トンというボディには過不足ない程度だ。とくにエンジンをまわすことのない街なかでは、エコノミーモードでも十分かもしれない。こちらにすると最高出力で6kW(8ps)、最大トルクで45Nm(4.6kgm)のマイナスとなるが、それでもスタートダッシュなどでストレスを感じるほど遅いというものではない。
さらに、燃費を低減させるために「START & STOPシステム」も装備されている。ほかのアイドリングストップと同様、クルマが完全に停止し、ブレーキペダルを踏んだ状態でエンジンが停止するもの。右左折時や脇道からの合流など途中まで進んで止まり、機会をみてまたすぐに発進しなければいけないシーンでは、シフトレバーを中立位置から+か-に動かすだけでエンジンは再始動する。とはいっても、若干のもたつきがあるので、エンジンの再始動までに擁するタイムラグは考慮に入れて操作する必要があるとおもう。
これらの技術が組み合わされることによって10・15モード燃費はPOPで21.8km/ℓという良好な数値となっている。これは従来型の1.2POPの19.2km/ℓとくらべて約14パーセント、1.4POPの13.8km/ℓとくらべるとじつに58パーセントも向上している。ただ、こういった小排気量車は高速道路を高いアベレージ速度で走りつづけると意外と燃費が悪くなるもの。そこで、品川から名古屋まで片道約360kmの道のりを日帰りで往復することにしてみた。
FIAT 500 Twin Air|フィアット 500 ツインエア
新エンジンの実燃費や如何に?(2)
満タンで約630kmも走った!
東名高速に向かうため、首都高速に池尻から乗った。市街地走行のつづきでエコノミーモードで走っていたのだが、高速道路への合流はさすがにこころもとないため、ノーマルモードにもどした。これで、なんとか加速してくれたが、十分と言い切れる印象はない。ほかの500同様、5段シーケンシャルトランスミッションのデュアロジックシステムを搭載するのだが、ギア比が大きくことなり、4速からオーバードライブとなっていて0.974に。5速では0.766となる。1.2、1.4はともに4速が1.121、5速が0.897であることからみても、かなり燃費を意識したハイギヤードな設定となっていることがうかがえる。そのため、加減速の多い首都高速区間は3速と4速をおもに使用することとなった。東名高速にはいってからもずっと5速でクルージングするということにはならず、4速で走行した区間も長い。
ちなみに本国仕様では最高速度173km/h、0-100km/h加速が11秒と公表されている。また、5速100km/h走行時のエンジン回転は2,600回転ほどであったから、ノイズや振動も気にならなかった。加速したいときは3速まで落として、何度かレッドゾーン直前の6,000rpmまでまわしたが非常に軽い吹け上がりで小気味良いエンジン音が印象的だった。燃費のよさを狙ったハイブリッド車などとはことなり、クルマ好きをちゃんと楽しませてくれるこういった演出も忘れていない。ノーマルモードで走ると、たしかに燃費は悪くなるが、しっかりまわして走るイタリア車らしい楽しさにはあらがえないかもしれない……。
さて、名古屋までの道のりは途中で大渋滞があったため4時間以上を要した。平均的な走行距離の少ない日本との文化のちがいであろうが、500のような大衆車でもシートのできはよい。ひどいぎっくり腰をなんどか経験している腰痛もちの筆者でも、往復約8時間のドライブのあとでもとくに腰が痛くならなかったのは特筆すべき点だ。ただ、パンダをベースとするため着座位置が高いのが気になる。
往路はノーマルモードでシフトのアップダウンを繰り返しつつ走ったが、帰路はゆっくり走ろうとエコノミーモードでの走行にしてみた。すると、燃料が驚くほど減っていないことに気づいた。東京を出てから、名古屋市内で数カ所立ち寄り、ふたたび東名高速を走行し、ついには足柄サービスエリアまで無給油で走行できた。トリップメーターを確認すると、629.7km。ここまでの区間全体の約半分をノーマルモード、約半分をエコノミーモードで走行してこれだけの航続距離が得られた。ちなみに、燃料タンクの容量は35リットルだが、給油量は36.75リットル。リザーブがどの程度の容量なのかわからないが、ほぼガソリンを使い切っていたようだ。全走行距離のうち高速道路が約9割の約580kmという小排気量車には厳しい走行パターンであったため、一概に燃費を比較するのは難しいが、燃費が17.1km/ℓとカタログ値の約80パーセントの数値を記録したのは立派だ。さらにニュースとしてこのツインエアエンジンはハイブリッドにも対応するように最初から設計されているそうで、さらなる低燃費モデルの登場も期待できる。環境を意識しつつ、お洒落なライフスタイルを送りたいというひとにとっては要注目の1台といえるだろう。
FIAT 500 TwinAir LOUNGE|フィアット 500ツインエア ラウンジ
ボディ|全長3,545×全幅1,625×全高1,515mm
エンジン|0.9リッター 直列2気筒インタークーラーつきターボチャージャー
最高出力|63kW(85ps)/5,500rpm
※エコノミーモード時|57kW(77ps)/5,500rpm
最大トルク|145 Nm(14.8kgm)/1,900rpm
※エコノミーモード時|100Nm(10.2kgm)/2,000rpm
車両重量|1,040kg
駆動方式|前輪駆動
乗車定員|4名
10・15モード燃費|21.2km /ℓ
CO2排出量|110g/km
価格|245万円