Mercedes-Benz S400 HYBRID|メルセデス・ベンツ S400 ハイブリッド 試乗インプレッション
Mercedes-Benz S400 HYBRID|メルセデス・ベンツ S400 ハイブリッド
オーナードライバー向けハイブリッドの真価(1)
メルセデス・ベンツは、大型セダン「Sクラス」にハイブリッドモデルをラインナップ。自動車取得税および重量税が100パーセント減免されるのも大きな特長だ。
文=小川フミオ
大排気エンジンと同等のトルクを確保
メルセデス・ベンツ Sクラス HYBRID 標準ホイールベースモデル(1,270万円)は、先行して2008年9月から販売されているSクラス HYBRID ロングとおなじ3.5リッターV8エンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッドシステムを共用するが、全長が13cm短くなり、最小回転半径も20cm小さくなるなど、みずからハンドルを握るオーナー向けという点に特徴をもつ。
3,035mmのホイールベース(HYBRIDロングは3,165mm)に5,100mmの全長をもつボディ(同5,230mm)を搭載するSクラスHYBRID。「標準ホイールベース」といっても十分余裕あるサイズだ。メルセデスのハイブリッドシステムは、エンジンとトランスミッションのあいだに薄型の電気モーターを組み込む。その電気モーターは、発進時や加速時などトルクをより必要とするさい、一種のパワーブースターとして働く。これによりエンジン排気量を抑えても、大型エンジンと同等のトルクが得られ、それと省燃費と両立させようというのがメーカーの目指すところだ。
しごく自然な操縦感覚
ハイブリッドといってもトヨタのTHS-IIに代表される電気モーターへの依存度が高いシステムではない。そのため、操縦感覚はガソリン車とおなじだ。ブレーキも回生システムによる不自然な感じはなく、知らずに乗ったらハイブリッドとは気がつかないだろう。欧州で主流のハイブリッドはいま2種類あるが、いずれにしてもモーターは小型で必要に応じて、というかたちが市場で受け入れられやすいのだろう。
一方、減速して車速が15km/hを下まわるとエンジンが停止する「ECOスタートストップ機能」などハイブリッドモデル専用の装備も用意される。トータルで燃費はS 350より約30パーセント向上しているとメーカーでは発表している。大型のラグジュアリーセダンを必要としながら、環境コンシャスという面も見せたいオーナーに向いたモデルだ。
Mercedes-Benz S400 HYBRID|メルセデス・ベンツ S400 ハイブリッド
オーナードライバー向けハイブリッドの真価(2)
Sクラスの証である高い乗り心地
加速は1.9トンの重さを感じさせない。発進はスムーズだし、コーナーの立ち上がりなどで電気モーターの恩恵を感じる。ぐっといっそうのトルクが駆動輪にかかったかんじで、大ぶりな車体にもかかわらずフットワークはけっして悪くない。メーターパネル内のディスプレイの「エナジーフロー」で、電気モーターの作動状況を見ていると、アクセルペダルを強く踏み込んだときに電気モーターが動くのがわかる。しかし体感的にはナチュラル。過給器的な働きなのだが、しかしごくジェントルに、エンジントルクを積みましてくれる。ようはハイブリッドを上手に使っている。
高速走行の多い欧米では、エンジン主体で電気モーターはサブ、というシステムのほうが現実に即しているとされる。このところぞくぞくと日本に上陸しているドイツのハイブリッドモデルは、どれも同様の考え方を採用している。SクラスHYBRIDも例にもれない。メルセデスでは現在ふたつのハイブリッドシステムを採用しているが、日本にはこのSクラスHYBRIDの、いわゆるマイルドハイブリッドのみが導入されている。トヨタ/レクサスなどと比較すると劇的に燃費がよいわけではないが、ドライバーにガマンを強いないという点で、ちょうどよい着地点かもしれない。小型軽量がセリングポイントのリチウムイオンバッテリー採用で重量増は75kgという。コーナリングをふくめてとりまわし時によけいな重さを感じることはない。
Sクラス HYBRIDが真価を発揮するのは、とりわけ長距離ドライブ。これはHYBRIDもまごうかたなきSクラスの一族であることの証明だ。巡航時は電気モーターが休止してガソリンエンジンのみで走行する。疲労感を軽減するハンドリングと乗り心地の絶妙なコンビネーションにくわえ、重量感のあるボディがもたらすしっとりした乗り味もSクラス独自のものだ。そして、ハイブリッド車ならではの特徴として、アクセルペダルから足を離すと、バッテリーへの充電がはじまる。そのようすをモニターで見るのも興味ぶかい。
Mercedes-Benz S400 HYBRID|メルセデス・ベンツ S400 ハイブリッド
ボディ|全長5,100×全幅1,870×前高1,485mm
ホイールベース|3,035mm
エンジン|3.5リッター V型6気筒 DOHCエンジン
最高出力(エンジン)|205kW(279ps)/6,000rpm
最大トルク(エンジン)|350Nm(35.7kgm)/5,500rpm
最高出力(モーター)|15kW
最大トルク(モーター)|160Nm
燃費(10・15モード)|11.2km/ℓ
CO2排出量|186-189g/km
トランスミッション|電子制御7速AT
駆動方式|FR
ステアリング|左
価格|1,270万円
※CO2排出量は本国データに基づく。