PORSCHE Boxter|ポルシェ ボクスター 試乗
PORSCHE Boxter|ポルシェ ボクスター
ゆるぎないオープンスポーツの魅力
軽快で楽しく、比較的お買い得なピュアスポーツ。ポルシェ ボクスターはいまも魅力的だ。
文=小川フミオ写真=清水博孝
255psを発生するエンジンと回頭性のよいボディ
ポルシェ ボクスターは、いまも魅力が衰えていない。軽快で、コンパクト、かつオープンという、スポーツカー本来のありかたに忠実。そして価格も比較的こなれている(先ごろ価格が引き下げられた)。ひょっとしたら、ポルシェが伝統的に保ってきた価値を、いまも守っているのがボクスターかもしれない。ポルシェ入門篇ともいえるが、もちろん、この1台で満足のいくできだ。
ボクスターのラインナップは、現在3車種からなる。
・ボクスター(563万円~)
・ボクスターS(695万円~)
・ボクスター スパイダー(866万円~)
ボクスターが255ps、ボクスターSは310psと出力が上がり、そして軽量のボクスター スパイダーは320psとなっている。すべてのモデルに6段マニュアルと7段PDK(デュアルクラッチシステム)が用意される。
ここで紹介するのは、ベースモデルのボクスターだ。2.9リッター6気筒エンジンを運転席の背後に搭載して後輪を駆動する。初代のデビューは1996年。それまで924や944といった4気筒搭載モデルで、「悪くはないが、ポルシェでなくても……」という思いがぬぐいきれなかっただけに、ボクスターのしっかりした骨格と、専用エンジンと、フルオープンというコンセプトはおおいに評価された。
2004年にフルモデルチェンジを受けて現行型になると、よりスポーツカーとしてのクオリティが上がり、911とはまた別の魅力をもつ独立したモデルとして、存在はゆるぎないものになった感がある。
ボクスターは、約1.4トンのボディに255psのエンジン。走りだしは多少、パワー不足の感がある。これはしようがないことかもしれない。ただしエンジン回転を上げていって3,000rpmから上になると、アクセルペダルの踏み込みに対して、車両は機敏に反応する。ハンドリングがすなおで、車体の回頭性もよいので、この領域でボクスターの魅力はがぜん輝く。
ボクスターのよさは、エンジンとトランスミッションが車体の中央部に集まっているので、ハンドルを切ったときの動きが速いことだ。圧倒的なパワー感では911にかなわないが、そのぶん、フットワークの軽さが身上だ。しかもフルオープンになるので、イメージ的にも軽い。寒いときはラムスキンのジャケットにグラブなどを着込んでと、オープンドライビングのよさを味わえるのは、ボクスターの魅力。できれば、どんなときでもオープンで走っていたい気分だ。それがカッコいいと思う。
よりダイレクトに楽しさを伝えてくれるMT
マニュアルトランスミッションのダイレクト感をオートマチックの気楽さで味わえるPDK搭載モデルは広い層を対象にしたものだが、楽しさでいえばマニュアルのほうがずっと上だ。オープンの快適さや、ハンドリングのよさにくわえて、エンジンを自分でコントロールできるという、もうひとつ見逃せない楽しさも備わるからだ。
スポーツカーという点からみた場合、ボクスターのラインナップにはスパイダーという魅力的なモデルがある。幌も装着されているが、基本的にはつねにオープン。内装など簡略化され車重は100kgほど軽量化されている。エンジン排気量も大きく3.4リッターで、トルクも太い。パワーと重量のバランスがものすごくよく、まさに軽くて気持ちがよい。
ただ価格でみると、冒頭にも触れたとおり、ボクスターとスパイダーの差は303万円。ボクスターのパラドクスとは、パワーを求めていくと、911の存在感が大きくなることだ(2世代ぐらい前の911の軽快さにつうじるスパイダーは別ものだとしても)。そこで考えかたを変えて、スポーツカーのよさを気軽に、と割り切って乗ってはどうだろう。ベースラインを受けもつボクスターでも、期待を裏切らない。
PORSCHE Boxter|ポルシェ ボクスター
ボディ|全長4,340×全幅1,800×全高1,230mm
エンジン|2.9リッター 水平対向6気筒
最高出力|188kW(255ps)6,400rpm
最大トルク|290Nm/4,400-6,000rpm
駆動方式|RWD
燃費|9.4ℓ/100km
CO2排出量|221g/km
トランスミッション|6MT
価格|563万円
※燃費、CO2排出量は欧州データに基づく。