IWC|作家、鈴木光司氏に訊く、機械式時計とヨットの魅力
IWC|アイダブリューシー
「ポルトギーゼ・ヨットクラブ・クロノグラフ」と過ごすクルーズの旅
作家、鈴木光司氏に訊く、機械式時計とヨットの魅力
IWCにとって、2010年は「ポルトギーゼ」の年。生誕70周年という記念すべき年に向けて発表された新作「ポルトギーゼ・ヨットクラブ・クロノグラフ」が、今秋日本へと入荷を果たす。
文=野上亜紀
こだわりの機械式時計、生きる力を育てるヨットの旅
1960~70年代に成功を収めた耐衝撃時計「ヨットクラブ」から発想を得た「ポルトギーゼ・ヨットクラブ・クロノグラフ」。この時計を愛用しているのが、作家の鈴木光司氏だ。鈴木氏はこのクロノグラフが見せる「大きくて、セクシー」な魅力に一目で惹かれたという。
「長く愛用できるものを探していたところ、この時計と出会いました。迷いはありませんでしたね。ヨットで持つ時計はクォーツではなく機械式時計、と決めています。人間の身体でできることにかんしてはなるべく自分の力でおこないたいから、電動には頼らないんですよ。だからカーナビも使いません。土地勘や平面を見て3次元を想像する力など、人間が培ってきた能力をなるべく使いたいと思っています」
「時計も海の上で電池が切れてしまったら大変でしょう」と語る鈴木氏のポリシーは、どこに行くにも“自力”で臨むこと。その精神を鍛えてくれるヨットクルーズは、鈴木氏にとってはもはやライフワークでもある。時間を見つけては赴くヨットの旅は、生きることの術を学ぶためのステージだ。
「ヨットに乗るためにはいい仲間に出会うことが大切。レースも勝つことが最終地点ではありません。仲間との信頼関係を深めて、協力体制を結ぶことが目的。ヨットはいざとなったら生死にかかわるものですから、自分の判断ミスで全員の命が危険にさらされる場合もあります。会社のマネージメントとおなじですね。日本人はもともと農耕民族ですから、判断し、決定すること、そしてその判断した結果が自分に跳ね返ってくることを嫌います。台風などの不測の事態に決断する力も、ヨットは育ててくれますよ」
次世代へと受け継がれる腕時計と父の人生哲学
ヨットで日本中を行きつくした鈴木氏は、いまはこの時計とともに海外を巡る旅をつづけている。この夏は二人の愛娘とともにトルコとエジプトを訪問したばかり。ヨット同様、状況分析と決断力を身につける学びの場が、いま日本の子育てにも必要だと語る。
「日本の教育はいい点数を取るという目的で、答えを丸暗記する教育でしょう。ひとりひとりが自分で判断するという訓練は、子どものころからつづけるべきなんです。日本はエリート教育に経験が伴わないから、責任を取るべきリーダーが育ちにくい。軍においても、トップである指揮官クラスが弱いんですよ。今秋『鋼鉄の叫び』という小説を出しますが、それは特攻隊が舞台。30年間あたためてきた構想です。自分の意志で編隊を離れた男の物語ですが、フィクションであればそんなことがあってもいいのではないかと。日本の教育のテーゼという意味も込めています」
いつかは愛娘に譲るつもりだというポルトギーゼ・ヨットクラブ・クロノグラフを手にしながら、鈴木氏は語る。生と死に向き合い、ヨットで深めた父の人生哲学は、この時計とともに次世代へと受け継がれていくことだろう。
鈴木光司
1957年静岡県浜松市生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。1990年『楽園』が日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞して作家デビュー。『リング』『らせん』『ループ』『バースデイ』のシリーズが計 800万部のベストセラーとなり、ハリウッドで映画化される。著作は世界 20か国語に翻訳され、欧米を中心に積極的に講演活動をおこなう。高校教師であった妻に代わり、二人の娘を育て上げた経験から、政府の諮問機関「少子化への対応を促進する国民会議」委員を務める。新作『鋼鉄の叫び』(角川書店)を10月30日に発売予定。
IWC
Tel. 03-3288-6359