ビクトリノックスがビンテージレザーを使用した特別モデルを披露|VICTORINOX SWISS ARMY
VICTORINOX SWISS ARMY|ビクトリノックス・スイスアーミー
ビクトリノックスがビンテージレザーを使用した特別モデルを披露
年々製品のクオリティを向上させているビクトリノックス・スイスアーミーが創業130年の2014年に送り出した腕時計「イノックス」は、究極のタフネスを備えた時計である。その開発のキーマンであるビクトリノックス・スイスアーミーのプロダクトディレクター、フランソワ・ヌニュス氏に、進境著しい「イノックス」のデザインや今後の展望などについて直撃インタビュー。特別モデルについての開発秘話などを聞いた。
Photographs by NAGASHIMA TohruText by KAWADA Akinori
唯一無二のビンテージ感と究極のシンプルの融合
――ビクトリノックス・スイスアーミーのプロダクトは、近年、クオリティの向上が著しいと思います。特に、2014年の「イノックス」は、究極のタフネスを備えた時計として、大きな注目を浴びました。今回も新作はどのようなものになるでしょうか?
今年はコーポレートカラーであるレッドを採用したカラーバリエーション「イノックス レッド」をリリースします。同時に、腕時計を保護するバンパーとストラップをビンテージ・レザーで製作した限定版「イノックス リメイド・イン・スイス」も発売します。
――「イノックス リメイド・イン・スイス」を実際に見ると、このバンパーとストラップのビンテージ感は、半端なものではありませんね。素材やデザインについて、詳しく教えてください。
「リメイド・イン・スイス」は、気鋭の若手デザイナーであるクリストファー・レイバーンが手がけた2011年のカプセルラインだったのです。スイス軍のブランケット、寝袋、パラシュートをリメイクしたアパレルコレクションで、非常に大きな注目を浴びました。
今回の「イノックス リメイド・イン・スイス」もレイバーンのデザインによるもので、ストラップとバンパーの素材に、1911~'70年代のスイス軍で使われていたミリタリーバッグや弾薬ベルトのレザーをベジタブルタンニンによってなめし直したものを使用しています。限定数が250本となったのは、採取できたレザーの量の限界によるもので、それだけ希少価値があるわけですね。
――なるほど、それではこのレザーは、ミリタリー由来のホンモノだということですね。しかし、こうした素材を用いること自体、すごいアイデアだと思うのですが、どのようにして生まれてきたのでしょう?
ビンテージデザインを採用しようと決めたのは、私自身でしたが、その着想は本当に偶然によるものでした。ある日、たまたまアウトドアショップに入って、スイス軍の放出品のレザー製ミリタリーバッグを見て、「コレだ」と直感したんです(笑)。「イノックス」は完璧な強さを持っており、シンプルで、モダンなデザインが特徴です。いっぽうビンテージレザーは、「イノックス」に似合うアンティーク調の風格が漂いつつ、外観はダメージを負っていて完璧ではない。相反する要素を持ちながら、「イノックス」のよさをお互いに引き立ててくれる不思議なケミストリーを感じたのです。ホンモノのレザーだからこそ、このビンテージ感が生まれ、ひとつひとつ微妙に味わいが異なるから、唯一無二の希少性につながります。レイバーンのデザインもすばらしく、バンパーを装着するスタイルなどは重厚感にあふれています。
――そもそも「イノックス」自体がシンプルデザインの極致ということですね。そのシンプルさは、時計のタフネスぶりとも関係しているのでしょうか?
「イノックス」のシンプルを極めた形状は、あの完成形にいたるまで、本当に苦労しました(笑)。パーフェクトな強さは、余計なものをいっさい受け付けないのです。特に新作のブレスレットモデルは、この点が顕著にあらわれています。
――そこのところをもう少し詳しく解説していただけますか。
工業製品をデザインするとき、どうしても複雑にしなければ成立しない場合があります。「イノックス」では、そうした複雑な構造は許されません。なぜなら、そんな部分を作ってしまうと耐久テストでそこから壊れてしまうのです。ボタンの類を設けることもできませんでした。溶接によってパーツをつなげても同じです。その部分は弱くなって崩壊しやすくなってしまうのです。ブレスレットのバックルには、苦労しました。完璧にフラットにしないと、戦車で踏むようなテストで歪んでしまいます。微細なところまでこだわらざるを得ず、例えば、ブレスレットのコマをつなぎ留めるピン類は、100万回におよぶ振動テストに耐えるものでなければなりませんでした。
――実際、総数にして130にもおよぶテスト項目は、リストに上げられたものを見ると無茶のひと言です(笑)。よくそれらをすべてクリアする時計が生まれたものだと感心します。
実際、バランスの取れるポイントを見つけ、余計なものを削ぎ落とす作業の連続でしたね。シンプルに徹したものを作ることこそ、とても難しいのだと思います。
――「イノックス」は、ある意味、究極の時計だと思います。今後の製品開発にも大いに期待していますが、今後「イノックス」はどのように進化していくのでしょうか?
「イノックス」はひとつの完成された製品であり、大きな成功でした。しかし、難しいのは、これからも成功を繰り返し、それらの経験を積み重ねてくことだと思います。「イノックス」のようなモデルが完成してしまうと、さらにその上を行く製品を作り出すのことは、もっと難しいと、いま実感しているところです。しかし、それを乗り越え、次回のバーゼルワールドでみなさんを驚かせるようなあたらしい製品を持ってくることをお約束します。
イノックス リメイド・イン・スイス
ケース|ステンレススチール+着脱式ビンテージ・レザー製バンパープロテクター
直径|43mm
ムーブメント|クォーツ
機能|日付表示
ストラップ|ビンテージ・レザー(付替用グリーンラバーストラップ付属)
防水|20気圧
限定数|250本
発売時期|2015年秋予定
価格|12万9600円
ビクトリノックス・ジャパン
Tel. 03-3796-0951
http://www.victorinox.com/jp