祐真朋樹氏と鑑賞する「カルティエ、時の結晶」|Cartier
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2019年11月27日

祐真朋樹氏と鑑賞する「カルティエ、時の結晶」|Cartier

Cartier|カルティエ

カルティエの連綿と流れる“時”の断面を目撃する

Cartier(カルティエ)の革新的なデザインの世界を堪能できる展覧会「カルティエ、時の結晶」が、東京・六本木の国立新美術館にて好評開催中だ。従来のジュエリー展とは一線を画す展示方法や空間構成にも注目しながら、本展覧会の監修者であり、国立新美術館主任研究員の本橋弥生氏のナビゲートのもと、祐真朋樹氏が不変の永遠性と絶えず変化する流行性を併せ持つカルティエの多彩な美の秘密を探った。

Photographs by MAEDA Akira|Video production and Post-production by NODA Kenichi, SUGA Mayu, DATE Sho, SAKAGUCHI Tenshi|Hair and Make up by MOMIYAMA Atsushi|Text and Edit by ANDO Sara

タイムレスでありながら時代とともに進化を続けるカルティエの世界

これまでもカルティエは世界中の様々な都市の美術館などで「カルティエ コレクション」の展覧会を開催してきたが、今回はただ歴史的作品を紹介するだけでなく、1970年代以降の現代作品に焦点を当てたことで話題を集めている。

展示されている現代作品の多くが個人の所有物だといい、総出品数のおよそ半分を占めるそうだ。通常は公開されることのない、世界の個人所蔵作品を間近で見ることができる貴重な機会となる。

会場構成を手掛けるのは、杉本博司氏と榊田倫之氏による新素材研究所だ。伝統的な職人の技術と最新技術とを融合させ、現代的なディテールで仕上げる彼らのデザインが、“時”を意識し、回遊する展示空間を生み出した。これにより、今までにない新たな鑑賞体験に誘ってくれる。

本橋氏によると従来のカルティエの回顧展は、ブランドヒストリーに沿って語られる展示構成が中心だったそうだが、本展覧会ではデザインの創造性にフォーカスし、カルティエスタイルをアカデミックに紐解く斬新なアプローチをとったという。

たとえば、1936年のオーダーメイドジュエリー《「ヒンドゥ」ネックレス》と対比するように展示されているのは、2016年に作られたマルチカラーの《ネックレス》。彫刻が施されたルビー、サファイア、エメラルドがあしらわれた色彩豊かな「トゥッティフルッティ(フルーツづくし)」と呼ばれるシリーズだ。
あるいは、水の流れや煙の渦などを思わせる流線形の「エッセンシャルライン」が特徴の、アール・ヌーヴォー期の1902年に作られた髪飾り《ヘア オーナメント》と、2018年の《ブレスレット》。いずれもシンプルでモダンなディテールで、100年以上の差があると思えない共通点が潜んでいる。

これらは“時間”を軸に、デザインや色、素材、フォルムなどを踏まえた上で、対比的に配置することで作品同士の関係性を追求する手法。時代によって変化するデザインと、時を超えても色褪せることのないカルティエの不変的なスタイルを目にすることができる。
会場のエントランスにそびえ立つのは、杉本氏によるアンティークの巨大な時計を用いた作品《逆行時計》(2018年、個人蔵)だ。展覧会のタイトルである「時の結晶」に符合した、象徴的な作品となっている。
宝石が何万年という壮大な時間をかけて、地中深くで少しずつ結晶化し、形成されるプロセスを逆回転するように、観覧者をこの時計とともに今いる現代から時を遡らせるという演出だ。宝石の原石を探しに行くかの如く、物質の起源へと逆進し、まるで地底を思わせるような空間に足を踏み入れて行く。
そこから進むと本編の序章となる「『時の間』 ミステリークロック、プリズムクロック」と題された円形の展示スペースに到達する。黒いカーテンに囲まれた広い空間に、羅(ら)と呼ばれる日本古来の白い織物を筒状に垂らした柱が12本。そこにカルティエが手掛けた《ミステリークロック》や《プリズムクロック》などの時計が並ぶ。観る者に“時”を意識させるこの空間こそが、“時間”をテーマにした本展覧会の真髄を表しているかのよう。

《ミステリークロック》とは、歯車などの伝達機構は一切見えず、まるでクリスタルの中に浮かんでいるような時分針が時間の経過とともにそれぞれ動いて時刻を表示する、カルティエの持つ技術力と芸術性を象徴する作品だ。19世紀に奇術師ジャン・ウジェーヌ・ロベール=ウーダンが考案し、ルイ・カルティエとメゾンの時計職人、モーリス・クーエにより1912年に発表されてからというもの、時計史に燦然と輝くカルティエの名作の一つとして愛されてきた。
本展覧会は、序章「時の間」を囲むように構成されており、第1章「色と素材のトランスフォーメーション」、第2章「フォルムとデザイン」、第3章「ユニヴァーサルな好奇心」の各章でそれぞれ異なる展示空間が現れる。さらに「パンテール」の作品を集めたコーナーと、アーカイヴ資料の展示室も設置されている。

特に印象的なのは展示に使われている台座や什器の数々。煌めくネックレスを支えるのは、樹齢1000年以上の神代杉など太古の木を使ったトルソーだ。これらは仏師による特注品で、宝飾品の形に合わせて一点一点手彫りしたという。

《ブレスレット》カルティエ、2007年
プラチナ、イエローダイヤモンド、ダイヤモンド
個人蔵
また、展示ケースに使用した大谷石のブロックも会場の中で一際異彩を放つ。美しく磨き上げられたジュエリーと無骨な石とのコントラストを見せながら、洞窟の中で宝石を探索し、発見するような空間構成を目指したという。

長径16メートルもの巨大な楕円形の什器に作品を展示し、それは彗星の軌道を形態化したように暗闇の中に浮かび上がり、まるで宇宙の中に存在しているようなイメージで鑑賞するコーナーも圧巻だ。土台には光学ガラスや伊達冠石といった偶発的に生まれた形状のものを使用しており、自然と人工の対比が強調されている。
会場全体が、まるで一つのアート作品のような「カルティエ、時の結晶」。日本の古美術とハイジュエリーの組み合わせが随所にちりばめられているのは、“時間”を重要なテーマとして扱い、活動している新素材研究所だからこそ実現したといえるだろう。悠久の時を経て生成された宝石が、卓越した職人の技術によってカルティエのジュエリーという“結晶”として結実したそのすべてを味わってほしい。

祐真朋樹氏と鑑賞する「カルティエ、時の結晶」

カルティエ、時の結晶
会期|開催中~12月16日(月)
会場|国立新美術館 企画展示室2E
住所|東京都港区六本木7-22-2
開館時間|10:00~18:00(毎週金・土~20:00まで。入場は閉館の30分前まで)
休館日|毎週火曜日
観覧料|一般 1600円、大学生 1200円、高校生 800円
※団体料金は200円引き(団体料金の適用は20名以上)
※中学生以下および障害者手帳を提示(付添1名含む)で入場無料
展示作品数|約300点
会場構成|新素材研究所
問い合わせ先

ハローダイヤル
Tel. 03-5777-8600
https://Cartier2019.exhn.jp

                      
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