首都圏から片道2時間弱の美食楽園。那須のご馳走、全部入り!|TRAVEL
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2022年11月1日

首都圏から片道2時間弱の美食楽園。那須のご馳走、全部入り!|TRAVEL

TRAVEL|星野リゾート リゾナーレ那須

「知る」は、おいしい!リターンズ 星野リゾート リゾナーレ那須編

数分待てば次の電車が来るのに、目の前で扉が閉まると、ちょっとイラっとしてしまう都会の生活。いえ、私は便利な都会での生活、気に入っています。ただ日々あくせく働いていると、時々、自然が恋しくなるんですよね。とはいえ時間と交通費をかけて遠くまで出かける余裕はナッシング。そんな時、クルマなら2時間。東北新幹線で、東京駅から那須塩原駅までは1時間弱、そこからバスに揺られ30分ほどの那須高原は、うってつけのデスティネーション。都内で仕事をしてランチをしてからでも十分間に合います! それに、春は新緑が心地よく、夏は東京より涼しいし(天皇家の夏の避暑地、那須御用邸があるくらいですからね)、秋の紅葉の美しさも圧巻なんです。

Photographs by OHTAKI Kaku|Text by HASEGAWA Aya|Edit by TSUCHIDA Takashi

1日7組限定。星野リゾートが提供する最も小さなイタリア料理ダイニングへ

ちょっとだけ、「星野リゾート リゾナーレ那須」(以下、リゾナーレ那須)について改めてご紹介いたしますね。“リゾナーレ”は星野リゾートが手がける、「大人のためのファミリーリゾート」をテーマにしたホテルブランドです。そしてリゾナーレ那須は、八ケ岳(山梨県)、トマム(北海道)、熱海(静岡県)に続く、4つ目の施設で、“アグリツーリズモリゾート”をテーマに掲げています。
「アグリツーリズモ」とは、イタリア語で「アグリクルトゥーラ(農業)」と「ツーリズモ(観光)」を掛け合わせた造語。農業体験や自然体験、文化交流を楽しむ新たな旅のスタイルです。”本当の豊かさとは”なんて大命題を考えるきっかけにもなりますが……、今回はもう難しいことを考えず、ただ那須の大自然、そして食を育む農業体験を、頭を空っぽにして楽しむことにしました。
森の中に佇む、コンクリート打ち放しの建物がリゾナーレ那須の玄関口です。そのシックな外観からは想像しがたいのですが、レセプション棟の背後には、東京ドーム約3個分の広さに相当する約13万8600平方メートルの広大な敷地が広がっています。
那須岳を彷彿とさせるとんがり帽子屋根が目を引く「POKO POKO」は、アクティビティ施設。リゾナーレ那須の開業に合わせて新設されました。約4万2000坪の敷地を持つリゾナーレ那須には、その豊かな自然を体験できるアクティビティが盛りだくさん。
では、早速、リゾナーレ那須の"美味しい”をご紹介しましょう。
「OTTO SETTE NASU」がある建物は森の中にたたずんでいました。20世紀を代表する建築家、フランク・ロイド・ライトが好んだ、栃木県産の大谷石を使っていて、2階建て、上がラウンジで下がダイニングというつくり。那須・自然・食に関連する書籍が置かれたラウンジは、宿泊ゲストは無料で利用できます(ただし、12歳以上のみが入場を許された、大人のスペースです!)。
6メートルを超える天井高を持つ、ダイニングエリアとは、なんともドラマチックなこと!
「OTTO SETTE NASU」は宿泊客専用で1日7組限定。あまたある(もはや数え切れません!)星野リゾートの施設のメインダイニングのなかでも、もっとも小ぢんまりしているのではないでしょうか。
厨房を取り仕切るのは、北浦琢視(たくみ)さん。2021年春に、同施設の総料理長に就任しました。そんな「OTTO SETTE NASU」では、那須に親しみの深い野菜やチーズなどをはじめ、栃木県の食材を、那須と気候や風土が似ているイタリア中部トスカーナ地方の郷土料理へと昇華しています(ちなみに、北海道・トマムの「OTTO SETTE TOMAMU」はイタリア・ピエモンテがテーマでした)。
北浦琢視総料理長
「全卓が見えるくらいの規模ですから、料理人も積極的にお客様の席にお邪魔したいと考えています。ぜひ、栃木の豊かな食材を存分にお楽しみください」と北浦さんはにこやかに出迎えてくれました。ちなみに、11月末日まで提供中のメニュー、そして、ペアリングのワインはこんな感じです。
■乾杯酒:Franciacorta Brut(フランチャコルタ ブリュット)
■彩り豊かな小さな前菜:Vernaccia Di San Gimignano Rizerva ORI 2018(ヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノ リゼルヴァ オリ)
■農園のピンツィモーニオ:Marche Rosato(マルケ ロザート)
■茸のズッパ:Resto(レスト)
■猪肉パンチェッタと赤玉ねぎのタリアテッレ:Rosso di Montepulciano(ロッソ・ディ・モンテプルチアーノ)
■ハーブ香る岩魚の蒸し焼き:Velmentino Solare 2018(ヴェルメンティーノ・ソラーレ)
■牛肉のアロースト:Barolo Serralunga(バローロ セッラルンガ)
■葡萄と焼き栗のセミフレッド:Vissiola(ヴィショラ)
今回のワインはすべてイタリア産、また、ホテルが「アグリツーリズモ」をテーマとしているということで、カントリーサイドのワインを中心にセレクトしたとのこと。
それじゃ、2022年秋の、メインダイニング「OTTO SETTE NASU」の料理を抜粋して紹介していきましょう。
農園のピンツィモ―ニオ
コース3品目にして、「OTTO SETTE NASU」を象徴する料理「農園のピンツィモ―ニオ」のお出ましです。威風堂々と登場したこちらは、地元の野菜を中心とした、25種の色とりどりの野菜で構成される冷前菜。ちなみに、この日は、UFOズッキーニ(パティソンホワイト)とマイクロキュウリが、施設内の「アグリガーデン」で収穫されたものでした。
UFOズッキーニ(パティソンホワイト)(左)と、マイクロキュウリ(右)。農園のピンツィモ―ニオより
内容は日々の仕入れによって異なるそうでまさに一期一会。「冬に向けてのこれからの季節は、根菜類が多くなりそうです」と北浦さん。うわ、それも気になるなあ。
「ガラスの器に入った、生のお野菜は、収穫するように食べてくださいね」とサーブされた、見目麗しい野菜たちは、自家製のバーニャカウダソース(夏場は、冷たいバーニャフレッダソースが添えられるんですって)や塩、オリーブオイルでいただくのですが、何をどれで食べようか真剣に頭を悩ませます(笑)。もう一つの黒いお皿(地元の陶芸家さんの作品だそう)に乗った野菜は、「焼いたり、蒸したりして調理を施した」(北浦さん)野菜とともに、切りたての生ハムやチーズ、ヤシオマスのコンフィも添えられていました。
恥ずかしながら、私、知らなかったのですが、冷涼な気候の高原が広がる那須は酪農が盛んで、生乳の生産量は北海道に次ぐ規模を誇るのだとか。なるほど、チーズが美味しいはずです。も~ワインがいくらあっても足りません(笑)。
茸のズッパ
カプチーノ仕立ての「茸のズッパ」の祝祭的な香りと味わいは、今も脳内で再現できます。白い部分が長くなるように栽培されていて、辛みがほとんどないという「那須の白美人ねぎ」と、ソテーした茸たち(タモギダケ、アワビダケ、ヒラタケ)が織りなす、繊細な味わいもすばらしゅうございました。しかも最後には、キング・オブ・茸のトリュフを削ってくれちゃうのです。編集の土田さんの、「私はスープになりたい」という、今思い返せば、わけのわからない発言も、あの瞬間は至極納得してしまったものです(笑)。
甘口の白ワイン「レスト」。うっすらとピンク色の秘密とは?
コレに、甘口の白ワイン「レスト」を合わせるという英断もヤバかった! このワイン、瓶内で発酵させた(というか、酸化防止剤を使ってなかったので発酵が始まってしまったそうです)後、その結果、生じてしまった大量の澱を取り除くために、再度、タンクに戻し、澱を沈めてからボトリングしているのだとか。そのため、うっすらとピンク色に色づいているんですって。ちなみに、レストはイタリア語で“残り”という意味なのですが、いやあ大変美味しゅうございました。
猪肉パンチェッタと赤玉ねぎのタリアテッレ
パスタは、「猪肉パンチェッタと赤玉ねぎのタリアテッレ」。猪肉のパンチェッタと赤玉ねぎで作ったソースに、ポルチーニ茸を加え、太めの平打ち麺・タリアテッレに絡めた一皿です。北浦さん曰く「ズッパでは茸の”香り”、パスタでは茸の“旨味”を味わっていただけたらと思っています」。なるほど、野趣あふれる猪肉は、甘みのある赤玉ねぎや旨味の権化ともいえるポルチーニ茸と合わせることで、なんとも上品な印象に、さらに、猪肉の旨味や甘みをも引き立ちます。
ハーブ香る岩魚の蒸し焼き
魚料理「ハーブ香る岩魚の蒸し焼き」も良かったなあ。生ハムとペーストした貝(ほたて)の上に乗せ、蒸し焼きにした岩魚に、さらに大葉とバジルを乗せ、最後に熱したオリーブオイルをかけて、香りを引き立たせた一皿です。その下には、もち麦を使用したリゾットが潜んでいました。
爽やかな香りが立ち上がり、もはや顔は緩みっぱなし。「香りと食感を楽しんでいただきたい料理です」と北浦さん。ええ、存分に楽しんでますよ! また紫蘇の実のたまり漬けのソースもたまりません。北海道出身で、3年前に栃木に来るまでは、その存在さえ、知らなかったというたまり漬けをここで持ってくるとは! 北浦さん、やるな(笑)。
牛肉のアロースト
メインは絶妙に火入れがされた「牛肉のアロースト」。可能な限り栃木県産の牛を使い、香ばしく炭火で焼き上げているそうです。これをスーゴカルディネとネギニラのソースでいただきます。炭火でローストした肉は香ばしい香りも最高のごちそうです。
バローロにしてバローロらしからぬエレガントさ!! イタリアワインの底力を見た思いです
そして、コレに合わせるワインがまた良かった(笑)! イタリアといえば王道・バローロなのですが、この日、供された「バローロ セッラルンガ」は、バローロらしい力強さを持ちながらもエレガントで、ピノ・ノワールのような色合いもチャーミングでした。こんなバローロがあるとは! 新たな発見に次ぐ発見に、わくわくが止まりません。
葡萄と焼き栗のセミフレッド
メインドルチェは、「葡萄と焼き栗のセミフレッド」。ラム酒をしみこませ、しっとりした食感に仕上げたマロンビスキュイの中心部分には、根セロリのピューレが! 花束のように盛り付けられた巨峰とシャインマスカットが放つ芳醇な香りにもときめきます。
北浦さんは言います。「私はまだ栃木に来て3年。みなさんに栃木に来てよかった、と思っていただけるような料理を提供できるように、日々、栃木の食材、それをより美味しく食べていただく調理法を模索しています」。ちなみに、今は、那須ラパン(うさぎ)の料理の開発に力を入れているそうです。次に訪れた際には、お目にかかれるかもしれませんよ。
農業を身近に感じ、その地で育った食材を使った料理を楽しむ旅は、「食べる」ということが、いかに壮大なものであるかということを、その料理やワイン、そして、空気感で、ビビットに感じさせてくれるものでした。で、次はどの季節に伺えばいいですかね、北浦さん?
OTTO SETTE NASU 秋限定メニュー
期間|2022年11月30日まで
料金|1名¥15,730、ワインペアリングは別途¥8,000(税、サービス料込)
営業時間|17:30〜、または18:00〜
予約|公式サイトより3日前の15:00までに要予約
対象|宿泊者
※食材の入荷状況により、料理やワインが変更となる場合がございます。
星野リゾート リゾナーレ那須
住所|栃木県那須郡那須町高久乙道下2301
客室数|全43室
パブリック施設|POKO POKO、アグリガーデン、ラウンジ、ショップ、大浴場
チェックイン/チェックアウト|15:00/12:00
宿泊料|1泊1室2万4000円〜(2名1室利用時1名あたり、税込、朝食付)
交通|JR東北新幹線 那須塩原駅から無料送迎バスで約40分、東北自動車道那須ICからクルマで約20分
問い合わせ先

星野リゾート リゾナーレ那須
Tel.050-3134-8093(リゾナーレ予約センター)
https://risonare.com/nasu/

                      
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