「ししいわハウス軽井沢」で楽しむ建築美と自然の静穏|TRAVEL
LOUNGE / TRAVEL
2023年6月28日

「ししいわハウス軽井沢」で楽しむ建築美と自然の静穏|TRAVEL

TRAVEL|ししいわハウス軽井沢

おいしい食事とゆったりした空間。贅沢とは「平穏」である。

3年間のどうしようもなく長い年月を経て、ようやく世の中が日常に戻った。マスクが外れ、外食は賑わい、出張も旅行も復活した。特に旅行需要はすさまじく、2020年以前は相場10,000円程度だったビジネスホテルが今や30,000円も珍しくない。それほどまでに需要に対して供給があってないわけだから、当たり前に街はどこに行っても、人、人、人で溢れかえる。久しぶりに旅行に行ったけれどどこも人ばかりで人疲れしたという人も少なくないだろう。

Text by IJICHI Yasutake|Photograph by ARAKI Dai

コンセプチュアルな宿が次々誕生。進化する老舗リゾート地・軽井沢

特に、旅慣れしたオトナであればあるほど、各地のいわゆる“観光スポット”は行き尽くしてるから、映えよりも好きな場所だけをゆったり巡りたいと思うし、“食”もトレンドに飛びつくこともなくなって、流行りものよりもおいしくて心地が良いことが優先したいと思うようになる。家族やパートナーと行くにせよひとりで行くにせよ忙しなさによる達成感や充足感よりも、おいしい食事とゆったりした空間でのんびり過ごす安穏とした幸福感を求めるようになるものだ。
そんなオトナにぴったりなのが、「ししいわハウス軽井沢(SHISHI-IWA-HOUSE KARUIZAWA)」。軽井沢は日本随一の観光リゾート地として掘り尽くされた感があるが、ここにきてコンセプチュアルな宿がにわかにまた台頭し始めているから見逃せないエリアである。
ししいわハウス軽井沢は、軽井沢駅から車で15分ほど。中軽井沢を抜けて、星野エリアを抜けた、千ケ滝エリアに位置する。隠れ家のようでユニークなホテルは、建築のノーベル賞と呼ばれるプリツカー賞を受賞している世界的建築家による3つの棟で構成される。2019年に開業した1棟目(No.1)と2022年に開業した2軒目(No.2)は坂茂氏。そして2023年6月開業の3棟目(No.3)は西沢立衛氏。今回はこのNo.3に宿泊させてもらった。
西沢氏が手掛けるNo.3は、透明性と開放感を重視した木造建築。敷地を合理的に使って二階建て構造にしたうえで、日本の伝統的建築へのオマージュが込められ内も外も縁側で繋ぎ、“間”の取り方を大切にしている。縁側を歩くと、ゆっくりと徐々に次の風景が見えてくる。その風景は、計算し尽くされた美しい日本庭園と、自然のままで整備されていない森林のコントラスト。繊細な空間づくりを目の当たりにして息をのむ。館内は、内側にはヒノキ、外側にはスギを使用。岐阜県の上質なヒノキが使われた館内は、寺院や城など日本古来の歴史に担保された耐久性や機能性への安心感とその澄みわたるやさしい香りに包まれる。ししいわハウスにいるだけで、何気なく全身で感じることができる自然は、西沢氏が緻密に計算し尽くして設計した空間だからこそのものであることが身をもってわかるだろう。
館内は家具やアートにもこだわり、日本のアンティーク家具の他、ピエール・ジャンヌレやチャールズ&レイ・イームズなどの名作をセレクトし、また壁には歌川広重などの版画や名作家の浮世絵が飾られる。
               
部屋は全11室。畳のスイートと洋室のスーペリアが母屋に10室、離れてヴィラが1室。宿泊したのは洋室。部屋は三面採光あるいは四面採光を採用することで、大自然の光を存分に取り入れている。部屋の設備はミニマム。TVもなく、ミニバーもなく、あるものと言えばエアコンくらい。窓が大きいから部屋のまわりを囲う木々や鳥や虫をすぐ傍に感じられるし、陽光が存分に差し込んでくるから、部屋と外の境界線を感じることなく自然と一体となれる。その開放感から、思わず、室内では一糸纏わず過ごしてしまった。
貸し切り風呂(バスハウス)もヒノキづくり。庭の緑に囲まれて、ヒノキの香りに包まれながら、足を伸ばして入る風呂は贅のひと言に尽きる。また、ウェルネスルームと呼ばれる湯上りのひと息や夜のストレッチ、朝のヨガやメディテーションにベストな部屋があったり、茶室(ティーハウス)もある。朝いただくお茶は雅のひと言に尽きる。格別。
食事はディナーも朝食も、No.2の共用ダイニング「SHOLA」でいただく。サンサンとした陽光もシトシトとした雨も、その時々の自然の表情をきちんと感じられる、自然開放感たっぷりの空間でいただく。
ディナーを手がけるのは、岡本将士シェフ。地元の生産者が丹精込めて育てるパワフルな素材のポテンシャルを、無駄を省きながら、しかし豊かなクリエイティビティで見事なアウトプットを披露してくれる。中でも特筆すべきは、この日いただいたメインの真田丸。真田丸とは軍鶏とプリスマロック(ブロイラー)をかけあわせた長野県上田市の高級地鶏。モミで燻された真田丸のすさまじいまでの旨み、ジューシーな脂、プリプリというよりもブリブリと言った方がしっくりくるその弾力。歯が触れると一瞬はじき返されるのに少し力を入れるとしっとりと噛みきれるという矛盾した肉感。オーナー選りすぐりのワインと共にぜひ堪能してもらいたい。
食後は併設のバーで、これまたこだわりの選りすぐりの希少なウイスキーを堪能すると良いだろう。樽由来の香ばしさ、甘さ、爽やかさ、スパイシーさ、ウイスキーの芳醇な香りや風味を比べてみると、酒が好きな人もそうでない人も楽しくなってつい夢中になってしまう。
ししいわハウス軽井沢のその建築美を「クリエイティブ」とか、自然との一体感を「リトリート」とか、地元の生産者との繋がりを「地産地消」とか、ひと言で表そうとするとどうしても陳腐になってしまう。けれど、日々の喧噪から離れ、忘れ、ディティールまで計算され尽くした機能美の中で、木々の香り、鳥や虫の声、雨の音、静寂、そうした自然の恵みを体いっぱいに受けとめて、感じることができる。それが、ししいわハウス軽井沢の醍醐味と言えるだろう。この夏、と言わず、四季折々すべての表情を感じにししいわハウス軽井沢に行ってみてはいかがだろうか。
SHISHI-IWA-HOUSE KARUIZAWA No.3
場所|長野県北佐久郡軽井沢町長倉2147-40
問い合わせ先

SHISHI-IWA-HOUSE KARUIZAWA No.3
Tel.0267-31-6658
https://www.shishiiwahouse.jp/

                      
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