連載|新しい価値観が生まれる都、バンガロールへ(前編)
LOUNGE / TRAVEL
2018年10月22日

連載|新しい価値観が生まれる都、バンガロールへ(前編)

“インドのシリコンバレー”で
マリオット・ホテルとTEDがイベントを共同開催

南インドの大都会、バンガロール。南部カルナータカ州の州都で緑多き都市だ。かつては“ガーデン・シティ”と呼ばれていたが、今では“インドのシリコンバレー”という愛称の方が有名だろうか。国内のみならず、南アジア有数のIT都市だ。この地で、マリオット・ホテルとTEDによるイベントが共同開催された。

Text by MAKIGUCHI June

都市の変貌が生む自由な発想

現地語で“ベンガルール”と呼ばれるこの街は、“ローストピーナッツの町”という意味を持つ。かつてこの地を訪れた王が、お腹を空かせていた時に、農民たちがこの地の特産物である落花生をローストして献上。その味を大そう気に入って、この名を授けたのだそうだ。

大都市ながら、のんびりとした風情のローストピーナツ屋台が目に付くのも、そんな由来ゆえだろうか。

湿度も温度も極めて高いというイメージを持つインドにあって、とても恵まれた環境を持つ。標高920mという高原に位置しているため、一年を通して穏やかで過ごしやすい。真夏の日本から移動すると、その涼しさにまず驚く。

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この15年ほどで急速に発展し、世界有数のメガシティへと変貌を遂げた理由のひとつに、この気候による住みやすさがあげられる。緑も多く、観光するにも快適だ。

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外資系IT企業が多く進出している都市なので、街ゆく人々も国際色豊か。飲食店も、伝統的なスパイスをふんだんに使ったレストランから、フュージョンや創作料理を出すまで飲食店のバリエーションも豊富だ。加えて好景気と言うこともあるのだろう。インドでは珍しく夜に女性が独り歩きしても大丈夫なほど安全なのも、旅行者には安心だ。

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1947年のインド独立後は、重工業や航空・宇宙産業、防衛産業などの工場が置かれ栄えてきた。経済が自由化した後は、理数工学系の教育が進んでいることで多くの情報技術者を輩出していること、英語力、低い労働コストなどを背景に、IT産業が発展する。短期間での街の発展は、経済成長とともに爆発的な人口増加を生む。そこで常に人々を悩ませているのが、大渋滞だ。混んでいなければ30分ほどの距離のところでも、3時間かかることも珍しくない。

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そんな状況を回避しようと生まれたのが、企業ごとに営業時間をフレックスにするという斬新なアイデアだ。特殊な事情からひねり出された苦肉の策だが、24時間眠らないことが街の魅力でもある。街は眠らず、一日中エネルギーに満ち溢れているのもそのためだ。毎晩夜市が開かれ、バーの灯が夜通し煌めく。実はバンガロールは、バーの町としても知られているほどその数が多く、クラフトビールやクラフトジン、カクテルなどの人気が高い。

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とはいえ、さらなる経済発展のためには街中の移動がスムーズであることは必須条件だ。そこで、日本のODA(政府開発援助)も得て、地下鉄及び高架鉄道等による大量高速輸送システムを建設中で、すでに一部開通している。街を貫くシステムが完成するまで、あと5年ほどかかる予定だ。

まさに、今も発展し続けているバンガロール。これまでインドを訪れたことがある人でも、この街には驚かされることが多いという。いわばここは、インドの新しい価値観が生まれる場所なのだ。

そんなバンガロールで、またしても新しい価値観が発信された。世界最大のホテル・チェーンであるマリオット・インターナショナルとTEDによるパートナーシップから生まれた、「TEDサロン」が開催されたのだ。
 

“インドのシリコンバレー”で
マリオット・ホテルとTEDがイベントを共同開催(2)

“ステイ”以上の“エクスペリエンス”を

日本でもTVで紹介されているのでご存知の方も多いと思うが、ここでTEDについてご説明しておこう。TEDとはIdeas Worth Spreading(広める価値のあるアイデア)を理念とする非営利団体だ。主に、各分野をリードする人々による18分程度の短いプレゼンテーションを主催している。

毎年カナダのバンクーバーではTEDカンファレンスが行われ、その様子は、別のTED関連イベントと同様にTED.comで無料配信されている。プレゼンテーションの多くはこのカンファレンスで行われ、経験とアイデア、実行力に富んだ人々のパワフルで、ウィットに富んだ話術に引き込まれる人が続出している。

これまでに登壇したスピーカーは、ビル・ゲイツ、ジェーン・グドール、リチャード・ブランソン、モニカ・ルインスキー、フィリップ・スタルクなど実に多彩だ。カンファレンスに出席するには、招待されることが必須となり、招待された場合も特別な理由がない限り100万円程度の参加費が必要だ。

だが、TEDが“広める価値のあるアイデア”をより多くの人に広めることを目的にしている団体なのを忘れてはならない。より多くのアイデアを無料でアクセス可能な形で拡散するために、TED.comでの無料配信に加え、TEDx(TEDスタイルのイベントを世界各地で自立的に組織する個人やグループへのライセンスを発行。現在数千の個人やグループがTEDライセンスを取得)、TEDフェロープログラム(世界中のイノベーターを厳選し、彼らの特筆すべきプロジェクトや活動に光を当てるプログラムの実施)、TED-Ed(TEDにおける教育に特化したプログラムを統括)などの様々なプラットフォームを開発。その手助けとして、世界中の数千人に上るボランティアが字幕作成や翻訳などを行っているのだ。

その精神に共感したのが、ホスピタリティ業界を牽引するマリオット・インターナショナル(本社:米国メリーランド州)だった。グループの旗艦ブランドとして、世界各地においてクリエイティブなアイデアや意義あるディスカッションをリードしているマリオット・ホテルは、2016年からTEDとのパートナーシップをスタート。マリオット・ホテルは、人生を変えるほどのインパクトあるクリエイティブなアイデアを求めて世界中を旅する新世代の旅行者をターゲットとしたブランド。TEDと同様のパッションと国際的な知名度を誇ることから、共に手を取り合うことで、ゲストたちが旅という経験をさらなる高みへと昇華できるようにと企画された画期的なイベントなのだ。

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しかもユニークなのは、通常のTEDカンファレンスとは異なり、スピーチの後、スピーカーとのQ&Aセッションが開催されることだ。インタラクティブに“広める価値のあるアイデア”と繫がることで、スピーカーと参加者がより有意義なアイデアを創出できる特別な場となっている。

マリオット・インターナショナルのアジア太平洋地区ブランド&マーケティング・ヴァイスプレジデントであるマイク・ファーカーソンは、パートナーシップについてこうコメントしている。

「60年の歴史を有するマリオット・ホテルは、ゲストのクリエイティビティを刺激するようなイノベーションとインスピレーションをお届けできるよう心掛けており、TEDとの取り組みは、マリオット・ホテルのポリシーを文字通り体現してくれるものです。マリオットで開催される「TEDサロン」は、インスピレーションを与える力強いメッセージを通して、世界中の旅行者と繋がっています。来年もこのパートナーシップを継続し、アジア太平洋地域のさらに多くのお客様にこのエキサイティングな体験をお届けできる事を、今から楽しみにしています」

この2年でシアトル、ロンドン、アブダビ、バンコク、サンチアゴなどで「TEDサロン」を開催してきた。そして、今年9月6日には、アジア太平洋地域では2度目となる共同イベントを成功させた。その会場となったのが、インドの「バンガロール・マリオット・ホテル・ホワイトフィールド」。インドにおけるテクノロジーとイノベーションの拠点としての評価を得ているこの地が選ばれた理由となっている。

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そんな地域性を生かして今回提示されたテーマは、“女性活躍のためのイノベーション”。今回登壇したのは、3名のTEDフェローだ。

世界の女性健康問題に取り組み、特に母体の健康向上に力を入れているインド出身のズバイダ・バイ氏。「スリランカ・ブルーホエール・プロジェクト」創始者にして海洋生物学者のアシャ・デ・ボス氏。

ベトナムや世界各地で持続可能な農業コミュニティを構築することをミッションとする団体、Fargreenの共同創設者であり、自身も農業事業家でもあるチャン・チャン氏。アジア太平洋地区を代表する熱きリーダーたちが、自らの個人的な体験も交えて「女性活躍のためのイノベーション」をテーマに刺激的なスピーチを展開した。

熱気に包まれた当日の詳しい様子については、次回じっくりご紹介したいと思う。

今後も、ボストン、カイロ、アテネなど各地のマリオット・ホテルで、「TEDサロン」が開催される予定だという。TEDに興味があり、実際にカンファレンスに行ってみたいけれど、どうアクセスしたらと思っていた方には、実はこの「TEDサロン」にまず行ってみるのもおすすめだ。参加するには、まず「マリオット・リワード」の会員となって、ある一定のポイントを貯めることが必要となるが、出張が多い人々にはそれほど難しくないかもしれない。

また、世界各国のマリオット・ホテルでは(一部のホテルのみ)、客室内でマリオットオリジナルTEDコンテンツのストリーミング配信TED Talksを視聴できるのも嬉しい。

さらに、インスピレーションを刺激するコンテンツをInstagramストーリーシリーズ#MarriottHotelsxTEDFellowsも配信中だ。随時更新されるシリーズを観るには、Instagramで@marriotthotelsをフォローするだけ。TEDファンは要チェックだ。

詳細については、http://marriott-hotels.marriott.com/marriott-hotels-tedを。

後編「クリエイティビティを刺激する街が生むイノベーション精神」、近日更新予定。

マリオット・ホテルについて
世界65 以上の国と地域において、500 軒以上のホテルとリゾートを展開。次世代の旅行者にきらめくような旅の体験を提供するべく、あらゆる面でお客様の滞在を進化させている。仕事とプライベートを融合する傾向にある世界中の旅行者とより結びつきを強くするために、モバイルでの存在感を強化。マリオットはスタイル、デザイン、テクノロジーを融合した「グレートルーム ロビー」や「モバイルゲストサービス」を導入するなど、革新的なアイデアで業界をリード。業界の受賞歴あるロイヤリティプログラム、マリオット リワード(ザ・リッツ・カールトン・リワードを含む)に参加しており、会員はmembers.marriott.comで、スターウッドプリファードゲスト(SPG)のアカウントとのリンクが可能。エリートステータスのマッチングや無制限のポイント移行が可能です。詳しい情報はwww.MarriottHotels.comまで。また、FacebookやTwitter(@marriott)、Instagram(@marriotthotels)でも情報を発信中。

           
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