やっぱり本場フィンランドのSAUNAはサイコー!!|TRAVEL
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SAUNAの源流を求めて、フィンランドへ。
LAPLANDの玄関口KUUSAMOにて
最も伝統的なスモークサウナに辿り着いた(1)
SAUNAの聖地はフィンランド。最近ではサウナ好きのことを“SAUNNER”と呼称するが、SAUNNERにとってフィンランドは憧れの地なのである。もちろん、SAUNAとはフィンランド語だ。現地の人にうかがったところ、その語源は「蒸し風呂」という意味があるそうだ。ただしフィンランドの皆さんは、サウナとは発音せずに、ソーナと発音することが印象的だった。ソーナ・ソーナと言われて、はじめは何のことか分からなかったぐらい、彼らの発音は僕らのものと異なるものだった。
Text by TSUCHIDA Takashi(OPENERS)
意外とあった、僕らのSAUNAに対する誤解
言葉の説明ついでにもうひとつ。日本のスーパー銭湯で現在、大流行中の“ロウリュ”であるが、これもフィンランド語である。ただし、日本では誤った使われ方をしている。
ロウリュの語源は、焼き石に水をかけること。蒸気を発生させていく行為自体をロウリュと表現する。ところが、日本のスーパー銭湯におけるロウリュは、熱風を送る意味にとられている。SAUNAの室内を高温にするため、ストーブに水をかける(多くの場合が、アロマ水)ところは間違っていないのだが、あのサービスを正しく形容する言葉は「アウフグース」と発音するドイツ語だ。
スタッフがストーブに水をかけて蒸気を発生させ、タオルを振り回してゲストに熱風を送る行為である。もちろん本式は巨大ウチワを使わない。
さて、先ほどから説明なしに記述しているが、フィンランドのSAUNAはサウナストーンに水をかけて蒸気を作る湿式サウナである。ところが、日本のSAUNAは乾式サウナ。空気そのものを温める方式だ。ここが日本と彼の地のSAUNAがまったく別物である所以である。
この違いにより、SAUNA室での過ごし方すら異なってくる。フィンランドではSAUNAにおけるコミュニケーションが必然だが、日本ではむしろダラダラと喋っているとストイックなSAUNNERにムッとされたりする。
あちらでは同じ釜のメシを食う仲間ならぬ、同じSAUNAの蒸気を浴びる仲間なのである。この違いについては後ほど詳述したい。
期待通り、現代のフィンランド人も相当にSAUNA好きである。ヘルシンキ空港内にあるFinnairのプレミアムラウンジには、なんとSAUNAが存在する。ひとっ飛びする前に、SAUNAにでも入ってってちょーだいね! というホスピタリティの現れだろう。
また大きな会社の役員フロアには大抵SAUNAが存在する。大切なことはSAUNAで決める。これもフィンランド式。なんせ、国会にまでSAUNAがあるという話だ。
そんなフィンランド人も大好きなSAUNAは、こんなところにも。ヘルシンキの街の中心街にある観覧車のひとつがSAUNAの個室になっている。SKY-WHEEL定員4人で1時間240ユーロ(約2万9000円。2016年2月10日現在)。ドリンク付きである。ほかにスキー場のゴンドラがSAUNAになっている話も聞いた。
どうやらフィンランド人は身体を張ってギャグをする。
そしてヘルシンキには、公衆浴場ならぬ、公衆SAUNAが存在する。日本で言う銭湯だ。スーパー銭湯のような余暇を楽しむためのSAUNAではなく、日々の生活のためのSAUNAである。
フィンランドの住宅は、賃貸の集合住宅も含めてたいてい自家SAUNAを持っているので、状況は日本の銭湯と似ている。SAUNAなしの部屋で暮らす少数派の人々のために、大都市圏ではかろうじていくつかの公衆SAUNAが残っているそうだ。
かつてSAUNAは男女混浴だったが、今日の公衆SAUNAは男女別となっている。ただし都会を離れたプライベートなSAUNAは、その限りではない。
Page02. SAUNA、コテージ、湖畔、夕日。どれひとつとして欠くべからざるもの
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最も伝統的なスモークサウナに辿り着いた(2)
SAUNA、コテージ、湖畔、夕日。
どれひとつとして欠くべからざるもの
ヘルシンキから1時間40分のフライトで到着するKUUSAMO(クーサモ)は、さながら東京駅から長野新幹線で向かう軽井沢のようだ。左の地図でいうと、ヘルシンキが最も南(地図では下)、KUUSAMOはラップランドの南、黒いトナカイが描かれているちょっと上の辺りだ。
ここは高級リゾート地としても知られ、冬のスキーシーズンにはヨーロッパ各地から多くの人々がやってくる。彼らの目当てのひとつがSAUNA。温泉地を目指す日本人の嗜好に似たものを、欧州人も持っているのである。またKUUSAMOでは秋から春にかけ夜空に雲がなければ、オーロラを見ることもできる。
KUUSAMOには伝統的なスモークサウナがある。このスモークサウナこそが、キング・オブ・サウナと呼ばれるものだ。ただし維持管理が難しく、本場フィンランドといえどもこの方式のSAUNAは激減している。ちなみに、今日のフィンランドの一般家庭で最も普及しているのが、電気式サウナ。そしてKUUSAMOのようなリゾート地に多いのが薪ストーブサウナだ。
スモークサウナもこの薪ストーブの一種(というか原型)なのだが、スモークサウナには排煙のための煙突がない。だからサウナストーンを7~8時間、薪で焚き付けている間、室内には煙が充満するので人間は入れないのだ。
一酸化炭素中毒を避けるため、サウナストーンが温まった後も十分な排煙をする必要があり、準備に多大な時間と労力がかかる。しかし、それほど手間暇をかけてセッティングしたSAUNAの室内は、薪木の芳香なアロマ香がただよい、身体全体で癒されていくように思えた。
ちなみに薪ストーブには煙突が付いているから、ストーブを炊きながらSAUNAに入ることができる。両者にハッキリとした効用の違いがあるのかと問われると、おそらくはない(のだろう)。しかし伝統的なスモークサウナで、手間暇をかけられ、きちんとセッティングされたSAUNAに入る際は、なにか格別なものを感じる。
早速、SAUNA室へ。ここではサウナストーンに水をかけ(ロウリュして)、蒸気を出して室内の温度を調節する。SAUNAの温度は、その場の総意で決めるのがフィンランドスタイル。コミュニケーションが必然と先述したのはこのことである。
「もう少し、熱くしていいですか?」
「気分悪くないですか?」
互いを気遣うコミュニケーションがなければ、見知らぬ者同士、それこそ喧嘩になってしまう。天井付近に溜まった蒸気は、白樺の若枝を束ねた“ヴィヒタ”で撹拌する。すると室内の上層に溜まった熱気が白樺のみずみずしい香りとともに対流しはじめるのだ。さらに熱くするならまた水をかける。加減を調節しながら、全員の同意を得ていく。
蒸気は空気の300倍の熱伝導率がある。だから低めの温度でも熱く感じられる。しかし、温度を一気に上げ過ぎなければ、室内に長く留まれる。蒸気を出しては少し休み、また蒸気を出しては少し休む。そうやって、ゆっくりと長い時間をかけてSAUNAを楽しむ。
ほら、日本のSAUNAと全然違うでしょ? 日本の乾式サウナの室温は100℃にものぼるが、乾燥しているために火傷を起こさない。火傷を起こす前に、耐えられずに外に出るからだ。日本のSAUNAがなぜ乾式になったのかは分からない。安全のためか、店側が管理しやすいためなのか。
しかし、日本の高温の乾式サウナで「水をかけないでください」というのは本当だ。温度が高い上に、さらに300倍の伝導率で全身から熱が伝わったら、それこそ危ない。
ところでKUUSAMOのSAUNAは、たいてい湖畔に併設され、ほてった身体は湖で冷やす。雪が降ったら雪の上で転がり、湖畔が凍れば氷をくり抜いて冷水を浴びる。その開放感は、まるで露天風呂である。つまり都会のSAUNAとは異なるコテージサウナのメリットは、露天風呂の開放感と似ている。
コテージの脇には休憩室があり、バスローブを羽織ってリラックスする。水分補給はベリージュースだ。フィンランドでは森のあちこちにベリーが自生している。彼らはそのベリーを自由に摘む権利がある。また庭にベリーを植えている家も多い。その実を潰して、家庭の味とするのだ。まるでヤカンで煎じていた時代の日本の麦茶のような扱いである。あの当時、日本にも家庭の味があった。
フィンランドのベリージュースも、ドロっとさせたものや甘みを強く引き出したもの、酸味を生かしたものなど、さまざまな味付けがある。それらの飲み比べは、旅行時の楽しみのひとつとなる。
小腹を満たすのはカナッペ。飲みすぎない程度にビールを楽しむ人たちもいる。SAUNAと湖と休憩室を往復して、数時間かけてたっぷりと命の洗濯をするのが、SAUNAの聖地、フィンランドにおける最高の贅沢である。
Page03. 新アクティビティを発見。心の疲れを解き放つSAUNA−YOGA
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新アクティビティを発見。
心の疲れを解き放つSAUNA−YOGA
KUUSAMO(クーサモ)のイサキビレッジでは、SAUNAのなかでYOGAレッスンを体験できる。これ、相当気持ちいい!!
SAUNAの室内はおよそ50度。低めに設定されているから、60分のクラスも苦にならない。YOGAといってもハードなポーズをするのではなく、むしろ意識を呼吸に集中させ、リラックス効果を高めようとするものだ。
このSAUNA−YOGAと先述のスモークサウナは、ともにSAUNA TOURから予約することができる(http://www.saunatour.fi/en/)。SAUNA TOURは、クーサモエリアで合計9つのSAUNAを運営。氷のなかにSAUNAを設営するという摩訶不可思議なものまである。聞けばSAUNAの熱で氷の壁が溶けて、ほどよい湿度になるのがいいとか。冬季にフィンランドに行くならば、挑戦してはいかがだろうか。
さて、フィンランド人にとってのSAUNAは、禊の場所だった。その昔、フィンランド人はSAUNAで生まれ(出産の場)、死後の肉体はSAUNAで清められたそうだ。そしてSAUNAとはまったく関係ないが、フィンランド人の塩加減は、日本人好みだ。塩分控えめで、味が繊細。サーモンのスープなど、素朴で非常に味わい深い。
フィンランドと日本、意外にも共通点が多いのはなぜだろう(ちょっと強引?)……と考えていたら、この話を聞いて合点がいった。フィンランド人の祖先は、アジア系なのだ。そこがスカンジナビア半島の隣国、スウェーデン、ノルウェーとは決定的に違うところ。ただしアジアといっても、中央アジア。言語学的にエストニアと祖先が共通という説もある。
一方で、フィンランドの歴史を振り返ると、隣国のスウェーデンやロシアに占領されていた時期があり、1917年に独立を果たすも、第2次世界大戦中にロシア(当時はソ連)に再び攻め込まれた辛い過去がある。フィンランドは第2次世界対戦の敗戦国。 そして2017年は、独立してちょうど100周年を迎える記念年である。
ドイツ軍が、フィンランドから撤退する際に、焦土作戦の一環として街を焼き払い、90%の建物が破壊され、壊滅的な被害を受けたラップランド地方の主要都市、ロバニミエ。この地では戦後復興の際に、街の区画デザインをトナカイにしようと決めたそうだ。著名な建築家アルヴァ・アアルトが、フィンランドらしい街並みを目指してデザインしたという。
ロバニミエのアルクティクム(北極圏博物館)の学芸員スタッフが話してくれたのだから、間違いない。彼女が手にしているスマートフォンには、主要道路がトナカイになっていることを示すMAPが示されている。
つまり、SAUNAから話を思いっきり脱線させてまで何が言いたいのかというと、「やっぱり行かなきゃ分からない」。トナカイを模して造られた街があるなんて、スゴい! けれども、そんな面白すぎる話が教科書には載ってないのだ。
薪で炊いた風呂とガスで沸かした風呂、その違いはなかなか形容しづらい。それと同様に、スモークサウナ、薪ストーブサウナ、電気サウナの体感の違いを明確に表現することは難しい。
ただし、これだけは言えるのが、日本の乾式サウナとフィンランド式の湿式サウナでは明解に異なることだ。どっちが優れているとかではないが、フィンランド式の方が呼吸しやすく、身体への負担がソフトである。
今ごろのフィンランドは、一面、雪に覆われているはずだ。真っ白なコテージで、しんと静まり返った雰囲気のなか、SAUNAに入る。素敵だ。日本には雪見酒という風情があるが、向こうにもそれに似た慣習があるに違いない。
空を見上げればオーロラ。そしてフィンランド人の好きなジンをちびちび。そんな感じだろうか。
結論 SAUNNERなら、いつかはフィンランドを目指すべきである。
追伸 オススメはKUUSAMOである。温泉に泊まりがけで向かうように、KUUSAMOにも宿泊予定で向かい、たっぷりと時間をかけてSAUNAを楽しむべきである。1時間そこそこの体験で、その奥深さは分かりやしないさ。
StopOver Finland
Visit FinlandとFinnairは、短期間の滞在でも気軽にフィンランドを満喫できるように5時間のクイックツアーから最長5日間のパッケージツアーまで、様々なアクティビティやツアーを用意。これを利用してKUUSAMOに向かうことも可能だ。http://www.visitfinland.com/ja/stopover/
Visit Finland(フィンランド政府観光局)
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