特集|2014年国際映画祭速報|第71回ベネチア国際映画祭
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2015年1月21日

特集|2014年国際映画祭速報|第71回ベネチア国際映画祭

MOVIE|第71回ベネチア国際映画祭

各部門の受賞作品を最速リポート!

9月6日、10日間にわたっておこなわれた第71回ベネチア国際映画祭が閉幕。フランス出身の作曲家、アレクサンドル・デスプラ率いる9人の審査員が、日本からの出品作品(塚本晋也監督の『野火』)を含む20作品のなかから受賞作品を選出した。授賞式の冒頭でデスプラは「10日間で20作品を観るという経験は、なかなか意義深いものでした。どの作品も素晴らしく、受賞作品を決めるのは簡単ではありませんでしたが、出品作品に関わったすべてのシネアスト(映画人)への尊敬の念と公平さをもって選出しました」と述べ、映画音楽を手がける作曲家らしい言葉で締めくくった。「Vive la musique! Vive le cinéma!(音楽万歳! 映画万歳!)」

Text by TANAKA Junko (OPENERS)Photographs by la Biennale di Venezia - Foto ASAC

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© la Biennale di Venezia - Foto ASAC

コンペティション部門 金獅子賞

『En duva satt på en gren och funderade på tillvaron
(A Pigeon Sat on a Branch Reflecting on Existence)』

製作国:スウェーデン、ドイツ、ノルウェー、フランス

監督:ロイ・アンダーソン(Roy Andersson)

スウェーデンに初の金獅子賞をもたらした風刺映画

1943年、『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』で長編デビューを果たしたロイ・アンダーソン監督。そのまま映画監督をつづけていれば、すでに45年のキャリアをもつベテランである。だが、スウェーデン内外で成功を収めたデビュー作につづく長編2作目が、批評家に酷評され興行的にも失敗した彼は、映画界から一旦姿を消し、CM制作に身を投じることになる。そして25年ぶりにメガホンを取った長編映画が、2000年の『散歩する惑星』である。ある惑星を舞台に、次々と巻き起こる不条理な出来事と、それに翻弄される人々の悲哀を描いた本作は、カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞するなど、批評家から絶賛をもって迎えられた。つづく2007年の『愛おしき隣人』では、舞台を北欧の“とある街”に移し、そこで生きるちょっと風変わりな人たちの日常を、ユーモラスな音楽に乗せて描いてみせた。そんな過去2作品の流れをくむ『En duva satt på en gren och funderade på tillvaron』は、3部作「リビング・トリロジー」の最後を飾る作品。2人の“巡回セールスマン”の目を通して、鳩を見つめつづける中年男性など、市井の人びとの日常をシュールに見つめた短編作品集。アンダーソン監督の真骨頂ともいうべき風刺映画で、スウェーデンに初の金獅子賞をもたらした。


 

2014年国際映画祭速報|第71回ベネチア国際映画祭 03

© la Biennale di Venezia - Foto ASAC

 

コンペティション部門 審査員大賞

『The Look of Silence』

製作国:デンマーク、フィンランド、インドネシア、ノルウェー、イギリス

監督:ジョシュア・オッペンハイマー(Joshua Oppenheimer)

インドネシアで起きた大虐殺の秘密を探る

1965年、インドネシアで密かにおこなわれた100万人規模の大虐殺。その実行者たちは、驚くべきことに、いまも“国民的英雄”として楽しげに暮らしている。彼らが嬉々として当時の様子を再現して見せたのをきっかけに、「あなたたち自身を、カメラの前で演じてみませんか」と持ちかけてみた。映画スター気取りでカメラの前に立った男たち。しかし、その再演は、彼らにある変化をもたらしていく──。日本でも大ヒットを記録したドキュメンタリー『アクト・オブ・キリング』につづき、ジョシュア・オッペンハイマー監督は、再びこの大虐殺をテーマにドキュメンタリーを制作。今回は殺された息子の無念を晴らそうと、犯人捜しを試みる被害者家族の様子をカメラは追う。常に危険と隣り合わせのミッション。その先に見えてきたものとは?


 

2014年国際映画祭速報|第71回ベネチア国際映画祭 04

© la Biennale di Venezia - Foto ASAC

 

コンペティション部門 男優賞

アダム・ドライバー
『Hungry Hearts』

製作国:イタリア

監督:サヴェリオ・コンスタンツォ(Saverio Costanzo)

注目の若手俳優が初の栄冠を手に

アダム・ドライバーは俳優を志す前、海兵隊に所属していたという珍しい経歴の持ち主だ。名門ジュリアード学院を卒業後は、ブロードウェイやオフ・ブロードウェイを中心に活動を開始。2012年、人気ドラマシリーズ『Girls(ガールズ)』のアダム役で一躍注目を浴び、『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』『フランシス・ハ』など話題作に相次いで出演。2015年に公開予定の『スター・ウォーズ/エピソード7』(J・J・エイブラムス監督)や『Silence』(マーティン・スコセッシ監督)のキャストにも名を連ねるなど、まさにいま乗りに乗っているドライバー。『Hungry Hearts』では、愛する妻とのあいだに子どもが生まれ、喜びに包まれていたのもつかの間、子育ての苦しみに苛まれていく様子をリアルに演じ、初の栄冠を手にした。


 

コンペティション部門 銀獅子賞(監督賞)

アンドレイ・コンチャロフスキー(Andrej Koncalovskij)

『Belye nochi pochtalona Alekseya Tryapitsyna (The Postman’s White Nights)』

製作国:ロシア

コンペティション部門 脚本賞

ラクシャン・バニ=エテマド&ファリド・モスタファビ(Rakhshan Banietemad and Farid Mostafavi)

『Ghesseha (Tales)』

製作国:イラン

監督:ラクシャン・バニ=エテマド

コンペティション部門 審査員特別賞

『Sivas』

製作国:トルコ、ドイツ

監督:カーン・ミュデジ(Kaan Müjdeci)

コンペティション部門 女優賞

アルバ・ロルバケル(Alba Rohrwacher)

『Hungry Hearts』

製作国:イタリア

監督:サヴェリオ・コンスタンツォ(Saverio Costanzo)

コンペティション部門 マルチェッロ・マエストロヤンニ賞(若手俳優賞)

ロマン・ポール(Romain Paul)

『Le dernier coup de marteau』

製作国:フランス

監督:アリックス・ドラポルト(Alix Delaporte)

 

 
           
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