MOVIE|メキシコの若き巨匠、ついに日本初上陸『闇のあとの光』
MOVIE|カンヌ映画祭で監督賞を受賞したメキシコの若き巨匠
カルロス・レイガダス監督による日本初公開作品『闇のあとの光』
メキシコの若き巨匠、カルロス・レイガダス監督の日本初公開作品となる『闇のあとの光』。2012年のカンヌ国際映画界の監督賞を受賞した話題作が5月31日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開される。
Text by YANAKA Tomomi
弁護士のキャリアをもち、カンヌでは賛否両論を巻き起こした異才
前作『静かな光』でカンヌ国際映画祭審査員賞に輝き、東京国際映画祭でも特集上映が組まれるなど、唯一無二の世界観で近年ブームを巻き起こしているカルロス・レイガダス監督。本作『闇のあとの光』もまた、その強烈な個性ゆえ、カンヌ国際映画祭での上映直後から賛否両論を巻き起こしたという彼の鬼才ぶりを示すものとなった。
前職は弁護士であり、メキシコの外務省の一員として欧州委員会で働くという異色の経歴をもつレイガダス監督は1971年生まれ。
1998年に短編4本を発表したのを皮切り、2002年に初の長編『ハポン』でカンヌ国際映画祭カメラドール特別賞を受賞。今日に至るまで、恐れることなく人間の根源にある「欲望」をあぶり出し、独自の美学を貫いてきた圧倒的なエネルギーは、“それ”という謎の存在を介在させつつ、人間という存在に迫る本作でも遺憾なく発揮されている。
恵まれた生活を送っていたフアンとその家族のもとを訪れる“それ”
メキシコのとある村。フアンは愛らしい二人の子と美しい妻ナタリアとともに何不自由ない恵まれた日々を送っていた。ところがある夜、赤く発光する“それ”が彼の家を訪問したときから、何気ない平和な日常がゆがみはじめる。
掘っ立て小屋でおこなわれる依存症の集会、寄宿学校でのラグビーの練習風景、光降り注ぐ浜辺にたたずむ成長したふたりの子ども、華やかなパーティー――光と闇が互いに戯れるがごとくあらわれる世界の断片は一発の銃声によりあらたな位相に導かれてゆく。
フアンのもとにあらわれた“それ”とはいったいなんだったのか。災いをもたらす悪魔なのか、それともどこかに彼らを導こうとする神なのか。
万華鏡的なビジュアルエフェクト、ラテン・アメリカ特有の魔術的なリアリズムが圧倒的な映像美のもとに繰り広げられる『闇のあとの光』。めくるめく映像世界のなかから描かれる愛、人間のたくましさが観る者の心を突き動かす。
『闇のあとの光』
5月31日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開
監督・脚本│カルロス・レイガダス
出演│アドルフォ・ヒメネス・カストロ、なたリア・アセベド、ルートゥ・レイガダス、エレアサル・レイガダス
配給│フルモテルモ、コピアポア・フィルム
2012年/メキシコ・フランス・ドイツ・オランダ/115分
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