MOVIE|ドキュメンタリー『アントン・コービン 伝説のロック・フォトグラファーの光と影』
MOVIE|マルチな才能を発揮するカメラマンが抱える孤独と悲しみに迫る
ドキュメンタリー『アントン・コービン 伝説のロック・フォトグラファーの光と影』
U2やジョイ・ディヴィジョンらを撮影し、30年以上にわたりポップカルチャーに貢献してきたフォトグラファー、アントン・コービン。彼の姿を追ったドキュメンタリー『アントン・コービン 伝説のロック・フォトグラファーの光と影』が、4月6日(土)からシアター・イメージフォーラムで公開される。
Text by YANAKA Tomomi
女性監督のクラーチェ・クイラインズが4年にわたり密着
“世界最強のロック・フォトグラファー”と評されるアントン・コービン。緻密な構図とアーティストの本質に迫るその作風は数多くのアーティストから絶大な支持を受け、ザ・ローリング・ストーンズやメタリカ、ニルヴァーナ、コールドプレイらトップアーティストの撮影はもちろん、アルバムのアート・ディレクションやステージデザイン、プロモーションビデオを手がけるなど、そのマルチな才能を生かしてカルチャーシーンを牽引してきた。
近年は映画製作にも精力的で、イアン・カーティスをモデルにした『コントロール』(2007年)は、初監督作ながら世界中で賞賛を浴び、カンヌ国際映画祭でパルムドールを獲得した。また、ジョージ・クルーニーを主演に迎えた『ラスト・ターゲット』(2010年)ではハリウッドに進出し、全米1位を獲得するなど、その才能をいかんなく発揮している。
華やかな世界で長年活躍しているコービンだが、私生活については決して明かそうとしない。1955年、オランダで牧師の息子として生まれた彼が、世界的なロック・フォトグラファーになるまで。そして成功を手にしてからの心の軌跡を追いかけたのは、おなじくオランダ出身のクラーチェ・クイラインズ。これまでに凶悪犯罪者の刑務所や、密輸する武器ディーラーを追ったドキュメンタリーを撮影してきた監督だ。4年間をかけてコービンに密着し、伝説のカメラマンが抱える孤独と悲しみに迫っている。
「ミュージシャンは、アントン・コービンの写真に写る自分を目指す」
本作では、これまでのコービンの代表作を随所にちりばめながら、U2やデペッシュ・モード、メタリカ、ルー・リード、ジョージ・クルーニーといった世界のトップアーティストとともに創作する様子をカメラが追う。さらにU2のボノ、マーティン・ゴアの貴重なインタビューからは、アーティストとフォトグラファーという関係を超えた緊密なつながりを感じさせ、アントン・コービンの知られざる素顔を浮き彫りにする。
「ミュージシャンは、アントン・コービンの写真に写る自分を目指す」とボノが語るとおり、これまで数かずの写真やアートワークによってアイコンを生み出してきたひとりのロック・フォトグラファー。これまで決して見せようとしなかった、彼の苦しみや素顔を知ることができるドキュメンタリーだ。