大阪から世界へイノベーションを発信する文化装置「VS.」が始動 | VS.
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2024年9月24日

大阪から世界へイノベーションを発信する文化装置「VS.」が始動 | VS.

VS.|ヴイエス

知的好奇心を刺激する新名所が万博を控えた大阪に誕生した

昨年10月末に本サイトでもお伝えした、大阪うめきた地区の再開発プロジェクト。その目玉となる「VS.(ヴイエス)」が去る9月6日に開業し、オープニングセレモニーが開催された。こけら落としとして、真鍋大度氏の新作個展『Continuum Resonance: 連続する共鳴』がスタートし、知的創造の場としてのプレゼンスを見せつけた。

Photo & Text by KAWASE Takuro

緑豊かな環境との調和を意識したユニークな低層建築物

東京駅八重洲口や渋谷駅周辺といったターミナルエリアの再開発がここしばらく続いていたが、関西最大のターミナルエリアであった梅田貨物駅跡地の再開発事業である「うめきたプロジェクト」は、その規模感で頭ひとつ抜けていると言えるだろう。第二期として2027年に完成する大型都市公園「グラングリーン大阪」の一部が先日開業したばかり。
南北に広がる敷地のほぼ中心に位置する「VS.(ヴイエス)」は、正面から見ると背後には先行開発された「グランフロント」がそびえ立ち、裏面から見ると青々とした芝生と木々の中にひっそりと佇んでいる。鳴り物入りの割には控えめな外観であるのは、緑豊かな都市公園との調和を第一に考え、あえて低層としたからだ。VS.を手がけた安藤忠雄氏は大阪市港区出身であり、戦後の混迷期からこの地の変遷を踏まえて設計と監修がなされた。

こぢんまりとした外観からは想像できない広大な地下空間

階段を降りて記者会見が行われるSTUDIO.Aへと足を踏み入れると、外観からは予想もできない広大な空間となっており、天高15m・床面積280㎡にも及ぶ。セレモニーには、VS.の仕掛け人である野村卓也氏と山村健一郎氏をはじめ、安藤氏や大阪府知事の吉村氏や大阪市長の横山氏も登壇。ゲストたちが順繰りに祝辞を述べ、開業を報せるアナウンスがなされると、セレモニーはクライマックスへ。
アトモスフェリックな生演奏とともにイメージ映像が映し出され、式は締めくくられた。展示会場やコンベンションとしての利用に限らず、ライブや演劇といったエンターテイメントにおいても、この広大な地下空間が、これまでにない体験をもたらすことが期待できる。取材陣は転換のためSTUDIO.Aを一時退室し、VS.開業の第一弾となる真鍋氏の『連続する共鳴』へ案内される。本展示は開業の数年前から綿密に計画されており、VS.が発信するイノベーションを具現化するものでもある。

安藤忠雄建築と先端のデジタルアートがぶつかり合う

テクノロジーを駆使し、斬新なインスタレーションや映像作品の数々を世に繰り出してきたライゾマティクスの主宰でもある真鍋氏自身がガイドを務め、初公開となるインスタレーションを解説。会場内に無数に設置されたセンサーが鑑賞者の位置情報を感知し、VS.の建築データや独自のアルゴリズムと連動しながら、リアルタイムで3D映像と音楽が変化する。広大な地下空間と圧巻のパフォーマンスの対峙と融合を目の当たりにした、すべての取材陣が息を呑んでいた。

大阪から世界へ向けたイノベーションを体感せよ

大中小の3つの展示室とそれらをつなぐホワイエのそれぞれの壁にグラフィックが映し出され、大型スピーカーからは地鳴りのような低音と軽快なクリック音が空間を満たしていく。アートとテクノロジーが対峙することで生まれるイノベーションを、世代も分野も異なる安藤氏と真鍋氏が見事に表現してみせたのだ。本展示は10月14日(月・祝)までとなるので、お見逃しなきよう。
ターミナルエリアの再開発といえば、高級ブランドや人気の飲食店がひしめく巨大高層ビルばかりで、どうしてもエクスクルーシブな雰囲気が先行していた。一方、緑豊かな都市公園の地下にできたVS.は、インクルーシブで開かれた空間となっているのだ。大阪という地域性と歴史性に加え、イノベーティブであることを前提にキュレーションされた展示が控えており、今後も文化を発信する装置としての役割を担うことだろう。
VS.
住所|大阪府大阪市北区大深町6番86号 グラングリーン大阪 うめきた公園 ノースパーク
問い合わせ先

VS.
https://vsvs.jp/

                      
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