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2020年9月7日
ファン・ゴッホミュージアムの取締役が語る、アートとBE@RBRICKの未来|MEDICOM TOY
MEDICOM TOY|メディコム・トイ
業務執行取締役 エイドリアン・ダンツェルマン氏インタビュー
Text by SHINNO Kunihiko|Edit by TOMIYAMA eizaburo
美術館の現場から見たアートトイの世界
後期印象派を代表するオランダの画家、フィンセント・ファン・ゴッホ(1853年3月30日 - 1890年7月29日)。パリ滞在時に出会った浮世絵版画に多大な影響を受け、熱心なコレクターでもあったゴッホは、日本でも高い知名度と人気を誇るアーティストのひとりである。
昨年、メディコム・トイから発売されたBE@RBRICK 「Van Gogh Museum」Sunflowers 100% & 400% / 1000%は、オランダ・アムステルダムにあるファン・ゴッホミュージアムとのコラボレーションにより生まれたプロダクト。代表作「ひまわり(Sunflowers)」をウォータープリントという最新技術を使って昇華したアートトイだ。
今回はBE@RBRICK「Van Gogh Museum」Self-Portrait with Grey Felt Hat 100% & 400% / 1000%のリリース決定(2020年12月発売予定)を記念して、同ミュージアムの業務執行取締役であるエイドリアン・ダンツェルマン(Adriaan Dönszelmann) 氏に、こうしたアートトイの盛り上がりを現場ではどう捉えているのか話をうかがった。
ゴッホ作品を世界で最も多く収蔵する美術館
──まずは日本のファンに向けて、ファン・ゴッホミュージアムとはどういう美術館なのかご紹介ください。
200点以上の絵画、約500点のスケッチ、ほぼすべての彼の書簡をもって、フィンセント・ファン・ゴッホの作品を世界で最も多く収蔵する美術館です。毎年210万人を越える来館者を全世界から迎え、また、フェイスブック、ツイッター、インスタグラム、WeChat、YouTube、LinkedIn及び当館ウェブサイトを通して、数百万人以上の目に届いております。当ファン・ゴッホミュージアムはソーシャルメディアにおいて世界で最も人を惹きつける美術館です。
──収蔵されているゴッホの作品中で、美術館を訪れる方に人気の高いものはどの作品でしょうか。
おそらく最もよく知られている絵画は「アーモンドの花咲く枝(Almond Blossom;1890)」、「ひまわり(Sunflowers;1889)」そして「ファン・ゴッホの寝室(The Bedroom;1888)」だと思いますが、当ゴッホ美術館は「じゃがいもを食べる人々(Potato Eaters;1885)」や、有名な彼自身の自画像といったファン・ゴッホの名作も多数所蔵しています。フィンセント・ファン・ゴッホが、彼の甥の誕生を祝うために「アーモンドの花咲く枝」を制作したことはご存じでしたか?
「アーモンドの花咲く枝(Almond Blossom;Saint-Rémy-de-Provence, February 1890)」
──今年はゴッホ没後130年ですが、記念の企画展は開催されていますか。
7月28日に当美術館はフィンセント・ファン・ゴッホが最後の作品である「木の根と幹(Tree Roots;1890) 」を描いたとされる場所を、フランスのオーベルシュルオワーズ(Auvers-sur-Oise)で発見したというニュースを発表しました。
ファン・ゴッホ研究所のバウター・バンデアベーン(Wouter van der Veer)研究部長は、没後130周年を目前にこの場所を期せずして発見しました。発見自体の有用性は裏付けに乏しいですが、この発見は歴史家にも一般市民にも、ゴッホという画家の全作品と彼の人生の最後の研究に影響をもたらします。絵画「木の根と幹」は、アムステルダムの当ゴッホ美術館に展示されています。
当美術館は、フィンセント・ファン・ゴッホの書簡の特別展示会で今年を締めくくります。最多のフィンセント・ファン・ゴッホの書簡は、2020年10月9日より当美術館にて公開されます。今秋の展示会において、当美術館はフィンセント・ファン・ゴッホが才能ある芸術家である傍ら、どれほど熱心な書簡家であったのかについて検証していきます。最低でも875点もの文書(フィンセント・ファン・ゴッホの完全な往復書簡は930点の手紙と関連資料で構成される)を持つ当美術館は、世界最大のフィンセント・ファン・ゴッホの書簡の所蔵場所ですが、これらの書簡は壊れやすいため一般公開されることがめったにありません。
ちなみに当美術館は2023年には当館の50周年を記念いたします。
パートナーに求めるのは「語り伝える能力」
──BE@RBRICKについてもお聞かせください。メディコム・トイからゴッホの作品を全身にプリントしたBE@RBRICKを作りたいというオファーに対して、最初どのように思われたのでしょうか。
もちろん、これは様々な要因の組み合わせによりますが、メディコム・トイさまからご提案を頂いた際は興奮しました。
当美術館がパートナーと提携する最大の理由のひとつは、「語り伝える能力」にあります。当美術館は常にフィンセント・ファン・ゴッホの物語を伝える新たな方法を探していますが、「ひまわり(Sunflowers)」のBE@RBRICKは当美術館がこの物語をどう解釈し、どのように一般の方々に理解していただけるかを示す完璧な実例になりました。このコラボレーションによって当美術館はまったく新しい客層に魅力を伝え、フィンセント・ファン・ゴッホの刺激的な世界に誘うことができました。
製品の品質は弊社にとって非常に重要であり、BE@RBRICKは世界中に多数のコレクターがいることで有名です。このコラボレーションにより、当美術館はフィンセント・ファン・ゴッホのファンだけでなく、唯一無二のBE@RBRICKを収集する大きなファン層にも影響を広げることができます。
──第一弾は「Sunflowers」でしたが、ぜひこちらのオリジナルの絵の解説をお願いいたします。
フィンセント・ファン・ゴッホは花瓶のひまわりを5点描いており、当ゴッホ美術館はこのうちの1点を所有しています。彼は1888年及び1889年にフランス南部のアルルでそれらの作品を描きました。言うまでもなく、当館はゴッホ美術館収蔵品の一部であるこの1点を使用しました。この作品はアムステルダムのゴッホ美術館に来館する際には絶対的に重要な作品であり、弊社ウェブサイト上では筆跡に至るまで拡大してご鑑賞いただけます。前回のコラボレーションを購入された方々におかれましては、BE@RBRICKの形状で毎日この絵画をお楽しみいただけていると思います。
「ひまわり(Sunflowers;Arles, January 1889)」
BE@RBRICK 「Van Gogh Museum」Sunflowers 100% & 400% / 1000%
2019年12月発売(※完売につき現在は発売されていません)
2019年12月発売(※完売につき現在は発売されていません)
(R) Van Gogh Museum, ©️ VGME B.V.
BE@RBRICK TM & ©️ 2001-2020 MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.
BE@RBRICK TM & ©️ 2001-2020 MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.
第一弾となった「ひまわり」のBE@RBRICKは即日完売
──監修する際、特にこだわったところはどこでしょうか。
当方で重点的に取り組む最も大切なことの1つは色です。ひまわりに使用されている色は非常に特殊な黄色で、この絵画における細部の量は驚くべきものです。これらのすべての細かな部分がこの絵画に見合うことはとても重要なことです。
──完成したサンプルをご覧になったときの感想をお聞かせください。
最終サンプルはとても素晴らしかったです。ひまわりの絵があしらわれたパッケージから始まり、ひとたび開封を始めると、「ひまわり(Sunflowers;1889)」が目の前にあると実感できます。
──このBE@RBRICKはファン・ゴッホミュージアムでも販売されたそうですが、反響はいかがでしたか。
コラボレーションしたプロダクトに皆さんがどのような反応を示すかを見ることがいつも楽しみですが、BE@RBRICKは即日完売となりました。今回のパートナーシップで、当方は新たな観客層に届き、フィンセント・ファン・ゴッホの生涯と芸術について伝えることができました。
第二弾は「灰色のフェルト帽の自画像」のBE@RBRICK
──12月には第2弾となるBE@RBRICK「Van Gogh Museum」Self-Portrait with Grey Felt Hat 100% & 400% / 1000%が発売されます。いくつかある自画像のひとつですが、こちらの絵も「Sunflowers」同様に解説をお願いいたします。
「灰色のフェルト帽の自画像(Self-Portrait with Grey Felt;1887)」は、本当の意味での色の実験です。フィンセント・ファン・ゴッホはこの自画像を彼が約2年間パリに居た1887〜88年の冬に描きました。彼は点描画家たちの技法を研究し、自分独自の方法でそれを応用したことはこの作品から明らかです。彼は様々な方向に短い縞の線を描いています。それらの線が彼の頭の外郭に沿うことで、ある種の後光を形成しています。この絵はパリでのフィンセント・ファン・ゴッホの大胆な色の実験のひとつでもあります。彼は対になる色をそれぞれ他方の横に長い筆跡で置いています。背景に青とオレンジ、そして髭と両目には赤と緑というように。色がもう一方の色を強めています。赤色の顔料が弱まっているので、紫色の筆の線は今では青くなり、それによって、黄色とのコントラストにおいては色の力強さが弱まっています。
「灰色のフェルト帽の自画像Vinent van Gogh(1853-1890), Paris, September-October 1887」
BE@RBRICK「Van Gogh Museum」Self-Portrait with Grey Felt Hat 100% & 400% / 1000%
サイズ|各全高約70mm (100%) / 280mm (400%) / 700mm (1000%)
価格|100% & 400% 1万3000円(税別) / 1000% 4万8000円
販売方法|2020年8月24日(月)00:00 ~ 9月10日(木)23:59までメディコム・トイ直営各店舗、及びメディコム・トイ運営オンラインストア各店、他一部店舗にて受注を募ります。
発売日| 2020年12月発売・発送予定
※監修中のサンプルを撮影しております。発売商品とは一部異なる場合がございます。
サイズ|各全高約70mm (100%) / 280mm (400%) / 700mm (1000%)
価格|100% & 400% 1万3000円(税別) / 1000% 4万8000円
販売方法|2020年8月24日(月)00:00 ~ 9月10日(木)23:59までメディコム・トイ直営各店舗、及びメディコム・トイ運営オンラインストア各店、他一部店舗にて受注を募ります。
発売日| 2020年12月発売・発送予定
※監修中のサンプルを撮影しております。発売商品とは一部異なる場合がございます。
(R) Van Gogh Museum, ©️ VGME B.V.
BE@RBRICK TM & ©️ 2001-2020 MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.
BE@RBRICK TM & ©️ 2001-2020 MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.
──自画像をBE@RBRICKに落とし込むことは非常に難易度が高いように思われますが、製作過程や完成品をご覧になった感想をお願いいたします。
2019年に発売されたひまわり版と比較すると、確かにまったく異なります。しかし、私たちはメディコム・トイならワクワクする新しいBE@RBRICKを創ってくれると確信を持っておりました。自画像(灰色のフェルト帽の自画像)をあしらった新しいバージョンは非常に素晴らしく、さらに多くの人々をインスパイアするでしょう。
アートトイは自宅で名作を楽しむことができる
──近年、美術界においてBE@RBRICKに代表されるアートトイという新たなジャンルが成長を遂げていることについて、どのように思われていますか。
皆さんに芸術を十分に伝えるための素晴らしい方法です。この方法はまったく新しいジャンルのコレクターに魅力を発信し、詩やフィンセント・ファン・ゴッホが描いた絵画と同じような方法で、皆さんをインスパイアします。皆さんが芸術とつながったと感じる瞬間は素晴らしいです。
メディコム・トイは素晴らしいパートナーであり、BE@RBRICKのような強力なブランドをもって、当美術館が多くの様々な国でフィンセント・ファン・ゴッホの生涯と芸術に関するストーリーを伝える手助けになりました。実際にアムステルダムのゴッホ美術館に来館することができなくても、当方とメディコム・トイとのパートナーシップによる、BE@RBRICK × Van Gogh Museum版のおかげで、多くの方々が自宅でフィンセント・ファン・ゴッホの名作を楽しむことができます。
──エイドリアンさんご自身にとって、ゴッホの魅力とはどういうところにあるとお考えですか。
フィンセント・ファン・ゴッホはあらゆる年代、国籍、性別を惹き付ける非常に神秘的な存在です。今日でもアクセス可能なすべての書簡のおかげで、私たちはフィンセント・ファン・ゴッホの生涯、家族、彼の作品について多くのことを知っています。これは大変価値のあることで、それを通して、皆さんはそれぞれの人生や立場において、共鳴感を得ることができ、今日においてもフィンセント・ファン・ゴッホを唯一無二の人々に影響を与える存在にしています。今秋開催される当館の展示会「ファン・ゴッホの手紙」でこの書簡をお見せできることを当美術館は非常に楽しみにしております。
エイドリアン氏がBE@RBRICKにしてみたいゴッホ作品2点
──最後に、個人的にBE@RBRICKになったら見てみたいゴッホの作品を教えてください。
ひとつは、「木の根と幹(Tree Roots;1890)」です。当美術館は、フィンセント・ファン・ゴッホがこの作品を書いた場所を最近発見しました。実はこの作品は未完成で、どこか抽象的な印象です。この絵はフィンセント・ファン・ゴッホが亡くなる前に取り掛かった最後の作品です。
「木の根と幹(Tree Roots;Auvers-sur-Oise, July 1890)」
そして、「ひなげしと蝶(Butterflies and Poppies ;1889) 」。この作品は恐らくあまり知られていませんが、間違いなくフィンセント・ファン・ゴッホの偉大な作品です。彼がこの作品を描いた時、まずは花と蝶を描き、その後に青い背景を描き足しました。これは青い背景の太い筆跡が、花の緑色の茎を時折覆っていることから明らかです。フィンセント・ファン・ゴッホはカンバスの数箇所に色をつけず、布地がそのまま見えるように残しています。
彼は様々な緑の影を使い、茎、葉、花弁のもつれに奥行きを与えています。フィンセント・ファン・ゴッホは、上手に繊細なひなげしの生命力を捉えています。つぼみの中にはまさに開花しようとしているものもあります。
「ひなげしと蝶(Butterflies and Poppies ;Saint-Remy-de-Provence, May-June 1889) 」
問い合わせ先
メディコム・トイ ユーザーサポート
Tel.03-3460-7555
エイドリアン・ダンツェルマン/Adriaan Dönszelmann
ファン・ゴッホミュージアム 業務執行取締役
2011年7月1日に商務部長としてファン・ゴッホミュージアムに加わり、その2年後に業務執行取締役に任命される。現在は、職員(情報管理者及び専門業務)、事務局、品質及びビジネス管理、諸運営(警備、施設、HR、財務及びIT)、ファン・ゴッホミュージアム事業(購入と商品化、物流と計画立案、小売、電子商取引、BtoB及び新規ビジネス)、及び「フィンセント・ファン・ゴッホに出会う展」を担当。
ファン・ゴッホミュージアム 業務執行取締役
2011年7月1日に商務部長としてファン・ゴッホミュージアムに加わり、その2年後に業務執行取締役に任命される。現在は、職員(情報管理者及び専門業務)、事務局、品質及びビジネス管理、諸運営(警備、施設、HR、財務及びIT)、ファン・ゴッホミュージアム事業(購入と商品化、物流と計画立案、小売、電子商取引、BtoB及び新規ビジネス)、及び「フィンセント・ファン・ゴッホに出会う展」を担当。