連載・TOKYO PREMIUM BAKERIES|第20回 ロワンモンターニュ
LOUNGE / EAT
2015年3月6日

連載・TOKYO PREMIUM BAKERIES|第20回 ロワンモンターニュ

第20回 Loin montagne|ロワンモンターニュ

「白神こだま酵母」 のちからで、ふっくらきめ細やかなパン

東京でほんとうに「上質でおいしいパン」を提供しているパン屋さんを紹介する連載も第20回となりました。今回はJR王子駅から徒歩5分、北区区役所近くの『ロワンモンターニュ』。「白神こだま酵母」を使って遠山 広シェフが焼くパンは、生地がきめ細かく、香りも華やかです。

取材・文=戸川フユキ写真=高田みづほ

大いなる自然の恵み それがパンなり

『ロワンモンターニュ』のパンには、「白神こだま酵母」という野生酵母が使われている。この酵母は、1997年に世界自然遺産である秋田県“白神山地”のブナ原生林から、県の菌研究家 小玉健吉工学博士(故人)と県の総合食品研究所によって発見された菌を、分離・選抜した「製パン用野生酵母」である。

一般の酵母に比べ発酵力が持続するため、添加物をくわえる必要がなく、乾燥や低温にも強い。またトレハロース(オリゴ糖の一種)を大量にたくわえるため、華やかな香りと、ほんのりとした自然な甘さの、きめ細やかなパンが焼ける。現在、パン以外の食品にも活用が期待され、研究が進む期待の酵母だ。

遠山 広シェフは、横浜松坂屋、ルノートルなどのベーカリー勤務ののち、スーパーのインストアベーカリーの技術統括とキャリアを重ね、2001年に独立して地元の王子に『ロワンモンターニュ』を開いた。自分の店をはじめるときは、発酵力のすばらしい「白神こだま酵母」のパンを出したいと熱望していた遠山シェフ。しかし発見されて間もないこの酵母は、県内企業優先のため秋田県外での使用が許されておらず、許可が下りた2001年を待ってのオープンとなった。ちなみに氏は、「白神こだま酵母マイスター認定第1号」である。

Loin montagne|ロワンモンターニュ|王子 02

Loin montagne|ロワンモンターニュ|王子 03

もうひとつのこだわりは、「国産小麦(北海道産)」を使うこと。以前の「国産小麦」は、生地に粘りを生むグルテン(タンパク質)が少なく、パンには向いていなかったが、近年では品種改良によって格段に小麦の質が向上し、「白神こだま酵母」との相性もよいそうだ。また砂糖は奄美大島産の「花見糖」、塩は室戸の「海洋深層水塩」と、シェフが舌で選んだ「自然の恵み」溢れる素朴な材料を使用している。

トップ写真は人気の「フィグ&クランベリー」。ドライフルーツのいちじく、クランベリー、クルミがたっぷりと入り、ミネラルも豊富だ。マスカルポーネチーズを載せて食べるのが、シェフのお気に入りだそうだ。また「何も入らない食パン」というユニークな名前のパンは、卵、牛乳、バターなどの乳製品と油脂を使わず、北海道産小麦2種のブレンドと、米粉、「白神こだま酵母」で焼きあげる。卵などを使わなくても酵母の力で驚くほどふっくらと弾力があり、カロリー制限がある方や、アレルギーの子どもにもよろこばれている。

Loin montagne|ロワンモンターニュ|王子 05

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遠山シェフにパンの原風景をうかがったところ、「小学生のときに担任の先生が、焼きたての長い3斤角食パンを、クラスのみんなに振る舞ってくれたことがあったんです。焼きたての大きなパンを手でむしりながら食べた。あれはおいしかった。……なかなか粋なことをする先生ですよね」と、貴重な体験を話してくれた。

もともと「ものづくり」が大好きだった遠山シェフ。「職人として培った技術を、まわりのひとによろこんでもらえたら一番うれしい」と、生まれ育った王子の街で今日もせっせとパンを焼いている。そのメニューは120~130種類と幅広く、棚にならんだパンはどれも工夫がほどこされ、シェフの実力とサービス精神がうかがえる。

「白神こだま酵母」のパンは、焼きあがりの甘い香りが本当にすばらしい。わざわざ電車を乗り継いででも訪れて、焼きたての独特な香りを体験してみてはいかがだろうか。

Loin montagne|ロワンモンターニュ|王子 10

Loin montagne
『ロワンモンターニュ』

東京都北区王子本町1-15-20
高木ビル1F
Tel. 03-3900-7676
営業時間|9:00~18:30
日曜・祝日・第2・第4土曜休
JR京浜東北線・東京メトロ南北線、王子駅下車徒歩5分
http://www.loin-montagne.com/

           
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