CASE-REAL|豊島(てしま)に「海のレストラン」オープン
CASE-REAL|ケース・リアル
ケース・リアルが設計した“島の食の拠点”を目指すレストラン
瀬戸内海の豊島(てしま)に「海のレストラン」オープン
今夏7月に瀬戸内海に浮かぶ豊島(てしま)の海辺に「海のレストラン」がオープン。ケース・リアルの二俣公一氏が設計を担当し、松澤 剛氏との協働で進められたプロジェクトは、構造設計を大野博史(オーノジャパン)、サイン計画を尾原史和氏(スープデザイン)、家具製作をE&Yが担当している。話題の「海のレストラン」をケース・リアルが解説する。
Text by CASE-REAL
食材の豊かな島、豊島で目指すレストラン
今年で2回目を迎えた瀬戸内国際芸術祭。その開催エリアの一つとなっている豊島(てしま)は、瀬戸内海の豊かな恵みを受けて、昔から酪農や稲作が盛んだ。一時は過疎化で人手が不足し荒れていた伝統的な棚田も、近年では多くのボランティアの手によってそのうるおいが取り戻されつつある。
この「海のレストラン」は、こういった島の環境を背景に、芸術祭をきっかけに急激に増えた国内外からの訪問者や島の人びとへ、充実した食を提供する拠点となることを目指している。
また、建物にはレストランとしての機能のほか、さまざまなひとが利用できる公衆キッチンも備えられている。食を主体としたコミュニケーションがこの場所で生まれ、あらたな島の文化を育んでゆくというビジョンをもって計画されている。
赤茶色の基礎部分は、青い海原や空との対比となる存在
海岸線に沿ってふたつのアーチが連なる形をした全長約40メートルのボリュームは、屋根や内外の壁のほとんどが軽快な波板で覆われていて、海側の大部分をテラスとして開放している。このテラスは、目の前に広がる素晴らしい海原の景色を取り込むと同時に、レストランや厨房、公衆キッチンなどの各機能を繋ぐハブとしてこの建築の大切な要素となっている。
テラス部分の屋根には透過性のある素材が用いられ、さんさんと降り注ぐ太陽光はおなじアーチ屋根の下でも内外の空間の趣をまったく異なるものにしている。また、高波による浸水対策として立ち上げられた建築の基礎部分には、大地がそのまま隆起したかのような赤茶色の着色コンクリートを使用し、この建築の先につづく青い海原や空への対比的な存在に。圧倒的な瀬戸内の自然の恵みや荒々しさを受け入れながら、島の一部として共存してゆく建築を目指している。
「海のレストラン」
住所|香川県小豆郡土庄町家浦
設計|ケース・リアル(二俣公一、有川 靖)
プロジェクト恊働|松澤 剛
構造設計|オーノJAPAN 大野博史
設計協力・施工|ナイカイアーキット
照明計画|ウシオスペックス福岡 佐藤政章
サイン計画|スープデザイン 尾原史和
家具製作|E&Y
撮影|水崎浩志
http://www.chc-co.com/umi/
二俣公一|FUTATSUMATA Koichi
デザイナー。インテリア・建築デザインを軸とする「ケース・リアル (CASE-REAL)」と、プロダクト・オブジェクトデザインに特化する「二俣スタジオ (KOICHI FUTATSUMATA STUDIO)」両主宰。機能を重視しつつも独自の感性から生まれる造形感によって、インテリア・建築・家具・プロダクトと多岐に渡るデザインを手がける。主なインテリア・建築作品に「海のレストラン (香川・豊島/2013)」「弦巻の家 (東京/2013)」「MINORITYREV HIRAO (福岡/2008)」「鈴懸本店 (福岡/2008)」など。プロダクト作品にサンフランシスコ近代美術館のパーマネントコレクションとなっている「22 (EK JAPAN/2009)」をはじめ、「IN THE SKY (E&Y/2010)」「HAMMOCK(E&Y/2009)」「CONCENTS(1998)」などがある。
(CASE-REAL: http://www.casereal.com/, KOICHI FUTATSUMATA STUDIO: http://www.futatsumata.com/)