中目黒・蒼樂(そら)は、ほど良い緊張感がありながら気軽に食べられる粋な店|EAT
EAT|居心地良いも美味しさのひとつ
中目黒・蒼樂(そら)は、ほど良い緊張感が
ありながら気軽に食べられる粋な店 (1)
今宵の一献。気の置けない友人と水入らずだが、そこいらの居酒屋では芸がない。訪れる高揚感と、和める雰囲気。その相反する要素をほどよい塩梅(あんばい)で保つ店に合うと、もう、このうえなく楽しくなる。
Text by NAGASAKI Yoshitsugu
一品料理に加えて、家食的な料理が魅力
中目黒という街の不思議さは、都心でもなく郊外でもなく、地元でもない。なんとも言えない居心地の良さがあるので、ついつい足が向いてしまうという街であることは確かだ。
都心の喧騒でもなく、地元のラフさでもない中間地点としての魅力。ここには多くの“食”の人気店が四方八方へと広がっているが、どこもちょっと落ち着きがない(よく言えば賑わっている)。ゆっくりと話をしながら、食べ飲む、にぴったりの店がそう多くはないと感じていた。
そんな中、とある友人から、ならばいい店を紹介しようと誘われて向かったのが、開店まもない「蒼樂」という和食店。山手通りから一本裏手。いきなり静かな裏通りにその店はある。場所としてはまさに隠れ家。
「お、ここはかつて元旦という和食店があった場所ではないか!」と昔の記憶が蘇る。
店のしつらえは、そう大きくは変わっていないが、どことなくより落ち着いた感じなっている。目印となる提灯には見事な書で店名が書かれている。聞けば、注目の女性書家、川尾朋子さんの手になるものだという。お見事!
さて、店内に入ると大きなカウンターが目につく。片側は障子で区切られた小上がり、プライベートでも会食でも使いやすい構造になっている。「さて、男二人、カウンターでゆっくり楽しみますか」。
Page02. 料亭仕込みの技をカジュアルに生かす
EAT|居心地良いも美味しさのひとつ
中目黒・蒼樂(そら)は、ほど良い緊張感がありながら
気軽に食べられる粋な店 (2)
料亭仕込みの技をカジュアルに生かす
目の前で料理を小気味良くさばくのは、料理長の小川貴史氏。純和食の料亭で修行を重ねてきたという筋金入り。
「美味しいものをリラックスして召し上がっていただきたい」。そうおっしゃるのだが、突き出しからなかなか凝った料理が並ぶ。だが、メニューを見れば、生姜焼きだのだし巻き卵だの、ポテトサラダだの、ちょっと定食的な料理もラインアップされている。
とは言え、口上にもある通り、すべての食材は、料理長みずから厳選している。
「特に野菜類には自信があります」。との言葉通り、ピロール農法で作られた味の濃い江戸野菜。江戸時代には将軍家にも上納されていたと言われる。以外にも、プロの手による熟成肉、天然鮮魚など、基本的には素材を活かしながらの料理が楽しめるのだ。
そこに、料理長がこだわって選んだという、全国の地酒、焼酎が並び、自家製の果樹酒も揃っているから、つまみを片手に酒主体に楽しむという使い方もできるだろう。
本格的でありながら、定食的メニュー(しかし素材は特級)も同時に楽しめるというのは、中目黒の中間地点的、居心地の良さをまさに体現していると言えるだろうし、もちろん価格的にも十分に納得できる。
いい店を見つけたものだ。
さて、次回は誰と来ようか、と隣の友人をチラ見にしつつ、思案する宵だった。
蒼樂 sora
東京都目黒区東山1-8-6 サンロイヤル東山109
Tel.03-6886-7954
定休日:日曜日