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2015年3月25日
BOOK|高野山開創1200年目の春に贈る写真集『一山』
BOOK|5年間にわたって撮影した、美しさ極まる写真集
古賀絵里子写真集『一山』
今年、高野山は弘法大師空海の手で密教の道場が開かれてから1200年目を迎える。その記念すべき年の春に、若手写真家の古賀絵里子氏が、5年間にわたって高野山を撮影した写真集『一山(いっさん)』が発売された。
Text by ENOMOTO Kozue(OPENERS)
情感溢れる自然、高野山に流れる静かな日常を収めた一冊
819年ごろ、弘法大師空海が修行の場として開いた高野山は、日本仏教の聖地である。このたび発売となった写真集『一山』は、新進気鋭の若手写真家である古賀絵里子氏が、5年間にわたって高野山を撮影した渾身の一冊だ。
荘厳なたたずまいの寺院や祈りの山道、澄みきった大気、そして情感溢れる四季の自然……。高野山に流れる静かな日常と、そこに暮らす人びとの体温を感じられる美しく脈打つような写真100点を収載している。
「結局、私にとって“写真”以前に“人”があるのだろう。人として少しでも良くありたい。そう願う心が、自分に欠けているものを埋めるために、ある場所へ、ある人の元へ通わせるのだと思う。求めるものが目指す先にあって、対象の懐が深いほどのめり込んでいける。それは信仰とおなじような力かもしれない」
高野山の奥へと女性写真家としてはじめてカメラを向け、その懐に抱かれながら彼女が感じたもののすべてが、写真一点一点に力強い生命感をあたえている。
表紙は全部で3色。桜の花びらを思わせる「さくら」、清浄な雪を思わせる「ゆき」、そして静かな夕闇を思わせるグレーの「うすずみ」。高野山の美しい四季、そこに暮らす人びとの息づかいまで写し込んだ写真は、見ている者の心に清らかな光を届けてくれることだろう。