連載|体感する読書~THE READING EXPERIENCE~|第8回「21世紀、宇宙の旅」
連載|THE READING EXPERIENCE
今月の3冊|Dec. 2013
第8回「Space Odyssey~21世紀、宇宙の旅~」
人生を左右する本との出合い。それは一瞬の出来事かも知れません。そんな特別な1冊を求めて世界を駆け巡るブックハンター、twelvebooksの濱中敦史さんがセレクトした写真集・作品集を3冊ご紹介します。見てよし、触ってよし、飾ってよし。ようこそ、体感する本の世界へ。
宇宙、それはまだ見ぬ未知の世界。科学技術の進化によって、宇宙との距離はかつてないほど縮まったように思える。が、ほとんどの人にとって宇宙旅行など夢のまた夢。宇宙飛行士の持ち帰ってくる“土産話”が唯一の便りだ。だからこそ、私たちは想像力をかき立てられるのだろう。あの空の上にはどんな世界が広がっているのだろうと。ここでは、そんな未知の世界をつまびらかにする3冊をご覧に入れよう。
Selected by HAMANAKA Atsushi (twelvebooks)
Photographs by JAMANDFIXText by TANAKA Junko (OPENERS)
地球のすぐ外側をまわる火星。太陽系では珍しく四季の変化が見られることから、「もっとも地球に似た惑星」とされている。まだ解明されていない点も多く、これまでに多数の探査機が火星に送り込まれてきた。2005年に打ち上げられた「マーズ・リコネサンス・オービター(MRO)」もそんなひとつ。機体に搭載された高解像度カメラ「HiRISE」が、火星の複雑で起伏に富んだ地表を捉えては、地球に届けてくれている。『MARS』はその貴重な画像を、「HiRISE」の目線そのままに収録した1冊。これを手に取れば、火星の“すべて”が見えてくる。
『Mars』
出版社|EDITIONS XAVIER BARRAL(exb.fr/en/)
サイズ|357 x 295 mm / ダストカバー付きハードカバー
ページ数|272ページ
価格|1万2600円
販売先|青幻舎
2013年刊
ドイツ生まれの写真家、トーマス・ルフは無類の天体好きだ。宇宙飛行士になるか、写真家になるか本気で悩んだほどに。大判のポートレート写真で名を馳せた彼は、1989年に大きな転換期を迎える。写真を撮ることを止めたのだ。そのきっかけとなったのが天体写真だった。夜空に向かって何度シャッターを切っても、思うような結果が得られないことを痛感した彼は、写真を見つけ出すことに専念するようになる。向かった先はチリのアンデス地方に位置する「ヨーロッパ南天天文台(EOS)」。そこの望遠鏡で撮影された記録写真のなかから、イメージに合ったものを見つけ出してプリントし、まとめたものが『Sterne』である。
『Sterne』
作者|トーマス・ルフ(Thomas Ruff)
出版社|MÖREL BOOKS(www.morelbooks.com)
サイズ|370 x 250 mm / ハードカバー
ページ数|160ページ
価格|8820円
販売先|twelvebooks 全国取扱店舗
2013年刊
※1000部限定発行
30年以上のキャリアを持つイギリス人写真家、ポール・グラハム。その間、ひとつの時代が終わりを告げた。デジタルカメラの普及によって、“20世紀最大の記録メディア”フィルムがすっかり影を潜めてしまったのだ。「コダカラー」「フジカラー」「トライX」「コダクローム」「エクタカラー」など、写真家にとって馴染み深いこれらのフィルムも、いまや衰退の一途をたどっている。あるとき、次の展覧会のために過去の作品を整理していたグラハムは、彼の作品作りを影で支えていたフィルムに夢中になっていく。消えゆくものを慈しむように、ひとつひとつ丁寧に拡大スキャン。あらわれたのは、これまで見たことのなかったフィルムの中の“小宇宙”だった。これは遺影か、あらたな可能性か? その目で確かめてみてほしい。
『Films』
作者|ポール・グラハム(Paul Graham)
出版社|MACK(www.mackbooks.co.uk)
サイズ|230 x 300 mm / ハードカバー
ページ数|64ページ
価格|5460円
販売先|twelvebooks 全国取扱店舗
2011年刊
濱中敦史|HAMANAKA Atsushi
twelvebooks代表。2010年3月、現代写真を中心に、独自のスタイルをもつ出版社やアーティストの活動をプロモーションするプラットフォームとして、「twelvebooks」を設立。洋書や洋雑誌の国内流通を手がけるほか、写真展の企画や選書、ディレクションまで、書籍やイメージに関わる活動を展開する。www.twelve-books.com