ラットホールギャラリー|「Roni Horn」開催
RAT HOLE GALLERY|ラットホールギャラリー
「Roni Horn」開催
言葉と出会い、そして対峙することからうまれたミニマリズム
ラットホールギャラリーにて、2010年9月7日から12月5日まで(月曜休)ロニ・ホーンの展覧会「Roni Horn」が開催されている。今回が、世界中で活動するロニ・ホーンの立体作品とドローイングを日本で紹介する初の機会となる。
Text by OPENERS
エミリー・ディッキンソン×ロニ・ホーン
「Roni Horn」では、「White Dickinson」シリーズから4点の立体作品と、最新シリーズ「Else」からの1点をふくむ3点のドローイングが展示されている。ラットホールギャラリーで開催される展覧会としては、2008年の「This is Me, This is You」につづき2度目となる。
ロニ・ホーンは、最近ではブレゲンツ現代美術館(オーストリア)で個展「Well and Truly」が開催され、昨年
2月から今年6月にわたっては、ホーンの作品を通覧する展覧会「Roni Horn aka Roni Horn」がテート・
ミュージアム(ロンドン)、ランベルト・コレクション(アヴィニョン)、ホイットニー美術館(ニューヨーク)、ボストン現代美術館(ボストン)の4館で開催されるなど、世界を舞台として活動している作家だが、本展覧会が日本ではじめて彼女の立体作品とドローイングを紹介する機会となる。
本展の「White Dickinson」シリーズは、ホーンが高い関心で接している文学および文学における言語への考察ともいえる。これまでも著名な作家や詩人から引用した言葉を作品に取りいれてきた。
本展覧会には19世紀アメリカの詩人エミリー・ディッキンソンの言葉を作品に落とし込んだ立体作品、ドローイングが展示される。慢性病を患っていたディッキンソンの生涯は隠遁生活に終始していたが、そのあいだに書かれた何千もの友人や知人に宛てた手紙が、彼女の死後、いち文学として高い評価を受けるほどになった。
ディッキンソンの詩の世界に魅了されてきたホーンは、その手紙から引用したテキストをそれぞれ白のプラスチックに鋳造し、直方体のアルミニウム棒に埋め込んでいった。言葉を形態に変えること、それは言葉に物理的な要素を付与できるかという実験と、一方で言葉にふれることによって喚起されるイメージ。その視覚と暗黙の両極を研究する目的で作品がつくられている。
「見ることと読むことの交配、そして第三の要素としてのあなた(観者)とあわせてもうひとつの対になること(pairing)。これが2つの行為に挟まれるもう1つの重要な経験である」とホーンは語る。その言葉が直接、彼女のミニマルな作品に代わり、観者が言葉とのあらたな関係性を生み出す契機をつくり出す。
"pairing"。そのことは立体作品にたいする態度だけでなく、ホーンのドローイング作品や写真作品にも共通してあらわれている彼女自身の真理となっている。
また本展では、3点のドローイングも展示されている。サイズや制作年はそれぞれちがうものの、言葉や文字や記号が細かに描かれたふたつのドローイング(PLATES)をカットアップし、慎重に貼りあわせることを手法にしている。
言語と物質を複雑に交差させながら、対になること、二重であること、または反復をつうじたドローイングや立体作品は、観者に視覚的、感情的、そして知的な経験をもたらすだろう。
Roni Horn|ロニ・ホーン
1955年、ニューヨーク生まれ、ニューヨーク在住。ロードアイランド・スクール・オブ・デザインBFA、イェール大学MFA取得。30年以上にわたり、ジェンダーやアイデンティティ、両性具有をめぐる問題に取り組みながら、視覚に訴えかけるだけでなく先ゆく物質との対立からうまれる知覚、感情、記憶にも重点をおき、立体作品や紙作品、写真や書籍など、形式にとらわれずさまざまな媒介を使用した作品を制作している。1975年から頻繁に訪れているアイスランドの孤島は、彼女の制作に強く影響を及ぼしている風景である