ジャン=ミシェル・オトニエルの個展がペロタン東京にて開催中|ART

View of the exhibition “夢路 – Dream Road” at Perrotin Tokyo, 2020 Photographer: Kei Okano Courtesy of Perrotin

LOUNGE / ART
2020年10月6日

ジャン=ミシェル・オトニエルの個展がペロタン東京にて開催中|ART

ART|«夢路» DREAM ROAD

自然への静観的アプローチが溢れる『«夢路» DREAM ROAD』

ジャン=ミシェル・オトニエル氏の個展『«夢路» DREAM ROAD』が、ペタロン東京にて開催されている。「菊」をテーマにした作品群は、観る者を彼のユニークな世界観へと誘う。期間は2020年11月7日(土)まで。

Text by WASEDA Kosaku(OPENERS)

立体作品や絵画作品で表わす“夢路”の世界観

アーティスト、ジャン=ミシェル・オトニエル氏の個展『«夢路» DREAM ROAD』
が開催中だ。彼の作品が日本で展示されるのは2012年に原美術館にて開催された回顧展以来。
『«夢路» DREAM ROAD』というタイトルには、西暦900年代の日本において編纂された和歌集である「古今和歌集」や「後撰和歌集」に登場する“夢路”という言葉から取られている。
               
この言葉には「夢をみる」と「愛する人と夢で逢う」という二重の意味がある。
オトニエル氏は自身の展覧会を『夢路』と名付け、空想と創造への「夢の路」であることを指し示している。
今回の個展において、彼は静観的なアプローチで自然の探求を続けてきた。抽象的で五感に訴えかける作品群には、その探求が表れている。作品のひとつ「Kiku」は、日本の古典文化における菊の象徴的意味にインスピレーションを得たものだ。
菊は薬草として8世紀に中国から日本へと伝来し、皇室や公家、武家が愛でたといわれる。またかかつて9月の開花期には、人々は夕方菊花を布で覆い露を集め、翌朝その濡れ布で身体を拭いて精神を浄化し、長寿を祈ったという。
この習慣に基づき、菊と露の組み合わせは和歌をはじめとする古典文学に繰り返し登場するモチーフとなっている。作中で表現されている菊花の“永遠の命”は、脆く儚い人生への対比表現として、愁いとともに美化されているのだ。
Jean-Michel OTHONIEL Kiku - Kakitsubatairo (Rabbit-ear iris color), 2020, Monotype on Japanese paper, 36 x 24 cm, 1/1 edition + 2 AP
© Jean-Michel Othoniel / JASPAR, Tokyo 2020 Photo: Claire Dorn / Courtesy of the artist and Perrotin
このインスタレーションでは、立体作品がカリグラフィーの絵画が聖像として展示されている。菊の花が咲く閉ざされた禁断の園を再現している。
その形状は有機的かつ曖昧。植物と“結び目”の中間にあり、愛や日本文化における“結び”の伝統美をも参考にしたという。
本作はオトニエル氏の立体作品に一貫した魅惑的な視覚体験を提供するとともに、鏡面の結び目の謎めいた形状は、観る者を誘惑する。
また大型のキャンバスを用いた絵画作品では、白金箔の層の上に黒インクで抽象的なイメージで描かれた巨大な花は、幻覚のような雰囲気を放つ。
         
暗く抽象的なカリグラフィーは、同じ「菊」をテーマにしたメインスペースのインスタレーションと相反し、純粋な抽象となっている。絵画作品「Kiku」は、彼が作家活動開始当初より実践の中核として続けるドローイングへの愛情を指し示す作品に仕上げられている。
そしてギャラリーのメインスペースに設置された台座上に展示されるのは、注意深く選ばれた色彩をまとう優雅な彫刻作品だ。
           
このインスタレーションはオトニエル氏が幾度となく訪問した「文京菊まつり」で見つけた展示を想起させる。また別室では、金箔に描かれた絵画作品3点が展示される。
ジャン=ミシェル・オトニエルのユニークな世界観が存分に体感できる個展だ。ぜひ足を運んでほしい。

«夢路» DREAM ROAD

  • 会期|2020年11月7日(土)まで(火曜~土曜のみ)
  • 時間|12:00~18:00
  • 会場|ペロタン東京
  • 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1F
  • チケット|完全予約制(購入はこちら
問い合わせ先

ペロタン東京
https://www.perrotin.com/