YCAM|開館10周年記念アーカイブ展示「YCAM ARCHIVES EXHIBITION」に注目
YCAM|山口情報芸術センター
山口県山口市「山口情報芸術センター」が今年開館10周年
アーカイブ展示「YCAM ARCHIVES EXHIBITION」
今年開館10周年を迎える「山口情報芸術センター[YCAM(ワイカム)]」の7月から大々的にスタートする10周年記念祭に向けた序章として、4月20日からアーカイブ展示「YCAM ARCHIVES EXHIBITION(ワイカム・アーカイブス・エキシビション)」がはじまった。今回の会場構成は、長坂 常/スキーマ建築計画が手がけている。
Text by KAJII Makoto (OPENERS)
YCAMというプラットフォームを通して生み出された芸術表現
さまざまな表現領域とメディアテクノロジーを結びつけ、世界的に評価の高いプロジェクトやアート作品を多数生み出し、メディアアートの歴史にその名を刻んできた山口情報芸術センター[YCAM]。開館10周年目の節目として、YCAMというプラットフォームを通して生み出された芸術表現は、その当時どのような意味をもち、また、現在はどう捉えることができるのかをテーマに、YCAMの代表的なプロジェクトを振り返る貴重なアーカイブ展がはじまった。
長坂 常氏による会場構成は、図書館、展示スペース、屋外へと繋がる建物の中核であるホワイエを会場に、内部がミニシアター、外部が立体的な吹き出しの形という、ひとを導き寄せる強いアイコンとなるシアターブースを6台設置。リラックスした環境で、作品が観られるよう、6つのうちふたつのブースはホワイエにある大階段の段差を利用した着座可能なブースに。ほかの4つは、スタンディング式だが、座ったり寝転がったりとくつろげる大きな畳の間を中央に配している。
「YCAM ARCHIVES EXHIBITION」の会場構成コンセプトとは?
今回のアーカイブ展示「YCAM ARCHIVES EXHIBITION」の会場コンセプトは、「外」と「内」。
長坂 常氏は、「近隣に迷惑をかけないところまで煙を届けるための煙突が、外からは銭湯の看板にもなり町のシンボルにもなっている風景を思い描いた」という。
「開館から10年。YCAMは、アーティストの考えを具現化できる人材と設備が充実しているラボを中心に、主にメディアアートという分野で世界的に高い評価を得ながら、多くの傑作を世に発信してきた。その10年を踏まえ、今からはじまる10年を、一方通行から双方向になるためにも、広い受け皿になりたい、つまり、世界のひとからも、山口の市民からも、もっと広く利用してもらいたいとYCAMは考えていた。そのきっかけとして、過去10年の豊かな作品の紹介を通して、改めてYCAMを知ってもらうために、アーカイブ展示を企画、我々はその空間の演出をおこなった」。
さらに、「内部に映像を流すために、投影角にそって作ったミニシアターが、結果的に外からは立体的なマンガの吹き出しの形をなすブースとなり、アーカイブ展示のシンボルとなるよう計画した。吹き出しがシンボル化した“外”は、その強い視覚的イメージ自体がメディアとなりYCAMから外部へと拡張され、『世界とYCAM』をつなげる。ミニシアターである“内”は、建物内の既存動線の交わるところに設置した畳の間や、椅子になりうる階段につづいていて、その場に集う利用者とリアルな接点をもち、『市民とYCAM』をつなげるのである」と解説する。
「YCAM ARCHIVES EXHIBITION」
会期|2013年6月16日(日)まで開催中
10:00~19:00 火曜休館
会場|山口情報芸術センター[YCAM]ホワイエ
入場料|無料
企画制作|山口情報芸術センター[YCAM]
会場構成|長坂 常 中田雅実/スキーマ建築計画
会場グラフィック|古屋貴広
www.ycam.jp
長坂 常/スキーマ建築計画
1971年生まれ。1998年東京藝術大学美術学部建築学科卒業。同年、スキーマ建築計画開設。2007年、上目黒にギャラリーとショップなどを共有するコラボレーションオフィス「HAPPA」を設立。
代表作:Sayama Flat(2008) 奥沢の家(2009)/ LLOVE(2010)/ Aesop Aoyama, HANARE (2011) / Today’ s Special、Papabubble Tokyo Daimaru、TAKEOKIKUCHI SHIBUYA (2012) など
http://schemata.jp