空間のアーティスト、クリスチャン・ボルタンスキーの大規模回顧展|ART
ART|現代フランスを代表する作家
クリスチャン・ボルタンスキー日本で過去最大規模の回顧展。
東京・六本木の国立新美術館で開催
現代のフランスを代表する作家、クリスチャン・ボルタンスキー(1944年~)の活動の全貌を振り返る『クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime』展が、2019年6月12日(水)~9月2日(月)まで、東京・六本木の国立新美術館にて開催される。期間中は、自らを「空間のアーティスト」と呼ぶ作家自身が展覧会場に合わせて制作したインスタレーションも公開される。
Text by OZAKI Sayaka
歴史と記憶、個人の存在の痕跡を浮かび上がらせる
アーティストの半世紀にわたる作品を通覧
クリスチャン・ボルタンスキーは、現代のフランスを代表するアーティストのひとり。
1960年代後半より短編映画を発表し、’70年代には写真を積極的に用いて、自己や他者の記憶にまつわる作品を制作し、注目を集めた。
’80年代に入ると、光を用いたインスタレーションで宗教的なテーマに取り組み、国際的な評価を獲得した。’86年に発表された《モニュメント》は、ボルタンスキーが過去の作品で用いた子どもの肖像写真を再利用し、祭壇のように並べられた写真が
電球の光で照らしだされ、神聖な雰囲気を放つ作品だ。
’88年には、大量の古着を壁面に吊るす《保存室(カナダ)》と題された作品を発表。
タイトルの〈カナダ〉とは、ドイツ・ナチスの強制収容所で収容者の所持品を保管する場所の呼称でもあり、大量の古着によってそのおびただしい数の個人の存在を浮かび上がらせるものだ。
第二次世界大戦期におけるユダヤ人の大虐殺は、ユダヤ系であるボルタンスキー自身のルーツとも結びつきがある。
このように、ボルタンスキーはさまざまな手法によって歴史や記憶、そして死や人間の
存在の痕跡をテーマとした作品を発表し続けてきた。国際的にも注目を集めるボルタンスキーの作品は、ドクメンタ(ドイツ・カッセル)やヴェネチア・ビエンナーレなどの現代美術国際展に招待され、活躍の場を世界各地に広げた。日本においても、越後妻有アートトリエンナーレや瀬戸内国際芸術祭などで積極的に展示が開催され、2016年には東京都庭園美術館で個展が行なわれた。
本展は、ボルタンスキーの初期作品から最新作までを紹介する日本国内では過去最大規模の回顧展である。’70年代から近年までのボルタンスキーの様々な試みを振り返ると同時に、ボルタンスキー自身が「展覧会をひとつの作品のように見せる」と語るように、自身が会場に合わせたインスタレーションを手掛けるという構想のもとに企画され、約50年にわたる作家活動を経てなお積極的に創造を続けるボルタンスキーの世界を通覧できる大規模回顧展である。
『クリスチャン・ボルタンスキー – Lifetime』