高橋理子|♯015 高橋理子展覧会「文様 DOTS & STRIPES」(後編)
「私の柄には日本人としての感覚がにじみ出ているのかもしれない」
♯015 高橋理子展覧会「文様 DOTS & STRIPES」(後編)
9月12日(月)まで、国立新美術館地下1階の『SFTギャラリー』で開催中の展覧会「文様 DOTS & STRIPES」。この展覧会のために、日本の文様を意識したあたらしい柄をつくりました。後編をお届けします。
文=高橋理子
日本人が日本人のために、日本ならではのモノづくりをするなかで生まれた柄
これまでの作品で発表してきた私の柄は、すべて円(もしくは円の弧)と直線で構成されていますが、そこに具体的なモチーフやイメージする風景などはありません。機能や技法を最大限に活かすことを第一に考えながら、柄をのせるものの大きさや素材に合わせて柄を生み出してきました。
今回の展覧会のためにつくったこの柄は、これまでとは異なり、イメージを先行させています。そのイメージとは、日本の伝統文様です。「和柄」ともいうかもしれません。多くの場合、「和柄」というと昔の柄を思い浮かべますが、私は「和柄」とは、いまも昔も関係なく、日本人が日本人のために、日本ならではのモノづくりをするなかで生まれた柄のことであると考えています。
作為なく自然な心持ちで生み出せば、そこには自分らしさ、すなわち、日本らしさが出てくるはずです。私は、「和風」とか「日本的に」ということを意識したことはありませんが、それでも、「見たことはないけれど、懐かしい感じがする」と言われることが多く、私の柄には日本人としての感覚がにじみ出ているのかもしれないと自覚するようになりました。
かつて、私がなにげなく円を連ねてつくった柄が伝統文様の「青海波」にそっくりだったことがあり、それをきっかけに「青海波」が円の繰り返しであると気がつきました。日本の紋様には幾何形体も多く使われています。円や直線は、世界中のどこでも目にする単純な図形です。この円と直線で構成された私の柄が、なぜ日本人にとって懐かしい感覚を呼び起こすのか。今回の柄は、あえてその懐かしい感覚を呼び起こすことを意識し、「青海波」の要素と同様の、円の重なりで構成しています。
「青海波」は、穏やかでどこまでもつづく海をモチーフとして、平穏な暮らしが永久につづき、幾度となく打ち寄せる波のように幸せが幾度となく訪れるという、平安や繁栄の意味をもっています。日本の文様には、それぞれすばらしい意味があり、これまで大切にされてきたことも理解できます。先人から受け継いだすばらしい文様を守っていきながら、それを進化させていくこと。そして、さらにはあたらしい文様を生み出し、未来に引き継ぐ。日本のモノづくりの可能性とその奥深さを、私の生み出す柄を通して伝えていきたいと思います。
TAKAHASHI HIROKO
http://www.takahashihiroko.com/