ヨコハマトリエンナーレ2011 OUR MAGIC HOUR-世界はどこまで知ることができるか?-
LOUNGE / ART
2015年5月27日

ヨコハマトリエンナーレ2011 OUR MAGIC HOUR-世界はどこまで知ることができるか?-

タイトルは「OUR MAGIC HOUR-世界はどこまで知ることができるか?―」

「ヨコハマトリエンナーレ2011」開幕!(1)

3年に一度の現代アートの祭典「ヨコハマトリエンナーレ2011」が11月6日(日)まで3カ月間、横浜市の横浜美術館や日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)をメイン会場に開かれている。

文=谷中朋未

時を越えたボーダレスな作品を展示

4回目となるヨコハマトリエンナーレ2011のタイトル「OUR MAGIC HOUR-世界はどこまで知ることができるか?―」。総合ディレクターに横浜美術館の逢坂恵理子館長をむかえ、科学技術が高度発達している現代においても、まだまだ科学や理性では説明できない不思議、魔法のような力、神話、アニミズムなどにスポットを当てた。

日本郵船海岸通倉庫や今回はじめてメイン会場となる横浜美術館を中心に、ヨコハマ創造都市センター(YCC)などの屋内外に国内外の77組、79人のアーティストらによる300点以上の作品が展示される。

Ugo RONDINONE ≪moonrise.east.march≫ 2005 Photo: Ellen Page Photography, New York. Courtesy the artist and Galerie Eva Presenhuber, Zürich. ©the artist

ARAKI Nobuyoshi ≪Koki No Shashin : Photographs of A Seventy Year Old≫ 2010
Courtesy of Taka Ishii Gallery

Jun NGUYEN-HATSUSHIBA ≪Breathing is Free: 12,756.3 - Chicago Microscope (A Self-portrait), 88.5km≫ 2010 Courtesy the artist and Mizuma Art Gallery

日本郵船海岸通倉庫では、生の素材を使ったインスタレーションを展示

注目すべきはそのアーティストたち。日本を代表する荒木経惟、横尾忠則、オノ・ヨーコをはじめ、ウーゴ・ロンディノーネ、カールステン・ニコライ、クリスチャン・マークレーらそうそうたる顔ぶれが並ぶとともに、今村遼佑や金理有、八木良太ら若手のアーティストも多く参加。さらに、そのなかには“幕末の鬼才”と呼ばれた浮世絵師 歌川国芳や、妖怪コレクションで知られる湯本豪一コレクションといった、歴史を越えた作品もふくまれる。

一見、時代やジャンル、文化などがことなるととらえられがちな多彩な顔ぶれ、作品たち。しかし、作品をとおして対峙・対話し、関係性をもつことであらたな解釈や創造が生まれ、分類やカテゴリーにとらわれない自由な鑑賞の旅を楽しむことができるという主催者の想いが込められている。

また、普段は若手アーティストらの創作の現場となっている日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)では、植物や霧、砂といった生の素材をもちいた大型のインスタレーションや、会場でアーティスト自身が直接つくり上げる彫刻作品などを紹介。現代アートの醍醐味をめいっぱい味わえるダイナミックな展示内容となっている。

タイトルは「OUR MAGIC HOUR-世界はどこまで知ることができるか?―」

「ヨコハマトリエンナーレ2011」開幕!(2)

「新・港村」や「黄金町バザール2011」など、街中にも広がるアートの祭典

メイン会場以外でも多彩な提携イベントが繰り広げられるのもヨコハマトリエンナーレ2011の醍醐味のひとつ。

新港ふ頭の先端にある新港ピアでおこなわれるのは「BankART Life III」。4400平方メートルの巨大な空間にあらゆる国と種類のクリエイターが働き、粗大ごみや廃材などで構成される小さな未来都市「新・港村」を創造。村のなかには建築家や現代アーティストがデザインした家や、図書館、動物園、飲食店、ブティック、散髪屋などが登場する。さらに、外部からの電気は使わず、太陽光発電と充電システム、楽しみながらも人力で電力をまかなうという実験的な村のカタチだ。

一方、市街地でもアートイベントが開かれる。戦後、“売春の街”として知られた黄金町。「黄金町バザール2011」では、国内外のアーティスト約30組が黄金町に滞在しながら、スタジオや店舗空間、屋外など街のなかでさまざまなプロジェクトを展開。街全体がアトリエ、作品の発表場所となり、生活の場と現代アートの融合をとおして「アートの街」へと変化を遂げる空間を楽しむことができる。

ヨコハマトリエンナーレ2011 06

Jeppe HEIN≪Smoking Bench≫ 2002 Installation view at ARoS, Denmark, 2009 Photo by Ole Hein Pedersen Courtesy: Johann König, Berlin, 303 Gallery, New York and SCAI THE BATHHOUSE, Tokyo

ヨコハマトリエンナーレ2011 07

Rivane NEUENSCHWANDER ≪O inquilino/ The Tenant≫ 2010 Made in collaboration with Cao Guimarães, Soundtrack: O Grivo Courtesy Galeria Fortes Vilaça, São Paulo; Stephen Friedman Gallery, London and Tanya Bonakdar Gallery, NY.

エクスペリメンタルミュージックを中心にイベントも充実

さらに、参加アーティストらによる関連イベントも充実。ニューヨークを拠点に活動する現代美術家でありながら、古美術コレクターとしても知られる杉本博司が手がける舞台空間で人間国宝の野村万作、野村萬斎親子が競演する三番叟『神秘域-OUR MAGIC HOUR』は9月21日(水)に開催。第54回ベネチア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞したクリスチャン・マークレーとバンド「ヒカシュー」やボイスパフォーマーとして有名な巻上公一のライブパフォーマンス「Manga Scroll」、ピーター・コフィンの『無題(グリーンハウス)』のなかで植物に音楽を聴かせるシリーズ企画には、OOIOO、大友良英らが参加するをなど、多岐にわたる。事前申し込みが必要なものもあるので、ぜひ「ヨコハマトリエンナーレ2011」のホームページをチェックしてほしい。

さまざまな捉え方ができる現代アート。ユーモラスに感じて素直に笑ってみたり、想像力は働かせて深く考えてみたり。五感を研ぎ澄まし、作品と対峙する特別な「マジック・アワー」をぜひ楽しんでほしい。

ヨコハマトリエンナーレ2011
会期│8月6日(土)~11月6日(日)
会場│横浜美術館、日本郵船海岸通倉庫(BankART Studio NYK)、その他周辺地域
時間│11:00~18:00 ※入場は17:30まで
料金│当日一般1600円(「新・港村」や「黄金町バザール2011」にも入場できる特別提携セット券は1800円)

           
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