TOKYO PREMIUM BAKERIES|第6回 L’atelier de Plaisir│ラトリエ ドゥ プレジール

Lounge
2015年3月17日

TOKYO PREMIUM BAKERIES|第6回 L’atelier de Plaisir│ラトリエ ドゥ プレジール


第6回 L’atelier de Plaisir│ラトリエ ドゥ プレジール

自然酵母の面白さに魅了されたシェフの焼くパン

東京でほんとうに「上質でおいしいパン」を提供しているパン屋さんを紹介する連載第6回は、小田急線、祖師ケ谷大蔵駅徒歩5分の住宅街にある『ラトリエ ドゥ プレジール』。約30種類の自家培養した自然酵母を自在に操り、300種類のパンを焼く、“自然酵母マイスター”とも呼べる田中祐治シェフのお店です。

取材・文=戸川フユキ写真=高田みづほ

自家培養の自然酵母で、どこまでおいしいパンがつくれるか

小田急線の祖師ケ谷大蔵駅の南側を、成城学園前駅方面へ歩くこと5分、閑静な住宅街に『ラトリエ ドゥ プレジール』が現れる。外壁のブラウンのタイルと、窓からのぞくオーストリア製の石臼が、お店の清潔な印象を際立たせている。オープンは2007年の12月。田中シェフの実家はパン屋さんだそうだが、氏はレストランやベーカリー勤務のあと、1999年にパンの通販からスタートし、製パンコンサルタントを経てこの店を開いた。

『ラトリエ ドゥ プレジール』のパンは、どれも本当に美しい。今や日本中が健康ブームで、あちこちに洒落たパン屋が出現しているが、店内に並べられたパンのすっきりとした美しさは、なかでも際立っているように感じる。

特長は、ひとつのパンに2~4種類の自家培養の自然酵母種を併用し、素材の深みや旨味や甘みを、どれもくっきりと引き出していること。自家培養の自然酵母は、ビール種、ヨーグルト種、ブドウなどのフルーツ種をメインに、酒種やホップ種、野菜種など約30種類にのぼり、つねに15種類ほどの自然酵母が、田中シェフの手によって大切につながれ、育てられている。

店名が付けられたパン「プレジール」は、自家培養の自然酵母が3種類配合された、とても食べやすい食事パン。噛みごたえはもっちりとしており、小麦の甘みがしっかりと感じられる。

また「エポートゥル」は、店内の石臼で挽いた貴重な古代小麦「スペルト」の全粒粉に、2種類のスペルト小麦を使った自然酵母種を使用している。食物繊維、タンパク質、アミノ酸、ビタミンB、ミネラルが豊富で、噛むごとに独特の深い旨味と豊かな香りが広がる。スライスして軽くトーストし、バターやチーズをのせていただきたい。

327_04_IMG_3393

イタリアの伝統的な発酵菓子「ベネチアーナ」大1個550円/小1個300円

327_07_IMG_3412

「ベネチアーナ」の発酵途中

取材の途中も酵母菌の入った大きなビンを振り、撹拌をつづける田中シェフに、管理に手間がかかる自然酵母の種類が、なぜこんなにも多いのかを伺ってみた。
田中シェフは、「発酵学の観点から考えると、アミノ酸がうまく生成され消化吸収がよく、甘みが引き出せるおいしさの決め手は「乳酸菌」なんです。それを活かして様々な特長のパンをつくるためには、これだけの種類の自然酵母が必要だったんですね」と笑いながらこたえてくれた。

小麦の甘みを引き出したいパンには酸味の少ない酵母を合わせ、フルーツの多く入るパンには相性の良いフルーツの酵母を合わせる。酵母と粉の配合を研究し尽くし、とろけるような食感の伝統的なイタリアの発酵菓子「ベネチアーナ」までも、自然酵母でつくってしまう田中シェフ。

「自家培養の自然酵母だけでも、こんなにいろいろな味と歯触りのパンがつくれる。いったいどこまでできるのか。無限に広がるレシピを考えるのが本当に楽しいんです」。発酵と酵母の面白さに魅せられた田中シェフがパンについて語るとき、その顔つきは遠い昔、理科の実験に目を輝かせていた少年そのもの。
さて次はどんなパンが登場するのか、シェフのアイディアとパワーに大いに期待しよう。

L’atelier de Plaisir 『ラトリエ ドゥ プレジール』
東京都世田谷区砧8-13-8 ジベ成城1F
Tel. 03-3416-3341
営業時間│12:00~20:00
月・木曜休み
(小田急線、祖師ケ谷大蔵駅徒歩5分)
http://www5a.biglobe.ne.jp/~plaisir/

           
Photo Gallery