第50回 「食」にまつわる話_春の豆編(前編)
Lounge
2015年5月11日

第50回 「食」にまつわる話_春の豆編(前編)

第50回 「食」にまつわる話_春の豆編(前編)

肌寒かった季節も過ぎ、外はすっかり春爛漫。春といえばスーパーマーケットの棚にも、青々とした豆類が顔を揃え、そのエネルギーに満ちたみずみずしさが、大いに食欲をそそります。無類の豆好きとしては、もう食べ尽くすしかないわけで……。

語り=吉田眞紀まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix

春だけの贅沢を味わい尽くす

春は自然界の生命が、新しく活動をはじめる季節。春野菜のほかにも、貝類や鯛などの魚介類が旬を迎え、四季のある日本に生まれたことを感謝せずにはいられません。

そんななかで毎年とりわけ注目してしまうのが、種類も豊富な「豆」です。お馴染みのインゲンやサヤエンドウはもちろんのこと、この時期、とくに旨いのは、空豆、スナップエンドウ、砂糖サヤにグリーンピース。ほどよい歯ごたえと、豆そのもののもつ控えめな甘さが絶妙で、我が家の食卓を何度となく賑わせてくれます。

第50回 「食」にまつわる話_春の豆編(前編)

インゲン

しかし、その食べ方はいたって単純。甘辛く煮付けたりするのは、あまり好みではないので、大抵はシンプルに塩茹でして、春らしく素材そのものを楽しみます。

また軽く塩茹でした豆は、サラダにしてもよし、和え物にしても後味が爽やか。グリーンの豆があるだけで、テーブルがカラフルに彩られます。

この時期の豆は、主役にも脇役にもなれる万能食材でしょう。もちろん、冷えたビールにうってつけの、手軽なつまみであることは、言うまでもありません。

第50回 「食」にまつわる話_春の豆編(前編)

サヤエンドウ

ご存知のように、豆類は莢(さや)のなかの豆だけを食すものと、未成熟の莢ごと食すものとがありますが、よくよく見ると、デザイン的にも非常に魅力的な造形をしています。

サヤエンドウの滑らかなカーブは、ある種、芸術的な美しさを保ち、スナップエンドウの茎に連なる萼(がく)の部分は、小さな帽子をかぶったようで、これまた繊細なラインです。

しかも茹でたてのグリーンは、透き通るように鮮やか。おいしく食すだけでなく、視覚的にも大いに楽しませてくれるのが、春の豆なのです。

第50回 「食」にまつわる話_春の豆編(前編)

スナップエンドウ

豆は栄養の面でも非常に優れています。ビタミンCや食物繊維が多くふくまれ、メタボリック対策にも有効な食材でしょう。余談ですがスナップエンドウは、1970年代にアメリカから入ってきた豆で、当時はスナックエンドウのほか、さまざまな呼び方をされていましたが、現在では農林水産省によって「スナップエンドウ」と呼称が統一されたそうです。

いずれにしても、豆は空気に触れると味も栄養価も低下するので、なかの豆だけを食す場合は、莢つきのものを求め、莢から出したらすぐに調理するのが秘訣だそうです。

この時期だけの贅沢、フレッシュな春の豆を大いに食して、内なるエネルギーを充填させたいものですね。

           
Photo Gallery