第43回 「食」にまつわる話_食品のパッケージ編
Lounge
2015年5月11日

第43回 「食」にまつわる話_食品のパッケージ編

第43回 「食」にまつわる話_食品のパッケージ編

それ自体が商品のプレゼンテーションともいえる、食品のパッケージ。購買意欲をそそられるもの、見かけばかりが立派なもの、昔ながらの知恵と工夫が詰まったものなどさまざまですが、あらためて食品のパッケージを眺めてみると……。

語り=吉田眞紀まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix

パッケージに求められるものとは

資源のリサイクルに、ゴミの分別。限られた資源と地球環境の未来を考えれば、もはや当然のことでしょう。しかしこれほどエコが叫ばれるようになっても、食品の過剰包装がいっこうに改善されないことには、正直、首をかしげざるを得ません。

ご存知のように、スーパーマーケットが一般化するまでは、食品は個人商店での対面販売が基本でした。カゴや皿に盛ってある魚や野菜を、店主と世間ばなしのひとつでもしながら品定めし、お金を払って持参した買物かごに入れる。包んでもらうとしても新聞紙がせいぜいで、豆腐などは鍋をもって店まで買いに行ったものでした。

現代のスーパーマーケットのスタイルは1900年代のはじめにアメリカで始まったのだそうです。豊富に並べられた商品から、お客が自由に買いたいものを選びレジで一括精算。店内を一周すれば、食品から日用品まで必要なものが揃う便利なセルフサービスは、対面販売と比べ人件費もかからず、消費者には合理的と大いに歓迎されました。
その後バーコードを使ったPOSシステムによって、スーパーマーケットが飛躍的に発展したのは記憶に新しいところです。

しかしセルフサービスとともに、パッケージには「見た目のよさ」という重要な役目が課せられました。少しでも商品の見映えがするように、美しいパック詰めやカタチの揃った商品が求められ、最近では内容量を多く見せるために上げ底がしてある容器や、色鮮やかに見せるための薄い色付きラップまでが登場し、反則スレスレの過剰包装が目に余ります。ちょっとスーパーに買物に行くと、困ったことに中身よりもゴミの方が多いくらいですよね。

飾りではない機能のある伝統のパッケージ

第43回 「食」にまつわる話_食品のパッケージ編

一方、昔ながらの知恵と工夫が施されたパッケージも健在です。
稲藁に包まれた納豆は最近では貴重品となりましたが、茹でた大豆はわらに付着した納豆菌に触れて40℃前後に保たれると、発酵し納豆となります。わらは菌が呼吸するための湿度を適度に保ち、その発酵を助けます。
わらは製造過程に必要な素材を、そのままパッケージとしたものですが、加えて持ち運びも便利。昔の人の賢さには脱帽です。

また、大好物の若狭小浜の特産品「小鯛のささ漬け」は、小さな杉の樽に三枚におろされた小鯛がぎっしりと詰まった珍味です。米酢と塩で調味された塩加減も絶妙ですが、感心するのはいかにも旨そうなそのたたずまい(笑)。しかも杉樽には防腐効果と中身の水分調節作用があり、一緒に漬け込まれる笹の葉には防腐作用と褪色防止効果があるそうです。笹に触れていた部分の小鯛は、樽を開けるまで天然の紅色が保たれ、これまた食欲をそそります。

この小鯛は、そのまま山葵を添えて醤油で食すのも旨いのですが、ぜひおすすめしたいのが、「昆布じめ」です。日本酒で拭って湿らせた昆布で小鯛を挟み、冷蔵庫で1時間ほど寝かせれば、見事に味が馴染み上品な一品に。また、昆布じめにした昆布と小鯛を細かく刻んで和え物にしても、気の利いた肴となりますし、お茶漬けにしても思わず微笑んでしまう旨さです。

納豆もささ漬けも、パッケージがただの装飾ではなく、製造過程で必要な素材で精巧につくられ、資源を無駄にしていないところが実に素晴らしいのですが、「いかにも旨そう!」と思わせるところが、抜群に優秀なパッケージといえるでしょう。伝統のグッドデザインは、食品パッケージの世界でもしっかりと受け継がれているわけです。

           
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