第42回 「衣」にまつわる話_巻きもの編
Lounge
2015年5月11日

第42回 「衣」にまつわる話_巻きもの編

第42回 「衣」にまつわる話_巻きもの編

朝晩の風の肌寒さに、しみじみと秋を感じるこのごろ。首の周りにくるっとひと巻きするスカーフやストールは、それだけで暖かく、気分をやわらげてくれるものです。

語り=吉田眞紀まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix

機能とともに発展したデザイン

秋も深まり、装うことがますます楽しくなってくる季節。冬は首のつまったタートルネックを好んで身につけますが、シャツを選ぶときも、スカーフ、ストール、マフラーなど、首に巻くいわゆる「巻きもの」が欠かせません。

じつは家族にはいつも不思議がられるのですが、真夏でも鼻の下までタオルケットをかけて眠る習慣があり、首の周りに何かあるだけで妙に落ち着くのです。
しかもこの巻きもの、心理的効果をもたらすだけでなく、機能的にも真に優れた侮れないアイテムです。

第42回 「衣」にまつわる話_巻きもの編

ウールとシルク混紡のストール。リバーシブルで使いやすい

本来、洋服はみな理屈の上に成り立ち、とくに男性ものは、機能が重視される軍服に由来するものが多く見られます。なかでもトレンチコートは最たるもので、第一次世界大戦のころ、寒冷地での塹壕戦対策のために考案されたそうです。
激しい雨を通さないように肩部分は二重構造で、風向きで変えられるようにダブルの打ち合わせ、ボタン留めの肩章は水筒を提げるため、コートの右肩から胸にかけてある布はライフルを支えるのに効果的であるなど、軍人が着用する目的でデザインされています。
このように、デザインは身体の働きや機能性とともに大いに発展してきました。

肌で実感する「巻きもの効果」

現代では、屋外が氷点下でも一歩建物の中に入れば、一年中Tシャツで過ごせるくらいの暖かさ。肉体にとっては過保護な状態です。一番簡単に寒暖の差を取り除く方法は衣服の調整ですが、コートやジャケットは脱げばかさばりますし、アンダータイツにいたっては、すぐには脱げずとてもスマートとはいえませんよね。

しかし巻きものは、ジャケットを着て首にくるっと巻くだけで、コートがなくてもかなり暖かく感じられ、体感で5℃は違うでしょう。脱着もいとも簡単で、ポケットの中にさえしまうことができ、実に機能的です。好んで身につけるのはシルクのストールですが、冬は暖かく夏は涼しく吸湿性もあり、かなりの汎用性です。ウールや麻も使い勝手がよく重宝します。

シルクのストールは、肌にしっとりとなじむ滑らかさも魅力

さらっとした麻は、春・夏・秋と3シーズン大活躍

巻くだけで気軽に雰囲気が変えられ、暖かさも確保できる機能的な「巻きもの」。素材や巻き方を選べば、男性でも使いやすいアイテムです。積極的に取り入れて、秋冬の装いを楽しんでみてはいかがでしょうか。

           
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