第41回 「食」にまつわる話_サンマ編
Lounge
2015年5月11日

第41回 「食」にまつわる話_サンマ編

第41回 「食」にまつわる話_サンマ編

秋はサンマのおいしい季節。店先に並ぶ艶やかなその姿を見るたびに、なんて美しい魚だろう……と思わずにはいられません。

語り=吉田眞紀まとめ=戸川ふゆきPhoto by Jamandfix

流線形が美しいサンマ

いきなりですが、食欲の秋です! 秋は松茸をはじめ、新米、新蕎麦、栗やブドウに銀杏と、おいしい食材が次々と登場する季節。しかし旬とは、その素材が一番おいしく、かつ値段も安価であってこそ。従って、僕にとって秋の味覚の四番打者といえば、断然サンマということになるのです。

第41回 「食」にまつわる話_サンマ編

以前にタケノコのスタイリッシュなカタチについて語りましたが、サンマの美しい流線形も、実に理にかなった自然の造形美。目にもとまらぬ速さで海中を泳ぎまわる姿が容易に想像できます。自然界の造形は、厳しい生存競争を生き抜くための必然のグッドデザインです。
合理的で無駄のないサンマの美しいラインは、余計なものをそぎ落としたデザインが信条の『M.Y.LABEL』としては、大いに学ぶべきものがあります。サンマの場合は、そのラインの美しさに見惚れながらも、同時にうまそうだなぁ……とついつい思ってしまうわけですが。

自ら焼くことが楽しい炭火焼き

幼少時代は、秋になると路地裏に七輪をひっぱり出し、もうもうと煙を立てながらサンマを焼く風景を目にしたものですが、最近では家庭でサンマを焼く場合、魚焼きグリルを使うのが一般的でしょうか。しかしサイズ的にちょっと厳しいからと、半分に切ってから焼いたのでは、せっかくのうまい脂が流れ出てしまい台無しです。

サンマは丸のまま七輪に載せて、自ら炭火で焼くのがうまい! と断言します。
脂の落ちるジュウジュウいう音や、景気よく立ち上る煙、またサンマごときに真剣に立ち向かうその行為もさらに、ムードを盛り上げます。そして、大根おろしとともに、少々皮の焦げた熱々のサンマを口にしたときのあの感動!

我が家には、バーベキュー用のグリルが3台、炭のコンロ2台、七輪が2つと、2人家族としてはいささか多すぎる炭火焼きの道具があり、ちょっとした炭火焼きマニアの感が否めません。
最近手に入れた写真の黒い七輪は、長野のとある金物屋で見つけたもので、詳細は不明ですが店主曰く、珪藻(けいそう)土の粉に炭の粉をぬりつけて二度焼きしてあるものだそうです。カタチといい色といい、サンマにはこれが合うんじゃないかとひらめいたのですが、これはなかなかのグッドマッチングでした。

第41回 「食」にまつわる話_サンマ編

「天高く馬肥ゆる秋」── ちなみに本来の意味は、一般的に使われている意味とは違い、「馬が肥える秋には、北方騎馬民族の侵略を警戒せよ」という戒めの言葉で、「秋には必ず異変が起きる」という中国の故事成語だそうです。
しかしながら、すべての作物が豊かな実りを迎えるこの季節、秋の味覚を味わい尽くして、来たるスキーシーズンに備えなくてはと思う今日この頃です。

           
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