ロニ・ホーン写真展『This is Me, This is You』(その2)
Lounge
2015年4月17日

ロニ・ホーン写真展『This is Me, This is You』(その2)

第34回 ロニ・ホーン写真展
『This is Me, This is You』(その2)

前回に引きつづき、現在ラットホールギャラリーで個展を開催中のロニ・ホーンについてのお話を。今回は、彼女の作品全体に共通する独特の世界観を、作品そのものや、彼女と交わした会話のなかから僕なりに分析し、この作品展の見方、そしてより深く楽しむためのちょっとしたアドバイスなどをお話ししようと思います。

北村信彦/HYSTERIC GLAMOURPhoto by Jamandfixedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)

彼女にとっては、写真も表現のためのひとつの道具

今回ラットホールに足を運んでくれるファンの人に対するアドバイスとしては、まず彼女を一写真家として見てしまうのはもったいない、ということがあります。個展開催中ラットホールでは、いままでの彼女の作品集なども置いていますので、過去の立体作品やドローイングなども見て、彼女の世界観を感じてほしいと思います。

ふつう、自分の好きなアーティストに会ったときって「あなたの写真が好きです」とか「あなたの音楽が好きです」というものですが、彼女に対しては「あなたのセンスが好きです」としかいいようがありません。彼女にとっては、写真もひとつの道具なんです。もちろん映っているもの自体も大事ですが、彼女の場合、それをどう見せるかのほうが、より重要だといえるでしょう。そういう意味では、立体物もドローイングも写真も、すべてが彼女のセンスなんです。そして、そのセンスは非常に緊張感のある数学的な美意識に包まれています。

たとえば立体作品は、日本の石庭のように、スペース全体にピンと張った細い糸のような緊張感がありますし、ドローイングはドローイングで、まるで精密な図面を見るかのような感覚を覚えます。純粋な写真家というのはどちらかというと文学的な人が多いと思うんですが、彼女の場合は完全に理数系。そして、作品を見る者に、なにか自分がテストされているような感覚を抱かせるのです。

東京でやることに意味を感じてくれた今回の個展

これまでも彼女は、いろいろな国で自分の作品を見せているわけですが、日本、それも東京で見せるということにかんして、彼女自身もピンと張りつめたものと対面できた、といっていました。それは東京のもつ非常にアーバンなセンスと、日本古来のミニマルでソリッドな美学によるもので、パリなどでやるのとはちょっとちがう感覚だといっていました。

また、東京の街自体も気に入っていましたし、前回もお話ししたとおり、このギャラリーもとても気に入ってくれました。そんなわけで会話も盛りあがり、最後は「来年か再来年ぐらいには立体もできたらいいね」なんて話も飛び出しました。そのときには姪っ子も連れてくるわ、といっていたので、もし実現したら、これまたおもしろいことになるだろうと思っています。なにしろ今回の作品に関しては、その仕掛けの巧みさ、写真自体のキレイさに加え、被写体となったこの子のキャラクターも大きな見どころだからです。少女から少し大人の意識が芽生えはじめる重要な時期に見せた彼女の表情は、まさに48変化。彼女の才能なしには、けっしてこの作品は生まれなかったことでしょう。

(了)

ロニ・ホーン個展『This is Me, This is You』
日程|8月10日(日)まで開催中
時間|12:00~20:00(月曜定休)
場所|RAT HOLE GALLERY
東京都港区南青山5-5-3
HYSTERIC GLAMOUR 青山店B1F
でんわ|03-6419-3581

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